2人の声の相性は素晴らしい
──今日はこの3人がそろっているので、コラボシングルのうち「BIG LOVE」の話題を中心にお話を伺っていきます。まず、今回の真礼さんと雄馬さんのコラボはどういう経緯で決まったんですか?
真礼 うちのプロデューサーと雄馬のプロデューサーの飲み会があったそうで。プロデューサー同士はフェスとかで会ってはいたものの、制作においては一度も交わることがなかったんです。でも、現場で会うにつれて仲よくなって。そこから「何か一緒にやりたいですね」という話題が出たそうで、たまたま私が今年アーティストデビュー10周年を迎え、雄馬もちょうど対バン企画をスタートさせた。「同じ年にそういう動きがあるなら一緒にやりましょう」と実現したのが今回のコラボシングルなんです。
──奇跡的なタイミングだったんですね。では、「BIG LOVE」を受け取って聴いたときはどんな印象を受けましたか?
真礼 まず最初にメロディだけを聴かせていただいたんですけど、オーイシさんらしくて壮大な曲だなと。私たちとオーイシさんの3人が一緒にコラボしているという事実が、ここまではっきりと形になって伝わってくるんだ、すごいなって思いました。ただ、メロディだけの時点ではどんな曲が完成するのかまったく想像できなくて。そこにこだま(さおり)さんの詞が付いたことで、より私と雄馬の関係性がくっきりと浮き彫りになって……「えっ、2人のことを隣で見ていたの?」と思うくらいそのまんまの内容だったんですよ。その詞がオーイシさんの温かくて大きなメロディに乗ることでより感動しちゃいました。
雄馬 そうだね。
真礼 心に染みすぎるくらい、聴くたびに泣ける曲ができたなと思います。
雄馬 僕は、この曲からはこれまで関わったいろんな人の温もりが感じられると思っていて。それって僕らが今まで経験してきた、いろんな人と出会っていろんな人に支えられてここまで来たっていう事実そのもので、そういうビジョンがメロディからしっかり伝わってきました。そのあとに歌詞が付いたら、僕らが幼なかった頃のビジョンも浮かんできて。ちっちゃい頃からずっと姉さんに感じてきた感謝の気持ちとか、そういう優しい感情を引っ張り出してくれるような、そんな歌になったことが本当にうれしかったですし、姉さんにも「聴いたときに泣くと思うよ」と伝えたくらい大好きな曲です。そういえば、この曲が上がってくるちょっと前にオーイシさんとイベントでお会いする機会がありましたよね。
オーイシ そこで「今度コラボすることになったんだよね。よろしくね」と話して。
雄馬 そう。なので、事前に一度コミュニケーションを取れたのは結果としてよかったのかなと思っています。
真礼 きっと、雄馬の思いがふわっと伝わったんだね。ありがたいです。
オーイシ いやいや、こちらこそありがとうございます。僕はこの曲のオファーをいただいたとき、「2人で大団円が迎えられる壮大な曲をお願いします。できればシンガロングができるような感じで」というリファレンスをいただいていて、それに準じて作っていったんです。実は歌詞にある「BIG LOVE」のところ、もともと僕の仮歌では「BIG BANG」と歌っていて。そこもこだまさんがうまく「BIG LOVE」に変換してくれて、さらにやしきんくんがポップス感の強いアレンジに寄せてくれたことで、ベストなところに落ち着くことができたのかなと思っています。
真礼・雄馬 なるほど~。
オーイシ 作曲者的な視点で言うと、男女で歌う楽曲なのでより意味のある転調をしたいなと思って。男性パートは三度下、女性パートは三度上みたいにどんどん転調を繰り広げているところも含めて、2人のストーリーが折り重なっている感が出せたらいいなと思いながら作曲しました。
真礼 カッコいい!
──実際、こだまさんの歌詞が付いたことで2人が歌う意味がより強まりましたよね。
オーイシ それはすごくありますね。ちょうどいい2人の距離感を、こだまさんが歌詞に書いてくれたなと。血でつながっているところで絶対に裏切ることはないという2人の関係値と、加えてそれぞれが歩んできたストーリーが交差するエモさは、読んでいるだけでゾクゾクしますよね。で、完成した音源を聴いて思ったんですけど……当たり前かもしれないですけど、やっぱり2人の声ってピタッとハマるものがあるんだなと。
真礼・雄馬 おーっ!
オーイシ 2人のハーモニーが本当に素晴らしくて、改めて同じ血筋の声帯を持っている人なんだなと実感しました。各々のアーティスト名義での曲を聴いていると、例えば雄馬くんはちょっとダンサブルなテイストが強かったり、真礼ちゃんはロックな曲が多かったりして、それがどう交わるのかなとなんとなく気にしていたんですけど、いざ折り重なってみると「やっぱり内田家なんだな」と思えるような感じのコラボでしたね。
──どちらも強い個性を持っているのに、決してぶつかり合うことなく絶妙な調和を生み出していますよね。
オーイシ そうですね。ハモるときってコンビネーションなので、どちらかが譲ったり譲られたり、「あ、先に行っていいよ」という瞬間があったりするんですけど、この2人はそれぞれ100%の全力を出し切ってもちょうどよく混ざるみたいな、不思議な化学反応を起こしていて。これは姉弟ならではですよね。僕もバンドマンとして長く活動していますが、やっぱり血がつながっている人同士のハモリは特別なものだと思っているところがあって。例えばフレデリックというバンドの三原兄弟(健司&康司)のハモリだったり、それ以前だったらハックルベリーフィンというバンドの山口(剛幸&幸彦)兄弟のハモリとか、ほかには真似できない特別で唯一無二のものがあるんです。なので、これ1回とは言わず今後もシリーズ化してコラボし続けてほしいと思うくらい。周りはいろいろ調整が大変かもしれないですけど、そう言いたくなるくらい2人の声の相性は素晴らしいと感じました。
真礼 めちゃめちゃ褒めてもらえてる……。
雄馬 ありがとうございます!
「内田マサヨシを名乗らせてもらいたい」
──2日間にわたる対バンライブ「YUMA UCHIDA LIVE “VS YUMA 001- 内田真礼”」を終えた手応えはいかがですか?
真礼 あんまり見たことのない景色があったよね。
雄馬 うん。僕ら姉弟がそろってると「現場がちょっと柔らかくて温かくなる」と言っていただけることもあって。家族だからこそなのか、なんとも言いようのないホーム感が自然と生まれるんですよね。今日はそれが一段と強く感じられて、普段姉さんの音楽を聴いてくださっている人は「弟の音楽はどんな感じなのかな」と思いながら観てくれたんじゃないかな(笑)。逆もそう思いますし、そういう感じでお互いの音楽を楽しんでくれている空気があったので、それを体感できただけでも今回は一緒にライブをやれてよかったと思いました。
オーイシ お客さんにもファミリーの温かみがありましたよね。
真礼 わかります(笑)。「BIG LOVE」のときなんて、ステージ上も客席も温かくて、初めて感じた不思議な空気でしたもん(笑)。
雄馬 「みんなで作ってきたぜ!」という一体感とか絆を感じる瞬間だったよね。確かに、あの空気感はなかなか味わえないな。
──今日のライブでは、アンコールのラストでオーイシさんをゲストに迎えて「BIG LOVE」が披露されました。
オーイシ 普段イベントやフェスでコラボするときとは全然違いましたね。だって、僕がステージに登場したときのあの真っ当な歓声は、ちょっと忘れられないですもん。普段なんて「クソメガネー!」とか「帰れー」って罵られがちなので(笑)。
真礼 「まっさよし! まっさよし!」ってコールが起こりましたもんね(笑)。
オーイシ 告知なしでステージに出て行ったにもかわわらずあの歓迎ぶりですから。なかなかない経験でしたし、うちのスタッフも「オーイシマサヨシ、まだ伸びしろあるな」とか言い出しました(笑)。
雄馬 新しいオーイシさんが見つかったんですね(笑)。
オーイシ 僕らのチーム的にも刺激をいただいたというか、新たな指針が生まれた1日だったと思います。
──それぞれにとって大きな収穫のあったコラボだったんですね。
真礼 そうですね。しかも、2日間にわたる対バン形式だったので、昨日の雄馬のステージを観て「これはいいな」と思ったところを、今日のステージですぐに取り入れて試すこともできたし。めちゃめちゃ刺激的でした。
雄馬 わかる。俺も姉さんのステージを観て「もっとかき回しを使うのもいいかも」と思ったし。そういうことも今まであまりやったことがなかったから、勉強になったよね。
オーイシ いいね、姉弟の勉強会! 内田姉弟ってこうやって切磋琢磨してきたんだろうなあ。感慨深いです。
真礼 今回は2人それぞれのライブ制作チームが入っているから、関わっている人も本当に多かったし。
オーイシ そうか、舞監さんも音響さんも2チームだったんだね。対バンでそれって、なかなか珍しいよ。
雄馬 それでも統制が取れていたので、皆さんプロフェッショナルだなと。そういういいチームに出会えている点でも、我々は本当に恵まれているなと思います。
──せっかく生まれた「BIG LOVE」という楽曲、今後もまた2人で歌ってほしいです。
オーイシ そうですよね。もしかしたらそれぞれ1人で歌う機会もあるかもしれないし。今後もいろんな形で歌い継いでいってほしいです。
──最後になりますが、オーイシさんからお二人に向けてメッセージをいただけたら。
オーイシ 僕、内田マサヨシを名乗らせてもらいたいなってぐらい、いつか内田家に入りたいなと思っていまして(笑)。
真礼 いつでもいいですよ、兄さん!
雄馬 じゃあ、今日から兄さんで!
オーイシ なんだか敷居低すぎない?(笑) そうは言ってくれますけど、僕は常に2人の親戚ぐらいの気持ちと距離感でいますので。
雄馬 いつどんなときに会っても、助け合いの精神でがんばっていけたらいいなと。
真礼 そこも“BIG LOVE”でね。
オーイシ これからもみんなでアニメ業界を盛り上げていきましょう。
雄馬 オーイシさんと姉さんは、まさに今のアニソンシーンの先を走っている存在ですから、僕としては追いつけ追い越せでがんばっていきたいです。
オーイシ そこはおんぶにだっこでね(笑)。
プロフィール
内田真礼(ウチダマアヤ)
東京都生まれの声優、アーティスト。2009年にOVA「ぼく、オタリーマン」で声優デビューを果たし、2012年4月より放送された「さんかれあ」で初めてアニメ作品の主役を務めた。同月には特撮テレビドラマ「非公認戦隊アキバレンジャー」で実写デビュー。同年10月からオンエアされたテレビアニメ「中二病でも恋がしたい!」の小鳥遊六花役では多くのアニメファンからの人気を集めた。2014年4月にテレビアニメ「悪魔のリドル」のオープニングテーマである「創傷イノセンス」をシングルリリースし、個人名義でのアーティスト活動を開始。2015年12月に1stアルバム「PENKI」を発表した。2016年2月に東京・中野サンプラザホールで初のワンマンライブ、2017年2月に東京・国立代々木競技場第一体育館で2ndワンマンライブを開催。2019年1月1日には初の東京・日本武道館公演を行った。2024年4月にアーティストデビュー10周年を迎え、5月に4thアルバム「TOKYO-BYAKUYA」を発表した。
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内田真礼(UCHIDA MAAYA)Official Channel | YouTube
内田雄馬(ウチダユウマ)
2013年に声優デビューし、「呪術廻戦」「WIND BREAKER」「シャングリラ・フロンティア」「MFゴースト」など数々の人気作に出演。2019年に「第十三回 声優アワード」で主演男優賞を受賞した。2018年5月に1stシングル「NEW WORLD」でアーティストデビュー。2018年9月に東京・東京ドームで行われたライブイベント「KING SUPER LIVE 2018」で初めてライブを行った。2019年7月に1stフルアルバム「HORIZON」をリリースし、同年10月より初のライブツアー「YUMA UCHIDA 1st LIVE TOUR『OVER THE HORIZON』」を開催。2022年11月には東京・日本武道館で2DAYSライブを行い、2日間で約1万6000人を動員した。さらに2024年4月に2度目の日本武道館公演を成功に収めた。
内田雄馬 公式サイト -YUMA UCHIDA OFFICIAL WEB SITE-
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内田雄馬 (@i_am_yumauchida) | Instagram
オーイシマサヨシ
2001年にスリーピースバンドSound Scheduleのボーカル&ギターとしてメジャーデビューし、2008年に大石昌良としてソロ活動を開始。2014年にオーイシマサヨシ名義でテレビアニメ「月刊少女野崎くん」のオープニング主題歌「君じゃなきゃダメみたい」を担当し、3度目のデビューを果たす。以降アニメ「けものフレンズ」の主題歌「ようこそジャパリパークへ」など多くのアニメ主題歌を手がけ、Tom-H@ckとのユニットOxTなど、ほかアーティストへの楽曲提供も行うなど多様な名義を使い分けて活動中。また、MC業や俳優業にも挑戦するなどマルチな活動を展開している。2024年3月に初の東京・日本武道館でのワンマンライブ「オーイシ武道館」を開催。会場と配信合わせて5万人を“動員”する記録を達成した。2025年3月29日に開催予定の「オーイシ武道館 Vol.2」のチケットも完売している。
大石昌良【オーイシマサヨシ】 (@Masayoshi_Oishi) | X