ナタリー PowerPush - TRIPLANE

5thアルバム「V」 “爽やかバンド”の本当の姿

優しい“いい人”の歌詞は自分には合わない

──だからこそ「優しい嘘」という曲がアルバムにおいて果たしている役割は大きいんじゃないかと思うんです。そのあたりはどうですか?

インタビュー写真

江畑 まさにこの曲がキーになりましたね。メンバーやスタッフも、この曲を聴いたときに初めてどんなアルバムになるか見えたと思います。

──「優しい嘘」の歌詞の書き方は、これまでと大きな違いがありますよね。TRIPLANEは、どんな立場の人のどんな心情にも当てはまるような、わかりやすく普遍的な感情の曲を書いてきたバンドだと思うんです。でもこれは今の世の中を風刺した鋭い内容になっている。具体的には「メッシ」という固有名詞や「電力会社」という言葉も出てくる。こういう書き方をしたのは?

江畑 むしろ、こっちのほうが僕らにとって普通なんです。誰にでも当てはまるような、優しい“いい人”の歌詞って自分には合ってないと思っていて。こんなことを言っていいかわからないけど、そういう歌詞を書いているときは、本当の自分を半分捨てているような感じすらします。元々そうじゃない歌詞を書いていた人間が、メジャーの世界で戦っていくために、売れるために、多くの人の共感を得るためにシフトチェンジしていっただけ。もちろん「優しい嘘」のような曲ばっかりじゃダメだけど、今は自由にできてるんで、そのバランスを楽しめています。前だったらこの歌詞は許されなかったし、言葉を変えられていたと思う。

──そうなんですね。

江畑 だから以前は偽善者のような感覚もあったけど、今はそれがないから、いろんな人に勇気を与えるような曲もストレートに書けるようになったんです。だって、“いい人”の僕だってやっぱりいるわけじゃないですか。その部分で全力で書ける。

──この曲があることで、「イチバンボシ」のような曲もアリになるというか。

江畑 まさにそうで、この曲があるから全部がつじつまが合うな、と。本当だったら、この爽やかな感じは脱却したいからアルバムに入れたくないって思うかもしれないけれど、なきゃダメだと思う。そのバランス感覚が付いたんですよね。そういう意味で、ダークサイドに振り切った部分を表現できたというのは大きかったと思います。

「六本木」という言葉をサビの頭に持ってくる田舎者っぽさ

──アルバムの最後に収められている「六畳リビング」は、中盤以降のダークさとはまた違う、温かなバラードになっていますけれど、この曲はどんな位置づけなんでしょうか。

江畑 ダークな方向にどんどん行きたいという衝動と、そこに対しての怖さもある。そこも「六畳リビング」が最後にあることによってバランスが取れるというか、この曲が僕らの帰ってくる場所を表してるんですよ。

──曲ができた時点でアルバムの最後に入れようということは決まってたんですか?

江畑 決まってました。そうじゃなかったら要らないと思っていたし。

──歌詞には「六本木にある高層ホテルの窓から見える景色はいらない」とありますね。それが、この1年バンドが地元を大事に活動してきたことにつながっているような気がします。

江畑 「六本木」って人々に飽きられてるフレーズだと思うんですよ。使い古された言葉だってディレクターにも言われたんですけど、やっぱりこの言葉じゃないといけないと思う。「六本木」という言葉をサビの頭に持ってくる田舎者っぽさ。あえてそれを出すことで、いろんなものを説明しているという。

──ほかのおしゃれな地名じゃなくて、あえて六本木。

江畑 こいつら、田舎者なんだなっていう。だって、こっちの生活に慣れようとか、東京人になろうって思っても、多分無理なんです。染み込んでしまっているものを拭い去れないですからね。それを説明できているんじゃないかな。

攻めの気持ちでアコースティックライブ

インタビュー写真

──アルバムのリリース後にはまた全国ツアーがありますね。

広田 TRIPLANEでは最大規模ですね。その23本のうちには初めて行く場所もたくさんあるし、そのうち4本はアコースティックのワンマンなんですよ。

──アコースティックライブは去年もやっていましたよね。

広田 はい。福岡3DAYSで、今までの持ち曲60曲くらい全部やるっていう企画をやったんです。それで、アコースティックのワンマンにも自信を持てましたね。

武田和也(B) 会場の都合で大きな音が出せないから、回線が足りないから、とかいう妥協としてのアコースティックのライブじゃないですからね。アコースティックじゃないと表現できないものがあるという、攻めの気持ちでできるようになったと思います。

──アコースティックで戦える意識がバンドに生まれたんですね。

江畑 それはめちゃくちゃありますね。

広田 今はサポートメンバーを入れずに4人でライブをやっているので、それも大きいですね。今年はライブバンドとしてのTRIPLANEを、さらに確立させていこうと思っています。

インタビュー写真

... / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. パノラマセカイ
  2. イチバンボシ
  3. Darling
  4. Greendays
  5. 麦色
  6. 書き置き
  7. ヨワキモノタチ
  8. 優しい嘘
  9. つれづれのマイナーナイナー
  10. 友よ
  11. -mori-
  12. 雪のアスタリスク
  13. Hello
  14. 六畳リビング
初回限定盤 DVD収録内容
  • パノラマセカイ(MUSIC CLIP)
  • イチバンボシ(MUSIC CLIP)
  • Greendays(MUSIC CLIP)
  • 雪のアスタリスク(MUSIC CLIP)
  • 友よ(MUSIC CLIP)
TRIPLANE(とらいぷれいん)

2002年4月に札幌で結成された、江畑兵衛(Vo,G)、武田和也(B)、川村健司(G)、広田周(Dr)からなる4人組バンド。2004年4月にオリジナル曲「スピードスター」がhitomiにカバーされたことで注目を浴び、同年10月にシングル「スピードスター」でメジャーデビューを果たす。2006年には「Dear friends」がアニメ「ONE PIECE」のエンディングテーマに起用され、リスナー層を拡大。以降もキャッチーなメロディと安定したバンドサウンドで活動を続ける中、2011年1月に「イチバンボシ」がサッポロビールの北海道エリア年間タイアップに決定。さらに北海道キロロリゾートCMソングや、2012年度サッポロビール北海道エリア企業CMソングを担当する。2012年2月に5thアルバム「V」をリリース後、23公演におよぶ全国ツアーを開催する。