TREASURE特集|日本デビュー2周年!2人のリーダー、3人の日本メンバー、“作曲ドル”──グループの魅力を徹底解説

あなたはボーイズグループ・TREASUREをご存知だろうか。TREASUREはBIGBANGやBLACKPINKらを輩出した韓国の大手事務所・YG ENTERTAINMENTに所属する、デビュー3年目のK-POPグループ。2022年秋に初来日し、初の日本単独ライブであったのにもかかわらず、昨年11月から1月にかけて行われた日本ツアーでは全国7都市24公演のアリーナ公演を行い、1月末には追加公演としてグループ初の京セラドーム大阪2DAYSも成功させ、韓国アーティストの初来日ツアーとしては史上最多となる累計29万人を動員した。そんな彼らは昨日3月29日に日本1stシングル「Here I Stand」をリリース。そして明日31日には日本デビュー2周年を迎える。音楽ナタリーではこれを記念して、TREASUREの個性豊かなメンバーやグループの強みを分析し、その魅力を紐解く。

文 / 獅々堀智世

TREASUREとは

2018年11月から2019年1月にかけて放送されていた、YG ENTERTAINMENT所属の男子練習生たちによるサバイバルオーディション番組「YG宝石箱」を経て結成されたボーイズグループ。ファンダム名である「TREASURE MAKER」は、この番組の視聴者を指す名称がそのまま継承された形です。2020年8月7日に韓国でデビューし、翌年3月31日には「THE FIRST STEP : TREASURE EFFECT」で日本デビュー。YG ENTERTAINMENT史上初めて、日本出身メンバーが在籍するグループとしても話題を集めました。

2022年4月に韓国で行われた1stコンサート「TREASURE 1ST CONCERT『TRACE』」を経て、同年11月から1月にかけては「TREASURE JAPAN ARENA TOUR 2022-23~HELLO~」、京セラドーム大阪での追加公演「TREASURE JAPAN TOUR 2022-23~HELLO~ SPECIAL in KYOCERA DOME OSAKA」を開催。全国8都市で26公演という韓国アーティストの初来日ツアーとしては史上最多となる29万人を動員しました。

2人のリーダー、3人の日本出身メンバー、“作曲ドル”──

いわゆる“K-POP第4世代”にカテゴライズされるTREASUREですが、ほかのグループにはない特色が多くあります。例えば、リーダーが2人体制であること。国籍やバックグラウンドが異なるメンバーたちを、ヒョンソクとジフンが二人三脚で引っ張っています。また、第一線で活躍するK-POPの男性グループとしては最多である3名の日本出身メンバーが在籍していることも、ほかのグループにはない大きな特徴でしょう。

加えて、曲作りができるメンバーが多数在籍していることも彼らの強みの1つです。全5曲収録された最新ミニアルバム「THE SECOND STEP : CHAPTER TWO」では、すべての収録曲の制作にメンバーが参加。ヒョンソクは「HOLD IT IN」「VolKno」、アサヒは「CLAP!」「THANK YOU」をそれぞれ手がけ、リード曲「HELLO」にもメンバーの名前がクレジットに入っています。

2人だけでなく、ヨシとハルトもYG社屋内に作曲部屋を与えられており(アサヒとハルトは同室)、ヒョンソク、ヨシ、ハルトのラップライン3人はデビュー初期からほぼすべてのリリック作りに参加するなど、活動の合間を縫って日々楽曲制作に励んでいるようです。

なお、このミニアルバムのカムバックに際して公開されたドキュメンタリー映像には、メンバーたちが曲作りに奮闘する姿や、真剣な眼差しでレコーディングに励む姿、そしてときには作り手としてメンバーにディレクションする姿などが映し出されています。

「音楽を楽しむ」ライブ

「TREASURE JAPAN ARENA TOUR 2022-23~HELLO~」並びに京セラドーム大阪での追加公演では、初来日ツアーとは思えない暴れっぷりでライブを楽しんでいたTREASURE。隙あらばアドリブを繰り出し、場のムードに応じてパフォーマンスにアレンジを加えるなど、常に新しい姿を見せ続けファンを魅了しました。そんな彼らのステージからは、「うまく見せたい」という思い以上に、「楽しみたい」「楽しませたい」という熱量がひしひしと伝わってきました。そして、そうした「音楽を楽しむ」というスタンスは最終公演まで健在であったように感じます。

TREASUREのライブの見どころは、参加型の公演であること。アップテンポな楽曲で激しいコールを引き出すのはもちろんのこと、「SLOWMOTION」「ORANGE」といったバラード曲でも彼らはウェーブやシンガロングを促します。またメンバーたちによる煽りのタイミングも絶妙で、「ここが盛り上がりどころ」などと観客を導いてくれるのです。彼らのライブはK-POPのライブに行ったことがないような人であっても、予習不要で十二分に楽しめるのではないでしょうか。U-NEXTでは、今年1月4日に行われたさいたまスーパーアリーナ公演の模様が2024年3月7日まで無料配信されています。ぜひ彼らのライブを体感してみてください。

日本1stシングルでも示した“JIKJIN”のアティチュード

そんなTREASUREが、日本1stシングル「Here I Stand」を昨日3月29日にリリースしました。表題曲は6月16日に封切り、そしてNetflixで全世界配信される映画「ブラッククローバー 魔法帝の剣」の主題歌として書き下ろされた楽曲です。

「ブラッククローバー」は“魔法が全て”である世界を舞台に、魔法を使えない少年・アスタとライバルのユノが魔導士の頂点を目指すという「少年ジャンプ」の王道を地でいく作品。メンバー自身が「映画のテーマと僕たちTREASUREの姿を重ね合わせ、“夢を決して諦めない揺るがない想い”を表現しています」と語るように、「Here I Stand」にはどんな苦境に見舞われても絶対にあきらめず、大切な仲間のために全身全霊の力を尽くすアスタたちの姿と同時に、TREASURE自身の歩みも表現されています。

この曲が初披露されたのは、1月28日に開催された京セラドーム大阪公演初日のアンコールステージ。それまでの日本公演のアンコールは、TREASUREが初の日本オリジナル曲「BEAUTIFUL」を歌いながらメインステージに登場する演出でスタートしていましたが、ドーム公演で彼らは、初披露する「Here I Stand」を歌いながらトロッコに乗って姿を現しました。

「いつか 夢見たあの日が 胸の中で響いているよ」という歌い出しを担当するのはアサヒです。メンバー全員にとって京セラドームでのライブは感慨深いステージだったかと思いますが、ドームという大きな舞台で地元大阪への凱旋を果たしたアサヒにとっては、とりわけ思い入れが強い公演だったかと思います。そうして夢を叶えたアサヒが、彼らしい飾らない声色で歌う曲の冒頭は胸に迫るものがありました。

初めて「Here I Stand」聴いたときに感じたのは、メンバーそれぞれの声をしっかりと聴かせる楽曲であるということ。TREASUREは各メンバーの声がとても個性的です。曲のジャンルにかかわらず、大所帯ながら、誰がどのパートを歌っても決して埋もれません。そんな彼らの強みである十人十色の声の輪郭を、楽曲構成や全体を通してのキーの高さ、そしてシンプルなメロディラインが際立たせています。

また中盤に差し込まれるラップパートも聴きどころ。「とっくに捨てた言い訳や口実」「前しか見てない両目」「Don't look back この道 戻る場所はない “JIKJIN”」などのフレーズは、TREASUREの名を広く轟かせ、グループのターニングポイントとなった昨年末の「MAMA」のステージのタイトル「WE DON'T NEED WAY BACK」を想起させます。まっすぐ前を向いて、誠実に音楽と向き合い続けるTREASUREらしい表現です。

こうしたフレーズはもちろんのこと、ミニマルなギターリフを起点に徐々に盛り上がり疾走感あるサビにつなげる、ポップソングの王道とも言える「Here I Stand」の構成からも、前に進むための足枷となる悩みや迷いを振り切るような清々しさを感じさせます。

リーダーのヒョンソクは3カ月にもおよぶ日本ツアーを終えた際、SNSにてTREASURE MAKERに向けた長文のメッセージをアップしました。そこには、「大変なときは踏ん張ろう、という言葉がありますが、僕たちは『踏ん張ろう』ではなくて『やってみよう』と言ってきた」と記されていました。ヒョンソクに限らず、メンバーたちは「友情・努力・勝利」を体現し、いつ何時もポジティブなメッセージを届け続けています。

現在TREASUREはバンコクやマニラなど8都市を巡るアジアツアーの真っ最中。8月19、20日に開催される「SUMMER SONIC 2023」への出演も決定しました。ドーム公演を成し遂げて次なる夢に向かって“直進”するTREASUREが、どのような姿で日本にカムバックするのか期待が膨らみます。最新ミニアルバムのリード曲「HELLO」で彼らは「Where you've been all my life?」と歌いましたが、この言葉は、私が初めてTREASUREと出会ったときに感じた感情そのもの。日本デビュー3年目に突入する彼らの音楽を通じて、1人でも多くの方とこの気持ちを共有できるようになることを願います。