友成空|王道を突き進む若きシンガーソングライターのデビュー作

友成空が3月31日に5曲入り音源「18」でデビューを果たした。

友成は、顔もプロフィールも公開していない現在18歳のシンガーソングライター。高校生活最後の日にリリースされたデビュー作「18」では、原田茂幸(ex. Shiggy Jr.)アレンジのもと、シティポップやファンクナンバー、シンプルなバラード曲などに乗せて、18歳ならではの等身大の思いが歌われている。この作品の発売を受けて、音楽ナタリーでは友成の特集を展開。人生初のインタビューで、彼はこれまでの経歴やデビューにあたっての心境を語った。

取材・文 / 石井佑来

音楽でプロになろうとは全然思ってなかった

──友成さんは現在18歳ということですが、音楽制作を始めたのはいつ頃なんですか?

小学4年生からですね。小学1年生からピアノを習っていたんですけど、小4のときに父から古い電子ピアノをおさがりでもらって。そのピアノに多重録音みたいな機能が付いていて、それで歌なしの曲を作り始めました。そのピアノを今でも使ってます。

──ご両親も音楽好きだったんでしょうか。

音楽関係の仕事をしていたわけではないんですけど、父が趣味でベースを弾いていて。あと、父の部屋にCDがたくさんあったので、それを小さい頃から漁って聴いてました。

──その頃は例えばどういうアーティストのCDを?

当時聴いていた中で今でも好きなのはJamiroquaiとか、あとは大貫妙子さんとか。そのあたりは、わりと今やっている音楽のルーツにもなってますね。

──そのあとしばらくは1人で歌なしの曲を作っていたんですか?

そうですね。高校1年生まではずっと1人でインスト曲だけを作っていました。自分の曲を友達に聴かせるのが恥ずかしくて、本当に自分だけで楽しむ感じで。高校に入ってからバンドを組んで、歌ありの曲を作り始めたりしたんですけど、それまではひたすら1人でインスト曲を作ってました。

──ずっと1人で作っていたんですね。音楽をやっていること自体を周りに隠していたんですか?

隠していたわけじゃないけど、ほとんど人には言ってなかったですね。高校に入ってからやっと表に出せるようになったんですけど、そうしたら意外とそれが功を奏して。僕、とにかく運動音痴で、小中学生のときはスポーツが嫌で嫌でたまらなかったんですよ。一般的に学生時代って、スポーツできる人が楽しい学校生活を送れるイメージがあるじゃないですか。だけどそんな運動音痴な僕でも、文化祭でバンド演奏したりしているうちにいろんな同級生が僕に話しかけてくれたんです。別世界にいると思ってたスポーツ好きの男子が、一緒にごはんを食べてくれたり下校してくれたり。音楽のおかげでいろんな出会いが増えました。

──プロのミュージシャンになるというのはいつ頃意識し始めたのでしょうか。

実はデビューが決まるまで、本当に意識したことがなかったんです。高校2年生の春ぐらいから歌ありの曲を作り始めて、そこで初めて「人に聴かせたい」という思いを抱くようになって。それからYouTubeやSNSに曲をアップし始めたんですけど、あくまで友達に聴いてもらって感想をもらうのが楽しいくらいの、仲間内でやれればいいなという感覚だったんです。音楽でプロになろうとは全然思ってなかった。

──そうなんですね。それがこうしてデビューすることになったのはどのようなきっかけで?

今自分が所属している事務所がTwitterでデモテープを募集していたんですけど、そのツイートを友達が別の同級生に向けて「応募してみろよ」という感じでリツイートしていて。それを見たら「この学校で作曲といえば僕でしょ」みたいなプライドが急に芽生えて(笑)、負けたくない一心で応募してみたんです。デモテープを送ったときは連絡が来るとすら思っていなかったので、失礼ながら軽い気持ちというか、自分の将来に直結するようなことだとは正直思っていませんでした。

“王道”から受けた影響

──実際にデビューが決まったときの心境はいかがでしたか?

実は今でも「まさかこうなるとは」という気持ちがあります(笑)。でもやっぱりうれしいですね。せっかく音楽を作るならいろんな人に聴いてほしいという思いはやっぱりあるので。そう考えると、こういった形でCDをリリースさせてもらえるのは、これ以上なくうれしいことだなと思います。

──音楽以外にやりたい仕事や将来設計はあったんですか?

高校で中国語を習っていて、どんな形かはわからないけど中国と日本をつなぐ架け橋のような仕事をしたいなと漠然と思っていました。でもそれはミュージシャンという仕事でも、例えば中国語の曲を出したりツアーで中国を周ったりなどで実現できると思うので、今でも目標の1つとしてありますね。

──中国のどういったところに魅力を感じているんでしょうか。

雰囲気が日本に近いところもありつつ、カオスな感じがするところがすごく好きなんです。自分の音楽もオリエンタルな雰囲気を大切にしていて。ブラックミュージック的な曲を作るときでも、アジア圏ならではの音を入れたいと常々考えながら曲作りをしています。

──歌モノを作り始めるにあたって影響を受けたアーティストは?

ひと昔前のポップスの、歌詞とメロディの組み合わせがすごく好きで。例えば竹内まりやさんや槇原敬之さんって、日本語をとてもきれいに歌うじゃないですか。言葉のイントネーションとメロディがすごくきれいにかみ合っている。そういう部分は、歌モノを作るうえで参考にしています。あとはリアルタイムで聴いていたのは、いきものがかりとか。J-POPに関しては王道ばっかり聴いていると思います。

二番煎じにはなりたくない

──友成さんの同世代でもすでに活躍しているアーティストがたくさんいますよね。そういった方々については、どのように見ていますか?

例えば崎山蒼志さんは同い年なんですけど、「もし一緒に曲を作れたら、すごいものができそうだな」と一方的に思っています。僕が鍵盤専門で、崎山さんはアコースティックギターがすごく上手な方なので、そういう意味でもタイプはまったく違うと思うんですけど、だからこそなんか面白いことができそうだなと。今までは「この人と一緒に音楽ができたら面白そうだな」なんて思ったことなかったんですけど、この世界に入ってからいろんな人と一緒にやりたいという気持ちが芽生えましたね。

──比較的音楽性が近いところでいうと、Vaundyさんも同世代ですよね。

そうですね。ただ、Vaundyさんと一緒にとかはちょっと……やっぱり1、2歳違うだけで恐れ多いです(笑)。

──ああ、18歳にとっての1、2歳の差って大きいですよね(笑)。

でも、似てしまわないように常に意識はしています。Vaundyさんの二番煎じにはなりたくないので。

──ほかに同世代で意識している方はいます?

藤井風さんは大好きですね。達観しつつも人の心に寄り添う感じが20代前半とは思えなくて、すごくカッコいい。自分はわりと等身大というか、背伸びしないような曲を作っているんですけど、いずれああいう曲も作ってみたいです。