音楽ナタリー Power Push - TOKYO HEALTH CLUB

真面目に“フェイク”を追求するヒップホップクルー

人前に出るのはイヤだから加入したくなかった

──DULLBOYさんはもともと、どんな音楽を聴いていたんですか?

DULLBOY 大学時代からヒップホップをちょっと聴いていたんですよ。スチャダラパーとかトライブ(A Tribe Called Quest)とか。

──ニュースクール方面を。

TSUBAME それで「じゃあラップできんじゃん」って話になって、軽いノリで誘ったんです。もう1人誘ったんですけど、そいつはすっごいラップが下手だったんですよ。僕らの「ASA」のMVを撮ってくれたやつなんですけど。

──あのMVの着眼点と仕上がりはすごくいいですね。

TSUBAME ありがとうございます。MCとしては参加しなかったけど、映像で参加してもらった感じで。

──そこは周りにクリエイターがたくさんいる強みですよね。

TSUBAME そうなんですよ。それを生かさない手はないので。話を戻すと、DULLBOYのフロウはうちらにとって新しい感じがあって、「正式に入らない?」って誘ったんです。そしたら「イヤだ」って返事で(笑)。

マッサージチェアで疲れを癒やすTOKYO HEALTH CLUB。

DULLBOY 人前に出たくなかったんですよ。それに音楽とか何もやってなかったから、リズム感もないし、音痴だしダメでしょと思って。でも、なぜか流れでいつの間にか加入しちゃってました。それから、2013年5月にリリースした1stアルバム(「プレイ」)を作るタイミングでJYAJIEもラップすることになって。

JYAJIE ベースをやめてラップをするか、って話になったんで(笑)。

──で、いざ3MC+1DJ編成でやってみたら、いい感じだったという?

TSUBAME そうですね。JYAJIEはヒップホップの文脈をわかっているので、最初からオンビートでラップを乗せることができたし、韻も固めで。SIKK-Oは異質なMCだし、こいつ(DULLBOY)もリズム感はイマイチなんで、この2人だけだとちょっと変則的なラップグループになっちゃうんですよ。それはイヤだなと思ってたところに、安心して聴けるJYAJIEのラップが入ってきて「これで面白いバランスになったんじゃない?」ってことになったんです。

自分たちに2500円のクオリティを出せるのか?

──さっきTSUBAMEさんがPSGや5lackさんのソロを「ユルいのにスマート」と評してましたけど、THCのスタイルもそれに当てはまるものだと思うし、それをいかにポップに表現するかという指針がこのアルバムで明確に提示されていると思います。

顔はめパネルで記念撮影するTOKYO HEALTH CLUB。

TSUBAME 完全にその通りですね。これまでひたすら「自分たち像探し」をしてきて。ユルさのクオリティをいかに積み上げるかが重要だと思ったんですよね。ただユルいだけじゃ誰も聴いてくれないと思うし。今作はそこをちゃんと固めようと思いました。それは、いかに2500円のクオリティを出せるかということでもあって。今までは自分たちのレーベル(OMAKE CLUB)からリリースしていたので、500円とか999円とか値段設定をガッと下げられたんですよ。レーベル自体が「ローファイの値段設定」を打ち出しているので。でも、今回は自分たち自身がまず2500円のレベルに達しなければいけなくて。

──どんなヒップホップに価値があると考えているんですか?

TSUBAME それについては、僕らには「ヒップホップってこうでしょ?」という認識しかなくて。

SIKK-O ヒップホップって韻を踏むよな、ワードサンプリングするよな、ネームドロップするよな、っていうことを踏まえて、自分だったらこういうラップを聴きたいなと思うことを実践してるんですよね。

──要は、THCはヒップホップというジャンル自体をオマージュしているということだと思うんですけど。

TSUBAME まさに。

TSUBAMEDULLBOY
SIKK-OJYAJIE

SIKK-O 「MAD-ONNA」とかも俺らがこういうラブソングをまじめに作ったら面白いんじゃないかという発想で。アルバム全体的にもそういうヒップホップ自体をオマージュするニュアンスが確かにありますね。

JYAJIE 「MAD-ONNA」なんか、その意図に気付かない人は、こういう曲を得意とするグループだと思うかもしれない。

──それも一興だろうし。

SIKK-O そう。1つ前のフルアルバム(「HEALTHY」)に入ってる「CITYGIRL」もそういう狙いで作ったんですけど、普通にいい曲だって思われてもうれしいっていう。

ニューアルバム「VIBRATION」/ 2016年6月8日発売 / 2700円 / LEXCD-16009 / Lexington Co., Ltd / Manhattan Recordings
「VIBRATION」
収録曲
  1. ON -飛んでくLOVE-
  2. Vibration 弱
  3. ASA
  4. 天竺
  5. オシャレ ft. MCpero
  6. 悪魔
  7. 休日はHoliday
  8. MAD-ONNA ft. ZOMBIE-CHANG
  9. Last Summer
  10. ミューージック
  11. OFF -名盤ができた-
  12. ズラカル ft. MACKA-CHIN(YONIGE ver.)
TOKYO HEALTH CLUB(トーキョーヘルスクラブ)
TOKYO HEALTH CLUB

2010年に結成された、多摩美術大学の同級生であるTSUBAME(DJ)、SIKK-O(MC)、JYAJIE(MC)、DULLBOY(MC)からなるヒップホップグループ。TSUBAMEが主宰する著作権フリーのインターネットレーベル・OMAKE CLUBから2013年5月に1stアルバム「プレイ」を発表し、限定500枚を3カ月で完売させた。2014年には2ndアルバム「HEALTHY」のリード曲「CITYGIRL」が話題に。翌2015年には楽曲「ASA」がJ-WAVEスプリングキャンペーンのラジオCMジングルとして使用された。2016年にヒップホップ / R&Bの専門レーベルであるManhattan Recordsと契約し、6月にニューアルバム「VIBRATION」をリリースした。