T字路s「PIT VIPER BLUES」 PR

T字路s×千原ジュニア|渡りきることのない泪橋

T字路sが2ndアルバム「PIT VIPER BLUES」を1月23日にリリースした。

ブルースやフォーク、ロックンロールをベースにした味わい深いサウンドと激情ほとばしる伊東妙子(G, Vo)のブルージーな歌声で多くの音楽ファンを魅了しているT字路s。音楽ナタリーでは「PIT VIPER BLUES」のリリースを記念して、T字路sを愛聴しているとかねてから公言してきた千原ジュニアとの対談を実施した。共通の交友関係やT字路sの代表曲「泪橋」にまつわるエピソード、そしてジュニアが明かすツッコミとボケ担当の音楽に対する接し方の違いなど、対談は多岐にわたる話題で盛り上がった。特集の後半には「PIT VIPER BLUES」のライナーノーツを掲載。アルバムの魅力を掘り下げたテキストも併せてじっくり楽しんでほしい。

取材・文 / 宮内健 撮影 / 相澤心也

左から篠田智仁(B)、伊東妙子(G, Vo)、千原ジュニア。

ジュニアがT字路sを知ったきっかけ

伊東妙子(G, Vo) 以前、ジュニアさんがテレビ番組で、私たちの「泪橋」を紹介してくださったことがあって(日テレ系「チカラウタ」2016年8月7日放送回)。それを初めて知ったとき、「あのジュニアさんが聴いてくれてるんだ!」」ってびっくりしたんです。そんなことがあるんだって。

篠田智仁(B) しかも、好きな曲として紹介してくれたなんて。ジュニアさんってボクシングも好きだから、ストイックな人というイメージがあって。変な言い方かもしれないけど、芸能人芸能人してないというか、音楽でいうとパンクスとかロッカーみたいな雰囲気を感じるんです。そういう方に俺らの音楽を認めてもらえているのが本当にうれしくて。

千原ジュニア いえいえ、とんでもない。

──ジュニアさんがT字路sの音楽と出会ったきっかけを教えていただけますか?

千原 もう15、6年になるんですが、僕は沖縄の宮古島に毎年のように行ってるんです。現地にも友だちができて、中にはすごく音楽に詳しい人もいて。その中に「宮古島ロックフェスティバル」というイベントを立ち上げたナオヤ(平良直也氏)って友達がいまして。

伊東 私たちも一昨年初めて宮古島でライブをする機会があって、ナオヤさんとお会いしたんですよ。

千原ジュニア
T字路s

千原 おお、そうなんですか!

伊東 みんなで酒を酌み交わしました(笑)。宮古島はもともとサイコビリーが盛んで、“ミヤビリー”って言葉もあるぐらいで。

千原 そうなんですよね。

篠田 公民館でライブとかやるんだけど、それがまたいい感じなんですよ。お年寄りから子供まで島中から集まって。おじいちゃんたちは後ろのほうで泡盛を飲んで、前のほうでイキのいい奴らがサイコビリーで暴れてるっていう。最高な環境でしたね。

千原 いいですねえ(笑)。で、その宮古島のナオヤがあるとき、「これ、ジュニア好きな音楽やと思うわ。持って帰り」って、CD-Rを1枚くれたんですよ。パッケージも何もなくて、盤面に「T字路s」って名前だけが書いてあったのかな。それを東京に戻ってきてから聴いたら、すげえ、カッコええなあって。最初はホンマに、歌ってるのが男の人やと思い込んでて。

伊東篠田 あははは。

千原 まあ、よく言われるんでしょうけどね。でも、調べてみたら女性なんやって、そこでまた驚いて。

──その中でも特に「泪橋」という曲にヤラれてしまった、と。

千原 そうなんです。僕が人生で一番読み返した本が、小学4年生ぐらいに親戚のおっちゃんに全巻もらった「あしたのジョー」なんです。その中に泪橋という場所が出てきて。自分がずっと読んでる大好きな漫画と、カッコええと思った音楽が、「泪橋」というキーワードでつながって。それもあって、さらに感動したんですよね。僕は毎月、兄の(千原)せいじと一緒に「チハラトーク」というトークライブをやっていて、そのエンディングでも「泪橋」をかけさせてもらってるんですよ。

伊東 うわー、ありがとうございます! 「泪橋」は、私がT字路sを結成する以前に組んでいたバンド(DIESEL ANN)のときに作った曲で、10年以上歌ってるんです。

千原 そうなんですってね。

篠田 ライブでも毎回演奏してるし、セットリストの中でも、大事なところに入る曲なんです。

左から篠田智仁(B)、伊東妙子(G, Vo)、千原ジュニア。

何度も生まれ変わる「泪橋」

──T字路sのニューアルバム「PIT VIPER BLUES」では、その「泪橋」を新たにレコーディングして収録しています。

伊東 以前に録音したとき(2011年発表のミニアルバム「マヅメドキ」収録)よりも、キーが少し下がってて、巻き舌もだいぶ取れてるというか。昔は意気がってたのか、かなり巻いて巻いてだったんですけど(笑)。

千原 いやいや、あれはあれでいいじゃないですか。

伊東妙子(G, Vo)
篠田智仁(B)

伊東 10年歌ってきて、初期とはキーや歌い方は変わってきてるけど、詞の内容は自分の中では古くならなくて。毎回歌ってるのに、なぜか飽きないんです。

篠田 飽きないし、いつまでも完成しないというか。「キレイにできたから、これが完成形だ!」みたいに思ったことがない。気持ちが入りすぎちゃって、いつまで経っても冷静に演奏できないんです。

伊東 「ウワーーーッ!」って感じで、毎回全身全霊かけて歌ってるから。

千原 その感じ伝わってきます。

篠田 僕なんかベースを弾いてるだけだから、本来は苦しくなる必要なんてないんだけど、なんだか妙ちゃんの気持ちと同期しちゃって。終わったらハーハー息が上がって、ホワイトアウトみたいになっちゃう(笑)。毎回そのぐらいになるから、逆に演奏は粗くなりがちなんだけども、それはそれでいいんじゃないかと思いつつ。毎回演奏して、ここまでの感情になる曲はほかにないですね。

千原 へえー、そんな感じなんですね。でも、そういう曲を持ってるバンドって数少ないんじゃないですか?

伊東 そうかもしれないですね。10年の間で詞を一部変えたり、ちょっとずつ変化はしていて。だからこそ、今の「泪橋」をアルバムに閉じ込めておきたかった。ほかの曲も一発録りなので、ライブと同じような感じでは録ってるんだけど、特に今回の「泪橋」は、目の前にお客さんがいるつもりで、120%全力疾走で演奏しました。

千原 この先3枚目、4枚目とアルバムが出ても「泪橋」だけは毎回入ってるとか(笑)。それ、ホンマに新しいんじゃないですかね?

伊東 確かに(笑)。

篠田 そうしたとしても、たぶん毎回ちょっと違うと思うし、一緒の感じにできないんですよね(笑)。最初に録音したときのほうが、巻き舌だったり、妙ちゃんの歌もある意味エッジが効いてるのかもしれないけど、今回は今回で、キーが下がったことでドスが効いてるというか。俺はそっちのほうに迫力を感じるんですよね。

──演奏するごとに、それまでの経験だったり、過ごしてきた時間が歌に込められていくんでしょうね。

篠田 この曲の大きなテーマというのが、殴られても殴られても立ち上がって、前に進むというもので。そこにどう立ち向かっていくか、その時々の感覚が演奏に出てきてるんじゃないですかね。

左から千原ジュニア、伊東妙子(G, Vo)、篠田智仁(B)。

千原 5枚目のアルバムで、もし「泪橋」を入れはったら、またすごい巻き舌に戻ってた、みたいな。

伊東篠田 ははははは。

千原 そんな展開もアリやと思うし。それにしても、「渡りきることのない 泪橋 いざ振り向かず進め」というフレーズは、本当に素晴らしいと思いますね。

伊東篠田 ありがとうございます。