This is LASTはなぜ分析するのか?2ndフルアルバムで向き合った、スマホ時代の音作り (2/2)

ラブソングに宿る、その時代の恋愛の在り方

──アルバムには新曲として「アウトフォーカス」「ラブソングにも時代がある」「君と生きる」の3曲が収録されています。「ラブソングにも時代がある」というのは言い得て妙で、ポケベルにLINEに、時代ごとのツールがラブソングに登場することは多々あるわけですが、マッチングアプリが登場するのが新鮮でした。

菊池 この楽曲はすごくパーソナルなものだと思っていて。いろんな時代のラブソングが僕も大好きですし、歌詞を見ればその時代の恋愛の在り方が見えるんですけど、どの時代もある程度は同じなんですよね。とは言え、それぞれの時代に、その時代を代表するような恋愛の形っていうものは絶対にあるよな、これからもそういうものはどんどん新しく出ていくんだろうなと思って。ラブソングを書いている者として自分もそういう楽曲を残したくなったんですよね。

──「アウトフォーカス」はテレビドラマ「痛ぶる恋の、ようなもの」の主題歌です。This is LASTの新たな誘引力が発揮されていると思いました。

菊池 ドラマの話をいただいて、カメラをやっている主人公の物語ということだったので、カメラの専門用語とか部品のことまで勉強して。カメラをやっている者としての視点と、恋愛の部分をどのように合わせていこう?と考えていきました。僕は詞先なので、歌詞からだいたい見えるように書いていくんです。普段から移動時とか、自分だけが見る小説みたいなものを書いたりしては自分で読んで楽しんでいるタイプなんですけど(笑)、そういう感じで、今まで書き溜めてきた中からいいとこ取りしながら書いたのが「アウトフォーカス」です。

──「アウトフォーカス」に限らず、鹿又さんが菊池さんの歌詞に関して日頃感じることは?

鹿又 あきの書く歌詞はほぼほぼ実体験なので、こういう恋愛をしてきたんだなあって。優しすぎるというか、けっこう愛が重めなタイプなので、浮気されやすい人種なのかな(笑)。しかも、複数人に浮気されてるので。「ああ、この歌詞はあの人のことなのかな」って思いながら聴いてますね。

菊池 そうですねえ……。

鹿又 「殺文句」の「夜桜からのラブホテル」とか、すごいパワーワードですよね。こういうパワーワード、もうちょっと欲しいなと思います。想像で書けないですよね。

「This is LAST one man live tour "HOME"」の様子。(撮影:日吉“JP”純平)

「This is LAST one man live tour "HOME"」の様子。(撮影:日吉“JP”純平)

──(笑)。もう1つの新曲が「君と生きる」ですね。

菊池 これは2022年にレコーディング自体は終わっていた曲です。2021年の大晦日から友達と一緒に年越しして、遊んで、帰ってきてから書いた、ちょっと幸せな感じの楽曲ですね。「バンドっぽく」と決めて作ったこともあって、ノリのいい曲ができたなあと思いますね。サビの始まりで3声のコーラスを入れてるのは「カスミソウ」でやっていることを踏襲しました。僕らなりのノリやすいロックナンバーでありつつも、実は隠し味として、ポップスから取ってきたようなアレンジの手法を入れたりもしています。それは僕らの遊び心みたいな感じですね。

──ロックバンドとしてのアイデンティティと、ラブソングを生み出す内面、その2つは二項対立ではないんですね、This is LASTにおいては。

菊池 そうですね。僕にとってはすべてが「今のロックバンドとして、どう立ち向かっていくか」ということの延長線上でしかないので。それこそTikTokで「踊ってみた」みたいなコンテンツが出てきたとして、曲に対して「合ってる」「合ってない」という反応が巻き起こるのは、今の時代のロックバンドだからだろうなと思うし。TikTokやInstagramというものがある今は、昔のバンドと比べると「ライブハウスで表現すればいい」という範囲を飛び出して、24時間、365日いつでも自分を表現できる状態になっていますよね。そんな中で取捨選択をして、どういうふうに自分たちを表現していくかというのが、なんでもできる時代だからこそ、逆に今の時代のロックバンドは大変で。自分には何ができるか、何をしたいのかを考えながらがんばってます。

菊池はなぜそこまで分析するのか

──秋には自身最大規模、全国27公演のワンマンツアーが控えていますね。

鹿又 最大規模のツアーということで、よりフィジカルとメンタルが鍛えられて、それでThis is LASTがもっと成長するかと思うと……ちょっと恐ろしいなあと思いますね(笑)。

菊池 僕が対バン相手だったら、絶対This is LASTと一緒にやりたくないですよ(笑)。今はすごくいい状態なので、早く観ないともったいないと思いますね。僕、基本的にはスーパーネガティブで、自分に対してめちゃめちゃ自信がないんですよ。ステージを降りて、自分のライブを分析することも、時代の曲を分析することもそうですけど、すべてにおいてなんでそんなに分析するか?といったら、自信がないからなんですよね。ただ、お客さんに対して「一緒にいてくれてありがとうございます」っていう感謝の気持ちが常にあるので、ライブではそれを目一杯伝えられるように、逆に自信が出てくるというか。そういう両方の部分が僕にはあるので、情緒不安定なタイプではあるんですけど(笑)、だからこそこういう楽曲が書けるし、切り替えてライブができるんだと思いますね。

「This is LAST one man live tour "HOME"」の様子。(撮影:日吉“JP”純平)

「This is LAST one man live tour "HOME"」の様子。(撮影:日吉“JP”純平)

──そういうネガティブ思考の部分を、普段から鹿又さんに見せたり、共有したりすることはあるんですか?

菊池 共有してるわけではないですけど……僕のネガティブ思考が制御できないところまで広がっちゃうときがあって。そこまで行くと、漏れ出しちゃってるときはありますね。

鹿又 「あ、たぶんそういう状態だな」って思ったときは……あまり関わらないようにしています(笑)。ネガのオーラに自分まで飲まれちゃうから。もともとの僕の性格もあると思うんですけど、「自分でなんとかして」って思う(笑)。

菊池 彼は自分でどうにかできるものに関しては悩むんですけど、それ以外に関してはちゃんと「しょうがない」で片付けて一歩踏み出せる人なんですよ。そこは僕とまったくもって違って、尊敬してるんですけど、僕は逆にいつも自分を疑っているので、自分のアラに対して目を向け続けて、そこを叩き直していくというか。ひどい場合は半年ぐらい病んでるときもあります。悶々と1人で考えながら、その感情を曲にする、っていう感じですね。永遠にそうなんだと思います。そういう“病み期”を抜け出したときにちゃんとひとつ成長していると思うので、「自分は成長する段階に入ったんだな」と捉えられるようになりました。

──そういう部分も理解した上で、適度な距離を保っているわけですね。

鹿又 そうですね。もう付き合いも長いので。

菊池 This is LASTを組む前からずっと一緒だし、家族みたいに接しているのもあるし。この間、スタッフの方に「2人って仲悪いんですか?」とふざけて聞かれたんですけど「仲は悪くないけど、これ以上仲よくなることもない」と言いました(笑)。だいたいてる(鹿又)の考えてることはわかるし、たぶん俺の考えてることはてるもわかると思うんです。あと、俺らバンドに対しての思考もめちゃめちゃ似てるんです。しかも最近だと、靴も一緒だし、Amazonの注文履歴も同じだったりする。俺も別に、相談したいとかもないんですよ。てるが安定していてくれることで、僕が思いっ切り悩めるので。そういう関係ができあがっていて……熟年夫婦みたいな感じですね(笑)。

This is LAST

This is LAST

ライブ情報

This is LAST one man live tour "HOME"(※全公演チケット完売)

  • 2024年2月23日(金・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年3月3日(日)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2024年3月30日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2024年3月31日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年4月21日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

This is LAST one man live tour 2024 Autumn

  • 2024年9月1日(日)千葉県 千葉 LOOK
  • 2024年9月4日(水)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2024年9月5日(木)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
  • 2024年9月8日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2024年9月14日(土)岩手県 the five Morioka
  • 2024年9月15日(日)宮城県 仙台Rensa
  • 2024年9月19日(木)三重県 CLUB ROOTS
  • 2024年9月21日(土)京都府 KYOTO MUSE
  • 2024年9月22日(日・祝)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2024年9月25日(水)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2024年9月28日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2024年9月29日(日)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2024年10月3日(木)山口県 周南RISING HALL
  • 2024年10月5日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2024年10月6日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年10月8日(火)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2024年10月12日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年10月16日(水)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2024年10月18日(金)石川県 Kanazawa AZ
  • 2024年10月19日(土)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2024年10月24日(木)鳥取県 米子AZTiC laughs
  • 2024年10月26日(土)愛媛県 WStudioRED
  • 2024年10月27日(日)香川県 DIME
  • 2024年11月2日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2024年11月3日(日・祝)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2024年11月9日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2024年11月21日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama

プロフィール

This is LAST(ディスイズラスト)

2018年5月に結成された千葉県柏市発のロックバンド。菊池陽報(Vo, G)、鹿又輝直(Dr)からなる。2022年8月に「もういいの?」、11月に「カスミソウ」を配信リリースすると、各種サブスクリプションサービスやYouTubeで多数再生され、SNSでも反響を呼んだ。フェスやイベントにも精力的に出演し、高い集客力を誇る。2023年3月にABEMA「花束とオオカミちゃんには騙されない」の挿入歌「#情とは」を配信リリース。2024年2月よりZepp含む5会場を巡るツアー「HOME」を行い、全公演のチケットが完売。3月にツアーと同タイトルの2ndフルアルバムを発表した。9月からは全27公演となる自身最大規模のワンマンツアーを実施する。