The Taupeが作る映画館
──アルバム「サイケデリックシネマ」のお話も聞かせてください。タイトルに「シネマ」とある通り、今作のテーマは映画なんですよね?
かわもト はい。僕、もともと映画がすごく好きで、特に映画館に足を運んで作品を観るのが好きなんです。非日常空間の中、大音量で1つの映像作品に集中する。そういうダイナミックな作品の楽しみ方をThe Taupeで表現してみたくて、このコンセプトにしました。具体的に言うと「サイケデリックシネマ」というのは僕らが考えた架空の映画館の名前なんですよ。サイケデリックシネマという映画館では10作品の映画が上映されている設定で、今回のアルバムの収録曲はそれぞれの映画の主題歌として作ったものなんです。
──ということは、それぞれの曲に紐づいたストーリーがあるわけですか?
かわもト その通りです。例えば1曲目の「ピグロンX」はSFモノ。ピグロンというかわいらしい謎の生物がバーにやってきて、突然“ピグロンダンス”というかわいらしいダンスを踊り始めるんです。変な生物の来店にギョッとしていたお客さんたちも、ピグロンのダンスに魅了され、店のみんなでピグロンダンスを踊る……という短編映画ですね。こういうストーリーをすべての曲で考えています。
──そういったストーリー作りはすべてかわもトさんが考えている?
かわもト はい。
おのてら 私たちが何か提案するときもありますけど、それはゆうくんが迷ってるときくらいですね。The Taupeの世界観はやっぱりゆうくんが作り出しているものだから、基本的にはお任せしたほうがブレない形になると思うんです。
しょーへい先生 実はアルバムの歌詞カードには、楽曲の元になった架空の映画のストーリーがそれぞれ書いてあるんですよ。
かわもト 読んでもらえればわかると思うんですけど、けっこう変なストーリーの作品ばかりが上映されてますね。
パティ 曲調もおかしいけど、「テンプテーションNO.5」って曲はストーリーも奇抜だよね。
──どんなストーリーなんですか?
かわもト 「テンプテーションNO.5」の時代背景は2100年で、「テンプテーションNO.5」という名前のコンピューターが脳となってすべてを支配している時代の話なんです。すべてを支配している「テンプテーションNO.5」が突然機能を停止してしまって、人々がパニックに陥ってしまう。その後、人々がどうやって元の生活を取り戻していくか、という映画ですね。
──かわもトさんの書く詞は基本的にすごくシンプルですよね。細かくストーリーを考えてあるわけですから、もっと複雑な歌詞であってもおかしくなさそうですが。
かわもト この曲に限らず、歌詞はシンプルにして聴きやすくしたいんですよね。言葉の意味を理解してもらいたいわけじゃなくて、1つの音として感じてほしい思いが強いんだと思います。
最後は笑ってハッピーエンドがいい
──映画の主題歌がコンセプトということもあり、これまでの音源と比べていろんなことに挑戦している印象を受けました。例えば「パパラッチパパ」のようにBPMの速い曲や「ビバリーヒルズシネマ倶楽部」のようなミドルテンポのポップスは新しく聞こえました。
パティ 確かに「パパラッチパパ」のようにテンポが速くて展開がめちゃくちゃ多い曲は珍しいですね。「パパラッチパパ」はパパラッチパパをパパラッチママが追いかけてるっていう謎のストーリーが元になっているんですけど、楽曲の中にちゃんとその様子が思い浮かぶような展開が込められているんですよ。エフェクターをいろいろ使って音色を変えながら、映画の情景が思い浮かぶような音を意識しました。
──アルバム最後の曲「ビバリーヒルズシネマ倶楽部」はどういうストーリーをもとにしているんですか?
かわもト これは青春映画の主題歌ですね。ビバリーヒルズに住む主人公の女の子の話で、何不自由なく学生生活を謳歌していたんですけど、彼氏との関係が怪しくなってきて……別れるか、別れないか、みたいな青春の葛藤を描いたストーリーなんです。
しょーへい先生 「ビバリーヒルズシネマ倶楽部」は、けっこう制作の最後のほうにできた曲なんです。映画のコンセプトが同じようなものばかりだとつまらないから、こういうさわやかな風景が浮かんでくるような曲も入れたくなって。
おのてら すごくいい曲だよね。
かわもト 演奏もすごくシンプルでメロディも軽やかだし、ひと言でいえば平和な曲ですね。僕らはこれまでもいくつかCDを作ってきたんですけど、最後の1曲はなるべく光が差す感じ、希望がある形で終わりたいんです。今作は“サイケデリック”な作品なのでアルバムの中盤はすごく混沌としてるかもしれないんですが、最後はやっぱり気持ちよく終わりたくて。最後は笑って、ハッピーエンドがいいと思うんです。
映画は映画館で、The Taupeはライブで
──バンド初のコンセプトアルバムでもある「サイケデリックシネマ」は、The Taupeにとってどんな作品になりましたか?
かわもト 過去最高の作品になったと自負しています。曲の展開もアレンジも個人的には一番いい仕上がりになったと思う。
しょーへい先生 コンセプトがしっかりしてるから、今までの音源よりとっつきやすいと思うんですよね。映画の主題歌をイメージしているので、キャッチーさも兼ね備えているし、ポップスしか聴かない人にも理解してもらえる内容になったと思います。
おのてら 私たち、こういうふうにコンセプトをちゃんと決めて作品を作ったことがあまりなくて。1曲だけ聴いてもらうより10曲聴いてThe Taupeの作り出す映画館を丸ごと楽しんでもらいたいし、歌詞カードにはストーリーも書いてある。1枚のCDの中ですべてを完結させる作品をやっと作れたなって達成感をすごく感じています。
パティ ちょっと前まで、僕らちょっともがいている時期がありまして。もちろん曲作りはしてるし、ライブもやってたけど、どういう作品を作ればいいのか、The Taupeというバンドはどうあるべきか、メンバーみんなで悩んでたんですよ。でも移籍をきっかけにみんなでいろいろ考えるようになって、今回の「サイケデリックシネマ」でバンドとして1つの大きなステップを踏めた実感があるんです。コンセプチュアルな作品作りでありつつ、僕らの活動の集大成的な作品になっていると思うので、いろんな方に聴いてもらいたいですね。
かわもト さっき僕は「映画館で映画を観るのが好き」と言ったんですけど、それって音楽も似たようなところがあるんです。何が言いたいかと言うと、もちろんCDで聴いてもらいたい気持ちもあるんですけど、本当に「サイケデリックシネマ」を楽しむならライブに来たほうがいい、来てもらいたいということです。
パティ 僕ら、本当にライブだとキャラクターが変わるというか、メチャクチャ暴れるライブをするので(笑)。興味を持ったらぜひライブ会場に足を運んでもらいたいです。
──The Taupeがバンドとして目指していることはなんですか?
おのてら The Taupeがどういう音楽をやってるか、ひと言では説明できないんですよ。よく「オルタナティブロックだ」って言われるんだけど、一般的にオルタナティブロックと呼ばれるバンドとはずいぶん違う気がするし、自分たち的にもしっくりきてないんですよね。
パティ 確かにThe Taupeの音楽はジャンルで説明できないかもしれない。
しょーへい先生 自分たちがやりたいことって誰かの模倣じゃないんですよ。だから「〇〇っぽい」とかもあまり言えないし。だから僕らが大きくなって、ほかのバンドが「The Taupeっぽい」と呼ばれるような存在になるのが目標かもしれないですね。
かわもト それと先月レーベルの先輩であるぜんぶ君のせいだ。さんのワンマンライブをZepp Tokyoに観に行って、やっぱり大きいハコでライブをしたいと思いましたね。早く追い付きたいです。
- The Taupe「サイケデリックシネマ」
- 2019年2月20日発売 / コドモメンタルINC.
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[CD] 2000円
CMI-0051
- 収録曲
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- ピグロンX
- ヴァンパイアウォーク
- FICTION
- HADO-KEN
- テンプテーションNO.5
- 鬼ヶ島
- テー・ヤングの賛歌
- パパラッチパパ
- メタルバーガー
- ビバリーヒルズシネマ倶楽部
ツアー情報
- The Taupe「サイケデリックXツアー」
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- 2019年4月7日(日)東京都 下北沢Daisy Bar
- 2019年4月14日(日)大阪府 新神楽
- 2019年4月29日(月・祝)千葉県 千葉LOOK
- 2019年5月5日(日・祝)東京都 新宿Motion
- 2019年5月11日(土)愛知県 CLUB Zion
- 2019年5月12日(日)京都府 GROWLY
- 2019年5月25日(土)東京都 Shibuya Milkyway
- The Taupe(トープ)
- かわもトゆうき(Vo, G)、おのてらえみ(B, Vo)、ニール・パティ パティ パティ(G)、しょーへい先生(Dr)の4人からなるロックバンド。2014年1月に結成し、2015年4月に初のCD作品となる1stミニアルバム「バンッではありません」をリリースした。2016年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL'16」にROOKIE A GO-GO枠で初出演を果たす。2018年10月よりコドモメンタルINC.に所属し、11月にミニアルバム「NEO TOKYO帝国」をリリース。2019年2月には2ndフルアルバム「サイケデリックシネマ」を発表する。