ナタリー PowerPush - The Mirraz

武器を磨いて真面目に作った メジャー1stアルバムの裏側

桑田さんに伝わったのがうれしかった

──そういえば、桑田(佳祐)さんが選んだ2012年の名曲ベスト20に「気持ち悪りぃ」が入っていましたね。

畠山承平(Vo, G)

すげえうれしいですよね。バンドがどうこうの前に桑田さんが「気持ち悪りぃ」っていう曲を選んでくれたことがうれしい。あの曲を「僕らは」との両A面でメジャー一発目に出したいって言ったのは俺なんですけど。当初は「僕らは」だけでいこうという話だったんです。でも俺はどうしても「気持ち悪りぃ」もA面にしたくて。それはなんでかっていうと、メジャーのフィールドで「気持ち悪りぃ」って繰り返し歌うことの面白さを押し出したかったからで。そういうキャッチーさを主張できるのがThe Mirrazだと思ったから。大好きな桑田さんにその面白さが伝わっていたことが一番うれしかった。面白い音楽を作り続けてる人だからこそ伝わったのかなと思うし。

──いびつだけど癖になるキャッチーさの極意を知り尽くしている人だしね。「マンピーのG★SPOT」なんていうタイトルの曲を売ったんだから。尋常じゃないよね。

ね。さっきもバンドでその話をしていたんですよ。「『マンピーのG★SPOT』ってどういうことなんだろうね?」みたいな(笑)。売れてるからあんなタイトルの曲を出せたんだろうけど、そもそも出そうとすることがすごいですよね。そういう境地にたどり着けるのがすごい。でも、なんかのインタビューで読んだんですけど、桑田さんの仮歌ってだいたいそういう歌詞らしいですね。

──もとからそういう人があそこまで国民的な存在になっているのが最高だし、勇気付けられるでしょう?

そうっすね。俺が小学生のときに初めて買ったCDがサザンだったんで。インディーズの頃は焦って早く大きなセールスを上げなきゃって思っていたんですけど、今は変な焦りはなくて。桑田さんのこともそうですけど、届いてる人には届いている実感があるから。これからも一歩ずつ結果を出していければなって。そういう意味でも、今回のアルバムって音楽に対して真面目に向き合った作品なんですよ。今思うとThe Mirrazにしては真面目すぎるアルバムなのかなとも思う。

──ああ、バンドのキャラクター性を考えると?

そう。でも、この真面目さって人に届くものだと思うんですよ。ちょっと重いと感じる人はいるかもしれないけど。その点で、さっき言ったエンタテインメント性をもっと高くしたいんですよね。今回はメジャー1stアルバムなんで、The Mirrazというバンドを知ってもらいたいという気持ちが強かったし、こういうバランスになったのは必然かなと思う。

──バンドのどういう部分を伝えたいと思ったかですよね。今作は音楽的にも、メッセージ的にも真面目というか真摯だと思う。あらゆることを投げっぱなしにしていないというか。

そうそう。もともと誤解されやすいバンドなので。ちょっとラフすぎたり、ブラックユーモアが強かったりすると、すぐふざけてるとか、怖い人たちだって言われるので。そういう誤解をされないようにしっかり音楽を届けたいなという気持ちがすごくあった。あとは、サウンド面でも今回は今までにないやり方をけっこうしていて。真彦(佐藤真彦 / G)がギターで高い音を出したり、エフェクターの使い方を変えたり、あとはダブステップにちょっと影響を受けていたり。The Mirrazらしいリフだけど、今までとちょっと違う部分を感じられる要素がいっぱいあると思う。

──意識的に自分たちの武器を進化させた。

そうっすね。メジャー1stでいいアルバムを作ってやろうってメンバーみんな張り切ってました。

エゴを投げっ放しじゃ届かない

──歌詞もこれまで通りシニカルに現実を見ているんだけど、最終的にはタフに生きる姿勢が前に出ている。

うん。やっぱりリスナーの心にちゃんと届くようにしたいなって。本来はロックバンドってギターリフひとつで全部を理解してほしいっていうわがままな存在じゃないですか。俺もバンドをやってる側のエゴとしては、今でもそういう感覚はある。でも、そのエゴを投げっ放しなままで曲が届くかっていったらそんなことないと思った。今まではわりと自分の中で歌詞と曲は別もので、切り離してもいいものだったんですけど。とにかく音に言いたい言葉を乗っけるだけという発想で。でも、今回は曲のイメージをすごく大事にしたから、歌詞の言葉の選び方も神経質になったんです。アルバムタイトルみたいな感じで、俺が言葉を選ぶというよりは、曲が歌詞を選んで完成に近付いていく感覚というか。ちょっと抽象的な話ですけど。

──そのあたりもうちょっと詳しく聞きたいです。

なんて言うのかな……初めて曲に忠実に歌詞を乗せてあげたいと思ったんですよね。その曲が持っている正しい形にしてあげたいなって。僕のエゴがどうこうではなく、歌詞の言葉選びひとつ取っても、曲が本来あるべき形にしてあげたかった。俺、「ジョジョの奇妙な冒険」というマンガが好きなんですけど、あれの第5章の最後に彫刻家の話があって。その彫刻家は石を彫って像を作るんですけど、石には彫られるべき形が最初からあると。つまり、彫刻家は自分で何かを作りたくて石を彫るのではなく、彫るべき形は最初から決まっているんだと。石が本来あるべき姿にしてあげるのが彫刻家の仕事なんだ、みたいなセリフがあるんですよ。今回曲を作っていて、その感覚にすごく近いなあって思ったんです。

──ひとつの創作論として。

だし、例えば人が生まれて、生きていくこともそういうことなのかなって。誰だって生まれるときに親を選べないじゃないですか。でも、自分から選んでここに来たと思えれば、そういう気持ちで生きていければ、見えてくるものも変わってくると思うんですよ。そういう思いもあって、このアルバムタイトルにしたんですけど。あとは、自分たちで選んでメジャーに来たんだという意味も込めているし。

ニューアルバム「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」 / 2013年2月13日発売 / EMI Music Japan
「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」
「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / TOCT-29108
「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」通常盤[CD] 2800円 / TOCT-29109
「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」初回限定盤スペシャルBOX [CD+DVD+グッズ] 5555円 / TOCT-29107
CD収録曲
  1. 気持ち悪りぃ
  2. スーパーフレア
  3. encode
  4. 僕らは
  5. HELL'S DRIVE
  6. うるせー
  7. クッキー
  8. De La Warr
  9. ウ□ボ□ス
  10. 傷名
  11. S.T.A.Y.
  12. きっと、きっとね
  13. Fuck you very much
初回限定盤DVD収録内容
MUSIC VIDEO
  • 僕らは
  • 気持ち悪りぃ
  • 傷名
  • うるせー
  • スーパーフレア
  • S.T.A.Y.
LIVE at 代官山UNIT 20120716(niconico)
  • CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
  • シスター
  • 僕はスーパーマン
  • check it out! check it out! check it out! check it out!
  • Make Some Noizeeeeeeeeeeee!!!!
  • ハッピーアイスクリーム
  • ラストナンバー ・KINOI TV 特別編~ミイラズどうなんでしょう~(Tour Document)
初回限定スペシャルボックスセット グッズ内容
  • キノイ君人形
  • ミイラのキノイ君・絵本シリーズ#02「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」
  • 畠山監督MVバッジ3個セット
  • 「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」イメージ原画ステッカー
The Mirraz(みいらず)

畠山承平(Vo, G)、佐藤真彦(G)、中島ケイゾー(B)、関口塁(Dr)からなるロックバンド。2006年9月に畠山が中心となって結成。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」とリリースを重ね、UKロックの影響を感じさせるサウンドや攻撃的なパフォーマンスで注目を集める。2011年、自主レーベル「KINOI RECORDS」の立ち上げと同時に、中島と佐藤が正式加入し現在の4人編成に。2012年7月にEMI Music Japanへの移籍を発表し、10月にメジャー第1弾シングル「僕らは / 気持ち悪りぃ」をリリース。2013年2月にメジャー1stアルバム「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」を発表した。