ナタリー PowerPush - THE GROOVERS
祝・デビュー20周年! ベスト盤に刻んだバンドの“現在地”
バンドよりイカしたことはこの世にない
──一彦さんが音楽を仕事にしようと思ったのはいつ頃ですか?
高校生くらいですかね。80年代に活躍されていた諸先輩方の日本語ロックバンドの盛り上がりってあったじゃないですか? その先輩方がよいお手本になったというか、こういうふうに日本語でやればいいんだなと。それで単なるリスナーのままではいられなくなりました。あ、RCサクセションの「よォーこそ」のインパクトは大きかったかな。メンバー紹介の歌詞がいいんだよね。もうバンドしかないと思いました。当時インターネットも携帯電話も何もないし、友達集めてバンドをやることよりイカしたことはこの世にないと思っていましたよ。
──THE GROOVERSに影響を受けた若いバンドもたくさんいます。BUMP OF CHICKENやGO!GO!7188もその影響を公言していますが、どんな感覚を持っていますか?
バンプが大ブレイクする前に、2000年だったかな、初めてイベントで告白されました(笑)。大阪城音楽堂の「SWEET LOVE SHOWER」っていうイベントで、ニューカマー中心の出演者の中でなぜかTHE GROOVERSを呼んでもらったことがあったんです。バンプの藤原(基央)くんがイベントのオファーがあったときに「THE GROOVERSが出るなら出てもいい」と言ってくれたらしくて。それで初めて対バンしたんですよ。当時出ていたベスト盤にサインしました。干支がひと回り違うことがわかって、当時は相当ショックを受けましたね(笑)。
──そういえば年の差ひと回りどころではない現役女子高生シンガーソングライターの新山詩織さんもTHE GROOVERSのファンということで、デビューシングルでTHE GROOVERSの「現在地」を一緒にカバーしていますよね。
あまりの年の差なので、レコーディングでも何を話したらいいかなという感じでした(笑)。でも音楽が好きで僕らのことを知ってくれているのですぐ打ち解けましたけどね。
皆が求めているTHE GROOVERS像を意識した
──今回のベスト盤の選曲で意図したことは?
1999年にもベスト盤は出させてもらっていて、幸せなことに2回目のベストアルバムになるので、以前よりも皆さんが求めているTHE GROOVERS像を意識したかもしれないです。新たに出会ってくれる若いリスナーもいる中で、ぶっちゃけ前のベスト盤はもう手に入りづらくなっているので、いい入門編になるものを作りたかったですね。
──ベスト盤というもの自体への思い入れもありますか?
THE JAMの「SNAP!」とか好きでしたね。THE BEATLESの赤盤・青盤はまた別格で。世の中がCDになってからは、俺はたくさん曲が入っているのが好きでした。THE ROLLING STONESなんかはベストアルバムより、むしろオリジナルアルバムを全部揃えて自分のマイベストを作るのが楽しかった(笑)。
──改めて過去の音源を聴いてみてどうでしたか?
恥ずかしい歌詞が大量にありますがバンドサウンドはよかった。ただ今は音圧がかなり上がってシャリシャリなのが当たり前になっているから、当時の録音だとやっぱり曇って聞こえますね。そのへんは今の技術でクリアにしてみました。そうすると曲によってはスネアがかなりデカくなってびっくりしたり。まああんまり成長してないなって思いましたよ(笑)。声は今のほうが太いですけど。
まとめじゃなく続きがある感じに
──今回のベストアルバムは曲順も興味深いです。1曲目を「現在地」にしたのは?
この曲は厳密に言うとシングル曲ではないんですけど、当時はリードトラックとしてビデオクリップも作ってましたから。新山詩織ちゃんもカバーしてくれた曲だしね。自分たちはあまり意識していないんだけど皆さんは代表曲だと思ってくれているところがあるので、今回はあまりひねらずに1曲目にもってきました。
──どの曲をシングルとしてリリースするかについては、当時どう考えていましたか?
最初の頃は本当に好きなようにしかやってなかったんだけど、「ウェイティング・マン」(1994年6月リリース)あたりからはもうシングル曲みたいなものを意識して作ったかもしれないですね。
──新曲「存在理由」が収録されているのもファンとしてはうれしいところです。
まとめのベストアルバムじゃなくて、まだ全然続きがある感じにしたかったんで。これを聴いたあとは、ぜひ気に入った曲が入ったオリジナルアルバムを掘り下げてほしいですね。そのためには過去作が廃盤じゃしょうがないから、今回再発していただいてありがたかったです。
──あとライブにも足を運んでもらいたいですよね。
そうですね。ぜひよろしくお願いします。とにかく長く聴いてくれている人と、新しくTHE GROOVERSを見つけてくれた人両方に感謝したいなと思います。このベストアルバムで20周年を一緒に祝ってほしいです。昔はアニバーサリーとか照れもあったからそんなに興味なかったんだけど、20周年だし同じメンバーでこんなにも長く続けているっていうのは、ちょっと自慢してもいいかなって(笑)。
- ベストアルバム「Nothin' But The Best」 [SHM-CD2枚組] / 2013年5月29日発売 / 3200円 / ユニバーサルミュージック / UPCY-6692~3
- ベストアルバム「Nothin' But The Best」
DISC1 収録曲
- 現在地(アルバム「Top Of The Parade」)
- 行列の先頭(アルバム「Top Of The Parade」)
- 鉄の旗(アルバム「Top Of The Parade」)
- 12月だけのクリスチャン(シングル「12月だけのクリスチャン」)
- ウェイティング・マン(アルバム「MONOCHROME CHAMELEON」)
- 魔法のサムシング(アルバム「MONOCHROME CHAMELEON」)
- モノクローム・カメレオン(アルバム「MONOCHROME CHAMELEON」)
- めずらしく冴えている(アルバム「Rosetta Stone」)
- 俺はスピード上げるだけ(アルバム「Rosetta Stone」)
- RIDE ON, BABE!(アルバム「Rosetta Stone」)
- SWEETHEART OF MY SOUL(シングル「SWEETHEART OF MY SOUL」)
- 欠けた月が出ていた(アルバム「ELECTRIC WHISPER」)
- The Longest Night(アルバム「ELECTRIC WHISPER」)
- プリテンダー(アルバム「ELECTRIC WHISPER」)
- 無敵の日々(アルバム「CHARGED!」)
- ウィリー(アルバム「CHARGED!」)
- ONE FOR THE ROAD(アルバム「CHARGED!」)
DISC2 収録曲
- 春だったね ’97(シングル「春だったね '97」)
- 狂おしきこの世界(アルバム「TRINITY」)
- 放浪の運命(アルバム「TRINITY」)
- GOOD NIGHT, SLEEP TIGHT(アルバム「TRINITY」)
- Groovaholic(アルバム「SETZNA」)
- 車輪の上(アルバム「SETZNA」)
- ミスター・デザイア(アルバム「SETZNA」)
- 情炎(アルバム「SETZNA」)
- 乱気流ガール(アルバム「Modern Boogie Syndicate」)
- 最後の煙草に火を点ける (アルバム「Modern Boogie Syndicate」)
- ロザリー(アルバム「Modern Boogie Syndicate」)
- 奇跡のバラッド(アルバム「Modern Boogie Syndicate」)
- Savanna(アルバム「ROUTE 09」)
- 独断(アルバム「ROUTE 09」)
- SPEED QUEEN(アルバム「ROUTE 09」)
- 美しき人よ(アルバム「ROUTE 09」)
- 存在理由(新曲)
THE GROOVERS(ぐるーばーず)
1988年に4人編成で結成。1989年のデビュー後に3枚のアルバムをリリースするが、初代ボーカリストの西村茂樹が脱退。その後ギタリストだった藤井一彦がボーカルを兼任し、トリオ編成で活動を継続する。横ノリのロックンロールをベースに、藤井一彦、高橋ボブ(B)、藤井ヤスチカ(Dr)という3人の強烈な個性がぶつかり合うサウンドが魅力。2000年にはメジャーレーベルを離れ、自主制作を中心とした活動をスタートさせる。またメンバーはそれぞれバンド活動と並行して、さまざまなアーティストのサポートなども精力的に行なっている。