甲本ヒロト×カネコアヤノ|バンドはきっとやめられない (2/2)

僕の手で戦争を止めるのは無理だから

甲本 僕は足元ばっかり見て歩いてるんですよ。ホントはもっと遠くを見たほうがいいんだろうけど、どっかにいる誰かじゃなくて、目の前のものばっかり気になる。今この部屋にいる人だったり。手の届くところにさ。例えば、これはロックミュージシャンの発言としてどうなのかわからないけど「世界平和って言う前に友達と仲よくすれば?」と思っちゃう。

カネコ わかります。みんなに優しくするよりも、まずここにいる人に温もりとか優しさを与えられないと意味ないなと思います。

甲本 もちろん戦争は反対だけど「ケンカ反対!」から始めたほうがいいなあと思う。

カネコ そこから最終的に戦争反対につながりますよね。

甲本 人間ができることってそんなにすごくねえと僕は思っちゃってて。僕の手で戦争を止めるのは無理だから、まずケンカをしないようにしよう。それが精一杯だろうという気がする。

左からカネコアヤノ、甲本ヒロト。
左からカネコアヤノ、甲本ヒロト。

ボーカルになってよかった

甲本 レコードは聴く?

カネコ いいなと思ったものは買って聴いてますね。

甲本 家にアナログのシステムはあるの?

カネコ 簡易に聴けるものはあるんですけど、今はちゃんとしたオーディオがなくて。いつかちゃんと整えて、いい音で聴けるようになりたいです。

甲本 簡易でもいいんだよ。でも、もしも聴きたいレコードがあって、これからオーディオをそろえるのであれば、そのレコードがいつ出されたものかを見るといい。例えば、僕が最初に影響を受けたのって、The BeatlesやThe Rolling Stonesといった60年代のイギリスのビートグループだったんだけど、僕が聴いたのはリリースから10年以上経ってからだった。それで何を思ったかと言うと「この人たちは何を聴いていたんだろう? 何がこの人たちにこれをさせたんだろう? 何に取っ捕まって、こんなことをやらされてるんだ?」って。

カネコ うんうん、「何でこんなことになってしまったんだ!」って思いますね。

甲本 ロックンロールって“やらされる”んだ。「バンドをやめられない」っておっしゃったけど、それとおんなじこと。ドッカーン!と来た波紋に動かされる。「お前これな」って決められちゃうんですよ。ロックンロールに。だから僕がロックを聴いて衝撃を受けたとき「こいつら何に“決められた”んだろう?」と気になり出して。そいつらが聴いていた音を聴きたくなって、探したのが60年代のイギリスの家庭にあったオーディオセット。当時のイギリスの工場でプレスされたオリジナル盤をそこにかけることによって、そいつらが聴いていた音が聴けるんだ。

カネコ 確かにそうですね! 漠然と“いいオーディオ”って考えてたけど、それは全然思いつかなかった。

甲本 オーディオマニアの人の意見はまた別だろうけどね。僕はオーディオマニアではなくて音楽が好きなんです。

左からカネコアヤノ、甲本ヒロト。

カネコ レコーディングって、そこに流れている時間とか空気の記録だと思ってるんですけど、確かにレコードのほうがそれがすごく伝わるというか。CDとかサブスクで聴くよりも、レコードは空気が流れてくるような気がします。

甲本 その通り。CDで聴くのも全然問題ないと思うんだけど、それはやっぱりヘッドフォンで聴く音楽、耳で聴く音楽のような気がするんです。音楽は耳で聴くものというのは偏見で、音楽は体で聴くのが理想だと思う。心に伝わるものだから。

カネコ だからライブって重要なんですよね。それこそ耳だけじゃなくて、ライブハウスの揺れてる空気が一番直にバーン!と体に伝わる。そして、それをステージ上にいる私たちが一番味わえると思います。

甲本 ボーカルは特等席だよね。僕、バンドをやるまではボーカルになりたいと思ったことはなかったんだ。ホントは楽器をやりたかった。

カネコ そうなんですか!

甲本 僕がバンドを始めたのは高校を卒業する頃で、ボーカル以外空いてなかったんだよ。どっかのバンドのボーカルが抜けたから入っただけ。でも、なってよかった(笑)。

カネコ フフフ。やっぱりデカい音でギターを鳴らしたり、デカい音でドラムを叩いたりすることの快楽ってホントに代え難いことだし、それをステージの上で楽しめるって最高だなって。「ライブが一番震えるわ」って思います。

大事なのは「俺のいいね」だけ

甲本 もうキャリアとしては十分なものがあるから、僕が言えるようなことはあなたは全部知っていると思うけど、ただ1つ言えるのは、そういうライブの楽しさは何十年経ってもずっとそのまんまだよってこと。それは言える。

カネコ 変わらないですか。

甲本 そうですよ。もしも飽きたら飽きればいい。バンドをやめたからって誰も困らないから(笑)。やりたいだけやってやめればいい。だけどたぶん変わらないし、やめられないよ。

カネコ お客さんが楽しんでくれてたらいいなと思ってライブをやってるんですけど、その前にある感情として、自分が楽しいということがあるし、それがある限りはホントにずっと続けたいです。

左から甲本ヒロト、カネコアヤノ。

甲本 その通りです。そうやってライブの楽しさを知ったら、他人の「いいね」が欲しくなくなるんだよ。どうでもいい。「いいね」なんか1つももらえなくていいんです。「俺のいいね」がドーン!とあるから。

カネコ 確かに。

甲本 「俺のハンバーグ」とかいろいろある、あのシリーズだよ(笑)。「俺のいいね」ですよ、大事なのは。非常に傲慢なこと言ってますけど、それでいいと思います。僕は料理によく例えるんだけど「俺はそんなに好きじゃないけど、お客さんが欲しがるから、この味付けにしました」「全然うまいと思ってないんだけどお客さんが言うからどうぞ」っていう食いもんどう?

カネコ イヤですよね。自分が「うまい!」って思ったものを出してほしい。

甲本 そう、「めっちゃうめえから食ってみろ!」って。それでお客さんが「うまくねえ!」と言ったら「じゃあ食わなくていい!」。

カネコ 「俺は一生食うよ!」って(笑)。

甲本 「俺の」シリーズで最近すげえなと思ったのは「まいばすけっと」(※イオングループのスーパー)。みんな気付いてないと思うけど、あれも「俺のカゴ」なんだよ(笑)。「俺の」ってネーミングには傲慢さも含まれてるけど「自信があるんだな、じゃあ行ってみよう」とみんなが思うような効果はある。だから日和らないで「俺の」だったり「私の」だったりを強く持つことって結果的に得すると思う。

カネコ ホントにそうですね。全部自己満でやらないといけない。

甲本 そうだよ。自己満足以外の満足はないから。あなたはもう全部知っている。「自己満足も大事」なんじゃなくて「自己満足だけでいい」。傲慢です。僕はこういうふうに傲慢でやってきて、生活できてるから、それでいいんだって証明してます(笑)。そして、ある日気付くんだよ。僕は自分勝手にやってきたけど、お客さんたちはみんなそれを求めていたんだと。そしたら、それが本当の後押しになってくれて、そのときに「お客さんありがとう」と思える。

カネコ やります、傲慢で。今決めました。

左から甲本ヒロト、カネコアヤノ。

ザ・クロマニヨンズ ライブ情報

ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024

  • 2024年2月16日(金)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
  • 2024年2月19日(月)奈良県 EVANS CASTLE HALL
  • 2024年2月20日(火)大阪府 BIGCAT
  • 2024年2月22日(木)兵庫県 Harbor Studio
  • 2024年2月23日(金・祝)兵庫県 Harbor Studio
  • 2024年2月25日(日)香川県 高松festhalle
  • 2024年2月29日(木)東京都 Spotify O-EAST
  • 2024年3月2日(土)岐阜県 岐阜club-G
  • 2024年3月3日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2024年3月7日(木)山口県 周南RISING HALL
  • 2024年3月9日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2024年3月10日(日)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2024年3月12日(火)広島県 LIVE VANQUISH
  • 2024年3月16日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2024年3月20日(水・祝)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2024年3月21日(木)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2024年3月25日(月)神奈川県 CLUB CITTA’
  • 2024年3月27日(水)山梨県 甲府Conviction
  • 2024年3月30日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2024年3月31日(日)青森県 青森Quarter
  • 2024年4月6日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年4月7日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年4月10日(水)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2024年4月13日(土)茨城県 大昭ホール龍ケ崎(龍ケ崎市文化会館)
  • 2024年4月14日(日)栃木県 栃木県教育会館
  • 2024年4月20日(土)神奈川県 伊勢原市民文化会館
  • 2024年4月21日(日)千葉県 市川市文化会館
  • 2024年4月26日(金)大阪府 フェスティバルホール
  • 2024年4月28日(日)愛媛県 しこちゅ~ホール(四国中央市市民文化ホール)
  • 2024年4月29日(月・祝)岡山県 岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場
  • 2024年5月3日(金・祝)埼玉県 和光市民文化センター サンアゼリア 大ホール
  • 2024年5月5日(日・祝)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
  • 2024年5月11日(土)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2024年5月12日(日)福井県 敦賀市民文化センター
  • 2024年5月18日(土)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
  • 2024年5月25日(土)京都府 KBSホール
  • 2024年5月26日(日)和歌山県 和歌山城ホール
  • 2024年6月1日(土)熊本県 玉名市民会館
  • 2024年6月2日(日)大分県 日田市民文化会館 パトリア日田 大ホール
  • 2024年6月4日(火)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
  • 2024年6月8日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
  • 2024年6月9日(日)福島県 けんしん郡山文化センター 中ホール
  • 2024年6月15日(土)北海道 名寄市民文化センター EN-RAYホール

カネコアヤノ ライブ情報

カネコアヤノ Livehouse Tour 2024

  • 2024年5月7日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2024年5月10日(金)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2024年5月22日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年5月24日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2024年5月28日(火)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2024年6月1日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2024年6月4日(火)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 2024年6月5日(水)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 2024年6月21日(金)香川県 高松オリーブホール
  • 2024年6月22日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年6月27日(木)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2024年6月28日(金)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2024年7月7日(日)沖縄県 ミュージックタウン音市場

プロフィール

ザ・クロマニヨンズ

1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)に、小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人組ロックバンド。2006年7月の“出現”以来、毎年コンスタントにリリースを重ねており、2024年2月に17枚目のアルバム「HEY! WONDER」をリリースした。ライブ活動も精力的に続けており、2月から6月にかけて全43公演のライブツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024」を開催する。

カネコアヤノ

弾き語りとバンド形態でライブ活動を展開するシンガーソングライター。2018年のアルバム「祝祭」、2019年のアルバム「燦々」で高い評価を集めたのち、アルバム「よすが」を発表した2021年には初の東京・日本武道館公演を開催した。2023年1月にニューアルバム「タオルケットは穏やかな」をリリース。2024年5月からバンドツアー「カネコアヤノ Livehouse Tour 2024」を開催する。