TENSONG & PAMインタビュー|新人TENSONGと手練のPAM、刺激を受け合い完成したコラボナンバー (2/2)

これまでのTENSONGとは異なる応援歌

──このサウンドに対し、たか坊さんは、どういうテーマで歌詞を書こうと考えましたか?

たか坊 社会やルールに縛られた中で、人はさまざまな思いを抱えていると思うんですけど、その中でも一生懸命がんばっている人たちに向けた応援歌にしたいと思って作詞しました。歌詞を提出するたびにWEST GROUNDさんからダメ出しをもらって、3回くらい書き直したのかな。最終的にはWEST GROUNDさんと合流して、夕方の5時くらいから朝の6時までかけて完成させました。その結果、歌詞にもメロディにも自分の熱量をしっかり注ぎ込めたと思います。

たか坊(Vo / TENSONG)

たか坊(Vo / TENSONG)

──TENSONGには今までも聴き手の背中を押すような応援歌的な歌詞が多々あったかと思いますが、テイストが以前とはちょっと異なっていて。だいぶ強い言葉が並んでいますよね。

たか坊 そうですね。タイトルにある“Insider”はアウトサイダー(Outsider)の対義語で。会社やいろんな組織の中で歯を食いしばってコツコツと日々の業務、練習、努力を積み重ねて成り上がっていく人たちに対する応援歌として、そういう人たちに1つでも届くメッセージがあればいいなと思ったんです。そういう意味では、普段の日常生活や恋愛において背中を押す歌詞とは違った強さがあるのかもしれませんね。

──なるほど。

たか坊 そういう自分の気持ちをWEST GROUNDさんが音楽的にディレクションしてくれたことで、歌う際にもかなり強い表現ができたのかなと思います。実際、歌い方もだいぶ変えていて。ここまでシャウトするような楽曲って今までほとんどなかったし、常に前へ前へと攻めながら歌うので、ちょっと喉が強くなったのかなっていう感覚もあります。

──2月から6月にかけて実施された全国ツアー(「TENSONG 1stワンマンツアー『普通なんていらないよ』2024」)のファイナル(6月29日のVeats Shibuya公演)を拝見しましたが、たか坊さんの歌の存在感がどんどん増していることを実感できて。その流れから今回の「THE INSIDER」を聴くと、ツアーで自信を得られたんだなと合点がいきました。

たか坊 ありがとうございます。僕自身はまだ合点いってないところが多いんですけど(笑)、外からそう見えているのは素直にうれしいです。

上段左からアルフィ(DJ / TENSONG)、たか坊(Vo / TENSONG)、拓まん(G / TENSONG)、下段左から久米優佑(G / PAM)、高橋宏貴(Dr / PAM)。
上段左からアルフィ(DJ / TENSONG)、たか坊(Vo / TENSONG)、拓まん(G / TENSONG)、下段左から久米優佑(G / PAM)、高橋宏貴(Dr / PAM)。

MV撮影を通して強まった「これは5人の曲」という意識

──PAMのお二人の力を借りて、TENSONGの新たな一面を切り開くことができましたね。

拓まん 本当にその通りだと思います。この曲が加わることで、ライブの流れや雰囲気もだいぶ変わると思いますし。僕たちのライブって、しっとり聴かせるか思い切りアゲるか、0か100かみたいな形じゃないですか。そこに「THE INSIDER」みたいなカッコよく魅せる曲が加わるわけですから。

たか坊 自分たちのパフォーマンスも変わってくるんじゃないかな。それは今回のミュージックビデオでも垣間見れると思うんです。そもそも自分たちがMVに出演して演奏するというのも初めてだったので、1人ひとりが動きをかなり意識して臨みましたし。撮影前日もいろんなバンドのMVやライブ映像を観て研究していたので、そういう意識が実際のパフォーマンスに表れていると思います。

高橋 レコーディングはバラバラだったので、MVで5人一緒にパフォーマンスできたのはすごくよかったなと思っていて。撮影を通してTENSONGの3人ともより親密になれた気がします。空き時間も楽しかったですし。

久米 やっぱりMVを撮ったことで「これは5人の曲」という意識がより強まりましたよね。ただ、俺は暴れすぎて3日ぐらい筋肉痛でしたけど(笑)。

拓まん 僕もしばらく首が痛くかった(笑)。何より、久米さんと一緒にツインギター編成で演奏できたことは、今でも信じられないですよ。自分以外にもギタリストがもう1人いるという安心感が本当に大きくて、「ここでミスっても久米さんがいるからな」っていう。

たか坊 「だったら思いっ切りやろう!」みたいな(笑)。

拓まん だから、逆に全力でできたところがあります。

アルフィ 僕は今までたか坊と拓まんの後ろで1人だったんですけど、今回は隣に高橋さんがいたのが新鮮で。あと、「ドラムってあんなに激しく叩くんだ」とか「久米さん、あんなに激しく動くんだ」とかいろいろびっくりもしました。

たか坊 久米さん、暴れすぎて途中でコケてましたよね。

久米 思いっ切り滑って「ああ、終わった……」と思ったんですけど、結果的に使わないシーンだったのでよかったです(笑)。

久米優佑(G / PAM)

久米優佑(G / PAM)

たか坊 お二人のアクションに感化されて、僕ら3人の動きもどんどん大きくなっていったところもあるので、すごく満足のいく仕上がりになりました。

──MVにはムエタイ世界チャンピオンの吉成名高選手も出演しています。

たか坊 吉成さんとは「十人十色プロジェクト」という企画で対談していたんですが、そこで得たものも少なからず「THE INSIDER」には反映されていると思っていて。吉成さんもリングの中で一生懸命、死ぬ気で戦っている人なので、MVの中でフォーカスさせていただきたいと思ってお声がけしました。演奏シーンの前に吉成さんの出演シーンを撮影したんですけど、めちゃくちゃカッコよくて。応援というよりは「戦うぞ!」みたいな鼓舞するものが表出していて、撮影中もずっとモニタに釘付けでした。

左からアルフィ(DJ / TENSONG)、拓まん(G / TENSONG)、たか坊(Vo / TENSONG)、久米優佑(G / PAM)、高橋宏貴(Dr / PAM)。
左からアルフィ(DJ / TENSONG)、拓まん(G / TENSONG)、たか坊(Vo / TENSONG)、久米優佑(G / PAM)、高橋宏貴(Dr / PAM)。

この短期間でだいぶ意識が変わりました

──レコーディング、MV撮影を終えた今、お互いに対する印象に変化はありましたか?

高橋 俺はほぼ白紙の状態で彼らと出会いましたが、「本当にいいやつらだな」とより好感度が上がりました。音楽の世界でもそうですけど、どこにいても嫌なやつ、ムカつくやつっているじゃないですか。でも、3人は全然そんな人間じゃなかったし、本当にあの音楽のまんまのキャラクターだと思いました。

たか坊 いい人返しで申し訳ないですけど(笑)、高橋さんは7月の仙台でのフェスのときも予定していた入り時間よりも早めに来ていただいて、自分たちのライブを観てくださったんです。本当に筋の通ったカッコいい人だなって思いましたし、自分も将来こういう大人になりたいなと思う姿を見せていただいて本当に尊敬しかないです。で、そのあとに観たELLEGARDENのステージが言葉にならないくらいにすごくて。僕もですけど、きっと拓まんもアルフィも「もっと自分たちがやらなくちゃいけないことがたくさんあるんじゃないか?」と感じたと思いますし。僕は最初にお会いしたときに「絶対に音楽家として負けねえぐらいやります!」って高橋さんと約束していたんですけど、あの日は完全に高橋さんに負けたと思うので、今の口だけな自分を受け止めて悔い改めないといけないなと感じています。

久米 俺は人見知りなところがあって、初対面の相手に対しては緊張してしまいがちなんですけど、3人とはけっこう肩の力を抜いて接することができたので、彼らのまとう空気感が自分の人間性にも合っていたんでしょうね。あと、さっき「いろいろ刺激をもらった」と言っていたけど、3人の音楽に対するモチベーションは最初に僕らと会った頃と比べてどんどん高くなっているんじゃないかな。そんな姿を見て「俺ももっとがんばらないとな」と、逆に刺激をもらったところもありますし。

高橋 あと、俺は普段DJと話す機会がほとんどないので、「どんな感じなの? どんなことするの?」っていろいろ質問したりして、DJというポジションに対する理解を深められた。そういうところも刺激になりましたね。

高橋宏貴(Dr / PAM)

高橋宏貴(Dr / PAM)

久米 あ、そうだ。MV撮影の合間、楽屋で高橋さんが模型飛行機を飛ばして遊んでいたんですけど、すぐそばにいたアルフィが何事もないかのようにパソコンと向き合っていて。「ああ、気にしないでいられる関係性っていいな」って思いました。

高橋 あの集中力はすごいよ。

アルフィ いや、あのときはちょうど作業に夢中で……(笑)。

久米 飛行機に目もくれず作業できるメンタル、見習わなきゃなと思いました。

アルフィ でも、作業が終わったら僕も一緒に遊んでましたけどね(笑)。

──TENSONGにとってはPAMのような大先輩との共演から得られた経験が、次のステップへのヒントになるんじゃないでしょうか。

拓まん そうですね。この短期間で3人ともだいぶ意識が変わりましたし、「この先も音楽家としてやっていくのであれば、ちゃんと知識は身に付けておかないとダメだ」と思い、最近は音楽理論を基礎から勉強したいと話しているところで。実際、たか坊はすでにレッスンに通っているし、僕もこれから通う予定なんです。

アルフィ 音楽面もそうですし、人としての生き方の面でもすごく影響を受けたので、そういう部分でもどんどん成長していきたくて。実際、今回の経験を踏まえて3人でいろいろ話し合ったあとからは、それぞれいい方向に進めているんじゃないかなという気もしています。

高橋 俺は年齢的にも彼らよりいろんな経験を積んでいますけど、今でもいろいろ吸収したいしいろんなことを知りたいんですよね。ELLEGARDENのメンバーがまさに「俺らに足らないものって何なんだろう、あとは何をすればいいんだろう、どんな刺激が必要なんだろう……そうだ、アメリカに行っちゃおうぜ!」という発想の持ち主ばかりだし、PAMにしてもドラムとギターだけでバンドをやるという発想の2人がそろっているし。そういう刺激から得られる学びって延々と続いていくものだと思うし、そういう意味では今回のTENSONGとのコラボも今までになかった刺激なので、俺らにとってもこの経験ができたことは本当に大きかったと思います。

──レコーディング、MV撮影ときたら、今度はライブでの共演も観てみたいですよね。

高橋 この大変な曲を生でやるんですね(笑)。超練習しますよ。俺、練習大好きなので。

たか坊 僕も「練習大好き」って言えるようになりたいですね。

拓まん でも、せっかく共演するのに1曲だけじゃ物足りないですよね。

たか坊 まずはそこまでにTENSONGとして1人ひとりのレベルをさらに高めて、お二人と対等になったと思えたときに初めて「TENSONG & PAM」としてステージに立てたらなと思います。

左からアルフィ(DJ / TENSONG)、拓まん(G / TENSONG)、たか坊(Vo / TENSONG)、久米優佑(G / PAM)、高橋宏貴(Dr / PAM)。

プロフィール

TENSONG(テンソング)

たか坊(Vo)、拓まん(G)、アルフィ(DJ)の3人により2020年4月に結成。TikTokへのカバー曲の投稿を始め、同年9月には初のオリジナル楽曲「たいして綺麗でもない僕らの世界」を配信リリース。以降コンスタントにオリジナル楽曲を発表し、結成から2年でSNSでの総フォロワー数は100万人を超え、SNSの総再生回数は1億回再生を突破した。2023年には全国47都道府県を回る対バンツアー「~JUST FOR FUN 2023~」を完遂。同年8月に神奈川・KT Zepp Yokohamaで初のワンマンライブ「アーティストミマン」を行い、2024年1月に初のCD作品「普通なんていらないよ」をタワーレコード限定でリリースした。2月より全国11会場を回る初のワンマンツアー「TENSONG 1stワンマンツアー『普通なんていらないよ』2024」を開催。9月にELLEGARDENの高橋宏貴(Dr)とトリコンドルの久米優佑(G)からなる2人組インストバンド・PAMとのコラボレーションによる「TENSONG & PAM」名義でシングル「THE INSIDER」をリリースした。

PAM(パム)

ELLEGARDENの高橋宏貴(Dr)とトリコンドルの久米優佑(G)からなる2人組インストバンド。「キャッチーでテクニカルな楽曲」をコンセプトに、それぞれが所属するバンドとは異なるアプローチのサウンドを展開している。2019年9月に1stアルバム「How have you lived?」、2020年5月に2ndアルバム「Worth Trying」、2021年9月にミニアルバム「TWO SIDES OF THE SAME COIN」を発表。2024年9月、TENSONGとのコラボレーションによる「TENSONG & PAM」名義でシングル「THE INSIDER」をリリースした。