ナタリー PowerPush - _ _ _ _*
気鋭バンド×スタッフが語る バンドとライブハウスの関係
震災当日にライブをやれなかったことに葛藤があった
──ここ数年、名のあるライブハウスが次々と閉店していくのと同じくらい、新しいライブハウスがオープンしてます。CDが売れない、ライブの動員が厳しいと伝え聞く中、この状況をどう思いますか?
増えすぎですよ。今も減っちゃ増えて、減っちゃ増えてを繰り返してるし。なんで潰れるのかっていうと、「儲からないから辞めた!」ってオーナーが手放しちゃうんですよね。僕も働いてみてわかったんですけど、ライブハウスってどれだけがんばってもこれ以上は無理っていう売り上げのてっぺんが決まっているんですよ。しかも月ごとの変動も激しいから、安定した収入が見込めない。オーナーとしては、そんな不良物件ないですよね。
──確かに。
リスクが大きいわりに、大して売り上げが上がらない。だったら辞めちまえっていうのはあると思います。スタッフは安い給料で働いてたのに、急に首を切られますからかわいそうですね。
──そこに東日本大震災があって、多くのライブハウスはしばらく営業をストップしましたよね。そんな中、四谷OUTBREAKは震災直後から帰宅できない人に対してお店を開放したり、使用電力を最小限に抑えて営業を始めました。営業を再開するまでの間、葛藤はありませんでしたか?
ありましたね。まず、震災当日にライブをやれなかったことに葛藤がすごいあって。ちょっと考えればやれないのはわかるんですけど(笑)。で、うちは3月って学生イベントがすごく多いんですけど、それがことごとく中止になって、しばらくは営業したくてもできなかったんですよ。こんなに音が鳴らないライブハウスは初めてなので、めちゃくちゃ悶々としましたね。それでもやっぱり、店は開けたんですよ。機材を直したり、掃除をしたり、みんなに電話かけたりして過ごしたんですけど。
──営業を再開したのはいつ頃だったんですか?
震災から6日後ぐらいかな。うちのブッキングライブだったんですけど、その日はたくさんお客さんが来て、みんながすごくいい笑顔でガンガン飲んでるのを見て「これだな」と思ったんです。別のスケジュールが空いた日には知り合いのミュージシャンをたくさん呼んで、7時間ぶっ通しでアコースティックライブをやったらお客さんも100人ぐらい集まって。そこで吹っ切れましたね。一番面白かったのは、お酒がとにかく出るんですよ。こんな状況じゃライブハウスの運営も危ないってみんなわかってくれてるから、ものすごく飲んでくれて、お金を落としてくれて。その金の使い方にちょっと感動しました。売り上げで言えば、震災バブルって言ってもいいくらいでしたから。
──震災前の営業時よりも上がった?
うちの場合は上がりましたね。もう落ち着きましたけど、1カ月ぐらいはバーの売り上げがとにかく異常で、滅多に来ない人が「大丈夫だったか?」って顔出して、ガンガン飲んで帰っていくみたいな。そういう意味では、あのタイミングで店を開けて良かったなって思います。
ライブハウスがレーベルを持つ理由
──今回、_ _ _ _*のシングルは「OUTBREAK RECORDS」からのリリースですが、レーベル自体はかなり前から運営されてますよね。
店を始めて1年ぐらいしてからレーベルを始めたんですけど、それにはきっかけがあって。CD-Rじゃなくて工場でプレスされたCDを手売りしてるバンドをよくライブハウスで見かけるけど、「これ、タワレコとかで買えるの?」って訊くと9割方買えないんですよね。で、「実は売ってもらいたいんですけど、やり方もわからない」っていう話をいろんなバンドから聞いて、だったらうちがやってあげようと。うちは代行みたいなもんなんですよ。CDを売るプロではないので数がさばけるわけではないけど、アウトプットのひとつとして何かのきっかけになればいいんじゃないかなと思ってやってます。
──ぶっちゃけ、レーベル部門は儲かっているんですか?
赤字です(笑)。でも、本当はこういったアウトプットが、もっとたくさんのライブハウスにないとダメだと思いますよ。
──例えば新宿LOFTみたいな老舗ライブハウスもレーベルを運営してますが、そういったライブハウスからCDをリリースしていると、なんとなくそこを拠点に活動してるなってわかるし、バンド側もライブハウスと密接なつながりを持てると思うんです。実際、_ _ _ _*も四谷OUTBREAKの看板バンドみたいなイメージがありますし。
そうですね。_ _ _ _*は四谷OUTBREAK初期の頃から出まくっていて、看板バンドみたいになってくれたんですけど、3年経った頃から「四谷の看板バンドって言われないぐらい、外でやってこい」って言って送り出したんですよ。だから、最近うちでは年に1~2回ぐらいしかライブをやらない。複雑なところなんですけど、バンドを変に囲い込みたくないっていう気持ちもあって、もっと自由でいてほしいなって思うんです。
──特定のコミュニティの中だけで活動するのはダメだと。
はい。今でも相談は真っ先にしてくれるんで、そういう意味でのつながりさえあればどこでライブやってもいいんじゃないかな。もっと大きくなって四谷に帰っておいでと。基本的に放流システムのほうが、うちには合ってるなって思います。やっぱりね、「月イチで絶対うちでやれ」ってガッチリ囲い込むところもたくさんあるんですよ。僕はそういうのが大嫌いなんで。
──その_ _ _ _*のシングルを聴きましたけど、とてもいいと思います。
いいっスよね。このシングルはタワレコとdisk union限定で500枚売るんですけど、タワレコのスタッフさんがめっちゃくちゃ気に入ってくれて、かなり推してくれてるんですよ。試聴機に入れてくれたりポップを作ってくれたりするらしくて、よかったと一安心してるところです。そういう意味では今回、制作チームや流通の人など周りのスタッフさんにとても恵まれましたね。
──ここでシングルが出て、秋にアルバムも控えてます。これをきっかけに、何かが動きそうな予感がしますね。
しますね。今回僕らが目指してるのは「こんな時代だからこそCD屋でバカ売れ」。こんなときだからこそ、それ以外ないだろうと。だからこのシングルはライブ会場で売らずに、タワレコとdisk union限定にしたんです。
_ _ _ _*(テイヘン)&四谷OUTBREAK共催イベント
- 2011年8月21日(日)
東京都 四谷OUTBREAK
_ _ _ _*(テイヘン)レコ発ライブ
- 2011年10月1日(土)
東京都 四谷OUTBREAK
_ _ _ _*(テイヘン)ライブスケジュール
- 2011年8月20日(土)
栃木県 足利SOUTH BBC - 2011年8月24日(水)
東京都 新宿WILD SIDE TOKYO - 2011年8月25日(木)
東京都 新宿LUSH - 2011年8月28日(日)
群馬県 桐生VAROCK - 2011年9月10日(土)
大阪府 天王寺FIRE LOOP
_ _ _ _*(テイヘン)
candy(Vo)、ちんぱん(Dr)、マー君(B)、ジンプル(G)からなるロックバンド。2004年に前身バンドが結成され、都内を中心にライブ活動を行う。2006年にバンド名を現在の「_ _ _ _*」に改名。これを機に活動を活発化させ、CDや映像作品を自主制作にて発表する。candyが生み出す歌詞世界とボーカル、一筋縄ではいかないアグレッシブなサウンドが魅力。2011年から現体制となり、同年7月に初の全国流通シングル「お宅の娘さん、僕がいただきます」を500枚限定でリリースする。