竹内唯人|新たな一歩を踏み出す新作「After the rain」

竹内唯人がメジャー1stデジタルシングル「After the rain」を7月2日にリリースした。

2019年に音楽活動をスタートし、ハイペースで楽曲をリリースしてきた竹内は、今回のリリースタイミングからメジャーフィールドで勝負していくこととなった。その幕開けを飾るのが、作詞をYohei、作曲をUTAが手がけた「After the rain」。新たな一歩を踏み出す今のポジティブな思いを、繊細なボーカリゼーションで紡ぎ上げたミディアムナンバーだ。

音楽ナタリーでは、竹内にメジャーにかける意気込みやそれによって生まれた心境の変化、そして本作に込めた思いについて語ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 山口真由子

メジャーデビューは大きな意味を持つ出来事

──2019年10月にシングル「Only Me」でデビューして以降(参照:竹内唯人がアーティストデビュー、楽曲プロデュースはsooogood!)、1、2カ月ペースで新曲を配信リリースし続けてきた竹内さんが、いよいよメジャー進出することとなりました。

竹内唯人

「メジャーデビューです」と言われたときは普通にうれしかったです。時代的にそのあたりにこだわっていない人も多いと思うけど、俺にとってはすごく大きな意味を持つ出来事です。お母さんやおばあちゃんもビックリしていましたしね。そういう周りの反応を見たことで、メジャーデビューがいかにすごいことなのかを実感しました。

──今おっしゃったようにメジャーだからこそできることできることも多いと思います。そういった部分ではどんなことに期待したいですか?

いやー、「テレビに出してください!」って感じっすね(笑)。もちろん自分自身のアーティストとしてのパワーが第一だとは思いますが、それだけでは実現できないこともいろいろあるとは思うので、そこはチーム一丸となって今まで以上の動きを見せていきたいです。

──現状、メジャーで成し遂げたいことはありますか?

今までの活動の中でもずっと思っていたことではあるんですけど、「竹内唯人と言えばこの曲だよね」と日本中の人に思ってもらえるような、爆発的な魅力のある音楽を作ることですかね。

──なるほど。そこは竹内さんのアーティストとしてのクリエイティビティにかかる比重が大きいと思いますが、それをどう届けて行くかという意味ではチームでの動きが大事になってきそうですよね。

うん、そう思います。最近、やっとTikTokを始めて、そこで4月に配信した「MIRAI(feat. $HOR1 WINBOY)」という楽曲でけっこう大きな手応えを感じたんです。そこから今回のメジャーデビューにつながることで、なかなかいい流れが来ているなという実感もあるんですよ。俺の場合はTikTokやInstagramといったSNSを使いつつ、同時にメジャーならではのパワーも持ち合わせてるという部分で、同世代のアーティストよりも1つ大きくリードできているような気がしますね。

──前回のインタビュー時にRude-αさんと親交があるとおっしゃっていましたけど(参照:竹内唯人「THE FIRST」インタビュー)、メジャーデビューの報告はしました?

竹内唯人

しました! メジャーのお誘いが来たときにすぐRudeくんに電話して。メジャーの先輩としていろいろアドバイスをくれましたね。「メジャーに出たことでいろいろ変わったことはあるけど、アーティストとしての軸はぶれちゃダメだと思う。そのうえで、周りの協力してくれる人たちをどれだけ巻き込んでいけるかが大事だから、みんなからかわいがってもらえる環境を自分で作っていったほうがいいよ」って。その言葉を聞いたとき、「あーホントにそうだな」と思いましたね。

──チームが一新され新天地での活動が始まって、感触はどうですか?

もうめちゃくちゃ楽しいっす! いろんなことに対しての動き方なんかを見ていると「そんなことまでやってくれるの⁉」と思うこともあって。そういうスタッフさんを見ると「俺もしっかりやんなきゃな」と気合いが入りますしね。

──すでにいい関係が築けていると。

そう思います。これまでは話し合いをしながらいい意味で俺に任せてくれていた部分が多かったんですよ。でも、どうしても自分の力だけでは乗り越えられないこともあって。だから今の環境は自分にはすごく合っていると思うんですよね。いろいろやってくれる分、自分でやらなきゃいけないこと、自分がやるべきこともしっかり見えてくるので。

──楽曲制作のスタイルにも変化はありましたか?

はい。以前はディレクターの方と1対1で話し合いながら曲の方向性を決めていたんですけど、今はチームのみんなで一緒に話し合いながら決めていく流れになって。いろいろな人の意見が聞けるのはすごく刺激にもなるし、面白いなと思います。

──となると今後生まれる楽曲に、今までになかった新たな竹内唯人が刻まれることになりそうですよね。

それはもう、一発目の曲としてリリースする「After the rain」からしてそうですね(笑)。今までの自分の曲を聴いてくれてた人はきっと「あ、変わったな」と思ってくれるはず。今までも楽曲ごとに「前とは違ったタイプの曲にしよう」「新しい音色やリズムを使ってみよう」みたいな思いはありましたけど、メジャーに来たことでさらにひと皮剥けたというかね。一発目から殻を破った感じの作品ができたので、自分としてはすごく満足しているし、ここから先がさらに楽しみになっているところですね。

僕のことを理解してくれているUTAさん

──新曲「After the rain」は作曲をUTAさん、作詞をYoheiさんが手がけたナンバーです。

過去に「ニビイロ」と「Silence」の2曲でご一緒したUTAさんは、僕の新しい部分を引き出してくれる方なんですよ。今までいろんなサウンドプロデューサーとやってきた中で、一番僕のことを理解してくれていると感じたのがUTAさんだった。なのでメジャーデビューという新たな一歩を踏み出すタイミングでもまたお願いしたいなと思ったんですよね。今回も新鮮な気持ちで挑めると同時に、新しい自分を見つけられる曲を書いていただけたのがすごくうれしかったです。歌詞に関してはUTAさんの指名でYoheiさんに書いていただきました。

──これまでの楽曲では、さまざまなクリエイターとのコライトという形で竹内さんも作詞、作曲に積極的に関わられていましたよね。今回、そのスタイルにしなかったのはどうしてだったんでしょう?

自分が関わると、たぶん今までやってきたことを引っ張ってしまう気がして。サウンドやメロの雰囲気もそうだし、歌詞に関しても今までの曲と似たような印象になっちゃうんじゃないかなと。新たなスタートを切るタイミングに、そういう曲を出すのはなんか違うかなと思ったので、今回はUTAさんとYoheiさんにすべてをお任せすることにしたんです。

──なるほど。とはいえ、曲の方向性はある程度リクエストしたんですよね?

竹内唯人

今のK-POPの音に惹かれるところがあるので、そのあたりのバラードをリファレンスとして2曲提示しました。ホントにUTAさんのセンスが炸裂する、いい意味で裏切られる曲が上がってきて。新しく動き出す今の竹内唯人にふさわしい曲になっていたので、UTAさんにお願いしたのは狙い通りだったなと改めて思いましたね。

──始まりを感じさせるインパクトのあるイントロのあと、スッと音数が一気に減り、またサビで力強く展開していく流れが非常にドラマチックですよね。

透明感がありつつ、そこにすごく重い音が乗ってくるところは僕のイメージを汲み取ってくれつつも、想像を軽く超えてきましたね。UTAさんが僕に作ってくれる曲は、AメロBメロは音が薄く、印象的なフレーズがループしてることが多いんです。それによって僕の声をしっかり前面に出してくれるというか。今回もしっかりそうなっていましたね。そしてサビになると重い音がグッと入ってきて心を持っていかれる。本当にバッチリ100点満点のトラックだと思います。

──歌詞にも何かオーダーは出したんですか?

2つのテーマを感じられる内容にしたいというイメージがあって。パッと聴いてラブソングとして受け取ることができつつも、その中には裏テーマとして“新たな一歩を踏み出す”とか“殻を破る”みたいな、今の自分の思いに重ねたメッセージを込めたかったんです。Yoheiさんには僕のそんなイメージをしっかり形にしてもらったなと思います。

──聴き手の受け取り方によって表情を変化させる曲でもありますよね。

そうそう。例えば悲しい気持ちのときであればそういう雰囲気にも聞こえるだろうし、海の近くを走るドライブのときに聴けばどこかさわやかな感じにも聞こえてくると思うんですよね。そこに関しては、歌詞はもちろん、メロディやサウンドもそういう部分を意識して作ってもらったところはあります。

──新たな竹内唯人を感じさせる楽曲になっていることは間違いないんですけど、歌詞にはどこか「ニビイロ」からの流れを感じさせる部分もありますよね。それによって今後へとつながる活動が地続きであることを証明しているというか。

竹内唯人

それはね、俺も最初にこの歌詞を読んだときに感じたんですよ。きっとそこはYoheiさんがうまくやってくれたんだと思います(笑)。「Silence」にもそういう部分はあったと思うし。

──「ニビイロ」では「窓の外は いつも同じ 色ない景色」と歌われていましたけど、今回は「窓の景色は 淡色」になっています。それによってこの主人公の前を向いている気持ちがよりリアルに伝わってきたんです。そのあたりも竹内さんからリクエストしたんですか?

言ってないです。Yoheiさんは俺の曲をいろいろ聴いてくれてるらしくて、だから過去の曲からワードやフレーズを拾ってきてくれてるところがあるんじゃないかな。“淡色”ってワードが使われている曲がほかにもあったりしますから。Yoheiさんとは一度じっくり話してみたいですね。実はそういうことをまったく意識しないで書かれた歌詞なのかもしれないけど(笑)、過去の曲とつなげて聴くこともできるのはすごくいいことだと僕は思うんですよ。今までやってきたことを新たな曲としてうまく解放していきたいっていう狙いが僕の中にはあったので。