高槻かなこ|アニソンへの愛と信念を胸にソロアーティストデビュー

愛の質量って、どれくらい?

──もう1つのカップリング曲「アイシテルは♡グラム?」はひたすらハッピーなディスコナンバーで、やはり前2曲とはまったくテイストが違います。

このシングルはまず表題の「Anti world」ありきで、次に「スターになる」と宣言する曲を書くと決めたので、最後の1曲はめちゃめちゃハッピーでキャッチーでポップな曲にして「じゃあ、またね!」みたいな感じにしたかったんです。そういう要望をお伝えしたら、宮崎(誠)さんがこの曲を書いてくださって。この曲も自分で歌詞を書くつもりだったんですけど、曲をいただく数日前にふと「愛の質量って、どれくらいなんだろう?」と思ってメモを取っていたんですよ。で、曲を聴いた瞬間に「このテーマ、ハマるかも」と思って。

──浮かれに浮かれている歌詞が見事にハマっていると思います。恋愛と体重の相関関係に着目するというのも面白いです。

高槻かなこ

とにかくウキウキで。でも本当にふと疑問に思ったんですよね。恋をしているときは食事も喉を通らないし、でも付き合ったら幸せ太りするって言うし……そういうプラマイってどうなるんだろう? 誰か研究している人いないのかな? みたいな。あと、私はもともと恋愛をモチーフにした歌詞を書くのが好きで、「アイシテルは♡グラム?」も超短編の少女マンガを描くような気持ちで作詞したんです。だから3曲の中では一番創作っぽいというか、キャラソンに近いとも言えますね。

──ということは、必ずしも高槻さんの実体験に基づいているわけではない。

ないですね。歌詞には「PIZZA×COKEでカロリーシャワー」とありますけど、私だったら「COKE」じゃなくて「BEER」ですし(笑)。でも、「PIZZA×COKE」でパーティしたらきっとかわいいだろうなあと思って。

──ボーカルも「Anti world」を歌っていた人とは思えないぐらい、浮かれていますね。

この世界観に没入しました(笑)。「アイシテルは♡グラム?」は宮崎さんが録ってくれたんですけど、歌うたびに「いいね!」「言うことないよ!」と褒めてくれるので、私も「まだまだいけますよ!」みたいな感じでどんどんノリノリになっていきました。

──そうした歌い分けもやはり感覚で?

そうですね。これもアニソンカフェ時代に声色を変えていろんな曲を歌いこなせるように鍛錬したことが役に立っていると思います。やっぱり声色を変えたほうが自分でも歌っていて楽しいですし。あと、こういうかわいい曲では、Aqoursで花丸ちゃんとして歌ってきたことが活きるというか。ちょっと甘えた感じとか、花丸ちゃんのニュアンスを借りたらよりかわいくなるなって。そういうのはこの5年間で少しずつ習得してきた技術ですね。

──無理して出す声で歌ってきたからこそ習得できた技術とも言えそうですね。

うんうん。本来の自分だったら絶対にしない表現ですし、声優としての活動の中で歌に表情を付けるということに対してより自覚的になることができました。

アニソンといえば高槻かなこ

──高槻さんは小学生の頃から「歌手になる」という夢を抱き続けてきました。その夢を叶えるまでの期間はかなり長かったと思うのですが、なぜ夢をあきらめずにいられたのだと思いますか?

昔から私には根拠のない自信があって、だから小学生のくせになぜか「スターになる!」とか思ったりしていたんでしょうけど、その根拠のない自信が自分を引っ張ってくれるというか。おかげで、心が折れたことはないです。

──ああ、その折れない感じが表題曲の「Anti world」にバシッとハマっているのかもしれません。

確かに、不登校だった時期はそれなりに闇が深かったんですけど、それでも心は折れていませんでしたね。そういう不屈の精神みたいなものは「Anti world」にかなり入っていると思います。あと、「努力は夢中に勝てない」という言葉がありますけど、私はまさにそんな感じなんです。「歌手になる」という夢に向かって努力していると思ったことがなくて、とにかく歌うのが楽しいから夢中で歌っていたことが、今の自分につながっているんですよ。その今の自分にしても、やっぱり夢中で歌ったり歌詞を書いたりしているので、きっとこれからも変わらないでしょうね。

──「アニソン歌手」として活動していくことも変わらないですか?

はい。やっぱりアニソンを歌わないと軸がブレちゃうので。私は、歌で自分の心情を吐露するとか自分の日常を描くとか、そういうことにあまり魅力を感じないんですよね。それよりも「アニソンといえば高槻かなこ」と言われるぐらい、いろんなアニメの世界を自分の歌で表現していきたい。もちろん、アニメから離れて自分自身を表現したいみたいな欲求もなくはないんですけど、それはカップリングでできればいいなって。とにかく私はアニソンが好きです(笑)。

──では、アニソン歌手としての理想像みたいなものはありますか?

「高槻かなこのアニソンが好き」じゃなくて「好きなアニソンを挙げていったら高槻かなこの曲が多かった」みたいになっていくのが、自分の夢に一番近いかなって思います。

高槻かなこ