これからのナナシスは……
──MVは映像がものすごく美しい仕上がりで。光の雰囲気が独特だなあと。
光を多用するとどうなるかっていうと、単純に画面がボヤけるんですよ。今回はそういう効果を使うことで、物語上の季節である春のぼんやりした空気感を、フィルムで撮った映画のような質感で表現しようと思ったんですよね。どこか1990年代の岩井俊二さんの映画の質感を目指したというか。
──最近のアニメの手法とは違ったアプローチですよね。
そうそう。今のアニメって、線はくっきり、色はパッキリ、塗り分けきっちりですからね。今回はそれをわざとやらなかったんで、最近のアニメっぽくないねっていう感想は想像通りなんです。ただ、そういう手法を使うからには、どこかに色鮮やかで美しい部分はもちろん作らなくてはいけないわけで。だから青空と桜、青と白を極力彩度を高めて、コントラストを強めて盛り込んでいったって感じですね。意図せずナナシスカラーを印象的に使うことになりました(笑)。
──楽曲が卒業ソングですから、MVで桜を印象的に使うことまできっと最初からイメージされてたんでしょうね。
いやいや、そこは偶然(笑)。MVには僕が地球上で美しいと思ってるものを全部詰め込みたいなと思っていたんで、そこから桜が出てきたんですよね。でもよく考えたらたまたま卒業ソングだし、そもそも桜が出てこなきゃダメじゃんってことに気付いて(笑)。うまいこと合致してよかったですね。
──お話を聞いていると、ナナシスというプロジェクトには偶然が必然として最高の形に収束していく流れがいたるところに存在していることに気付かされます。もちろん根底には茂木さんの明確なビジョンがあることは間違いないわけですが。
いろんなものがその意図とは関係なくどんどんつながっていくのは自分でもすごいなって思うこともありますよ。それはきっと僕というか、1人の人間が細部までいろいろやっているからでしょうね。
──今回も、総合プロデューサーの肩書に加え、アートディレクション、MVの絵コンテ・脚本・監督などあらゆるところに“茂木伸太郎”の名前がクレジットされてますから。
あははは(笑)。知り合いの方に今回のMVを観てもらったときに、「とにかく濃縮度がヤバい。何1つ違う方向を向いてないね」って言ってもらえたんですよ。僕の作品はそうなったらいいなと思って作ってはいるけど、実際にそうなっているのであれば今の環境を許してくれている会社、関係者、スタッフの皆さんの恩恵だし、奇跡的なことだなとは思います。
僕が今いなくなったとしても……
──初アニメーション作品が世に出た今、気になるのは今後のナナシスはどうなっていくのかっていうことだと思うんですけど。
未来の話?(笑) まずは3rdライブですよね。
──4月22、23日に幕張メッセイベントホールで開催される「Tokyo 7th シスターズ 3rd Anniversary Live 17’→XX -CHAIN THE BLOSSOM- in Makuhari Messe」ですね。
「H-A-J-I-M-A-L-I-V-E-!!」(2015年5月31日に東京・Zepp Tokyoで開催)と「INTO THE 2ND GEAR」(2016年8月21日に神奈川・パシフィコ横浜国立大ホールで開催)と今回のライブを僕は勝手にトリロジーだと思ってるんですよ。なので、ここで1つの区切りとなるよう、集大成的なライブにしたいなと思って準備しています。すごくいいものになる手応えは感じているので、ぜひ楽しみにしていてください。で、その先ですよね?(笑)
──そうですね(笑)。ぜひお聞きできればと。
現状発表できる大きな動きはないんですけど、僕自身がすごく前向きだっていうことは間違いないです。アニメに関しても、どんな形になるかはわからないけど、またやるべきだと思うし。初回限定盤の設定資料集でも話してるんですけど、ナナシスの映像化に関しては僕の監督・脚本じゃないとやりませんってことでは全然ないんですよ。ナナシスを題材として、その一部を切り取って映像にしてくれる方がいればぜひやってほしいなとは思ってるんです。例えば「俺は(春日部)ハルのここをかわいいと思ってたんだよ!」っていう人が作る映像はきっと、僕がハルに抱いている感情とは違った部分を描いてくれるはずですから。それはぶっちゃけすごく観たい。
──そこは今、すごく柔軟な思考になっているんですね。
もちろんナナシスの魂みたいなものは絶対に残してもらわないとダメですけどね。それが入ってなければ僕がその魂だけ注いでもいいなとは思うし。いろいろ前向きです、今は。
──3rdライブが集大成になるということもそうですけど、茂木さんの中でナナシスのアイデンティティやアティチュードはこれまでの活動でしっかり見せることができたという思いがあるんでしょうね。だからこそ、ほかの人が手がけるナナシスにも興味を持つことができているっていう。
そうだと思います。初めましての方だとまた話は違うけど、少なからず僕と今まで一緒に仕事をしてきた人は、僕の考えているナナシスのイメージ、本質をちゃんとわかってくれているんですよね。だから、もし今僕がいなくなったとしても、3rdライブは僕が想像していた通り、もしくはそれ以上の内容になる気がするというか。今後、小説でもアニメでもそういう状況になっていったらいいなってことは思いますね。今までやってきたことがすごくポジティブな方向に向かいつつあるなって実感している……そんな春の午後です(笑)。
- Tokyo 7th シスターズ
「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」 - 2017年4月19日発売 / Victor Entertainment
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初回限定メモリアルボックス [CD+Blu-ray+グッズ]
4860円 / VIZL-1158 -
通常盤 [CD+Blu-ray]
1944円 / VIZL-1159
- CD収録曲
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- ハルカゼ~You were here~ / 777☆SISTERS
- ハルカゼ~You were here~ -OFF VOCAL-
- Blu-ray収録内容
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- t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~
- 茂木伸太郎(モテギシンタロウ)
- 株式会社Donutsに在籍するクリエイター。「Tokyo 7th シスターズ」の総監督兼総合音楽プロデューサーとして同作品のビジュアル、脚本、楽曲の企画や制作、ライブ制作に携わっている。
- Tokyo 7th シスターズ(トウキョウセブンスシスターズ)
- 2014年2月にサービスインしたスマートフォン向けのアイドル育成リズム&アドベンチャーゲーム。“アイドル氷河期の西暦2034年”を舞台にアイドルを育成&プロデュースしていく。ゲーム中にはメインユニット・777☆SISTERSをはじめ多くのアイドルグループやユニットが登場する。