ナタリー PowerPush - スガ シカオ

ロック社会でファンクを鳴らせ! 「FUNKASTiC」とスガ流FUNK論

J-POPシーンとファンク

──スガさんはデビュー14年目ですけど、歳を重ねることと、自分の音楽との関係性をどう考えていますか?

うーん……あんまり考えてないかな。結構僕バカなんで(笑)、どんどん行っちゃう感じなんですよね。ライブハウスでも前の柵に足かけて落ちるみたいなね(笑)。相変わらずそんなことばかり続けているから、周りからは「そろそろ落ち着いたほうがいいんじゃない?」みたいなこと言われるんだけど。

──それっていわゆる「イケイケ」とも違うんですよね?

ライブはバカ騒ぎですけどね。ライブハウスのときはもうグッチャグチャですけど、やっぱり一番最後に一番BPMの遅いファンキーな曲を持ってきたりするんですよ。それまでガンガン縦にノッてた奴らが全部横ノリになるのを見ると「ああ、ファンクやっててよかったなあ」と。

──やっぱりBPMの遅いファンクチューンは、あまり受け入れてもらえないものですか?

うん。日本の音楽体系というのが、そもそも全部ロックを基準に作られてるから。例えば、いろんなアーティストが集まるフェスやテレビ番組に出ると、ベースを大きくしてくれるとこってひとつもなくて。どこもまずスネアとギターを大きくされるのね。音楽はスネアとギターで作られてるってほとんどの人が思ってるから、そこをドーンと突かれるんですよ。僕らはギターなんかたまーに「チャランラッ♪」とか鳴ってればいいから(笑)。「そんなとこ大きくされても音出てないんですけど」っていう音楽だってことをまず理解してもらうところから始めないといけない。

──ヒップホップシーンも近い状況かも知れませんね。

ヒップホップは僕らよりキツイですよ。Dさんと話し合う中で「BPM120を超える曲を作るときは、ちょっと一声かけてね」って言われたんですね。120を超えたテンポでやると、ラップの言葉一つひとつが何を言ってるのか聴こえなくなっちゃうから。そのときは「わかった」って答えたんですけど、実際にデモ音源で渡した「はじまりの日」はBPM127もあって(笑)。「だからさあ。スガさん話聞いてた?」って言われちゃった(笑)。

──あはは(笑)。でも4つ打ちのハウスナンバーは120オーバーがわりと多いですし、ハウス系の音楽とのコラボでは、ラッパーは伝えられるメッセージが少なくて困ってるかもしれないですね。

うん。遅ければ裏も3連も乗せられるし、倍速もできるし、詰め込んだり伸ばしたり跳ねたりを繰り返せるから、いくらでもやり口があるらしいんですけど。あと、ヒップホップのキックのデカい音って、クラブで聴くとすごくカッコいいでしょ? でも、テレビなんかはそういうふうに調整されてないから。アメリカってね、局によって出音の設定が違うんですよ。R&Bやヒップホップがよくかかるテレビ局だと、出す電波のコンプ設定を低音に耐えられるように変えてる。

──それ面白いですね。局ごとにコンプレッサーの設定が違う。特に低音の重要な音楽ってコンプ命ですよね?

そうそう。だからさあ、もうヒップホップの人たちがすっごくかわいそうで。本当はすげえカッコいい音なんだろうなと思うんだけど、テレビだと「ペンッ、ペンッ」って。僕の昔の曲もそうですよ。ドラムがバンバンバンバンダンッ!! って鳴ったら、ピュッとちっちゃくなってそのまま(笑)。ベースが出過ぎてて。

──最近は何か工夫をしてるんですか?

こっちでテレビで流れることを前提に、いろんなところを切ってる。ラジオ用にも上(高音)と下(低音)全部切って出すとか。そういうふうにしないと、僕らがCDで作ってる音を普通にテレビで流したら、音がファットになりすぎてなんにも聴こえないですから。

──Perfumeがヒットしてエレクトロ系の音がテレビで放送されるようになったとき「こんなに下がブリブリ鳴ってて大丈夫なの?」と思ったんですけど。

ああ、エレクトロの人たちの下の周波数は、意外に引っかかんないところなんですよ。ブリブリしてるんだけど、あるところから下はバッサリ切っちゃってるんで。それはなぜかというと、そういうふうに切ったものをクラブでかけると、サウンドシステムが勝手に下を付けたしてくれるんです。だから、いわゆるエレクトロの人たちがやってる音源をスタジオのモニタースピーカーで聴くと、結構スカスカなんですよ。でもクラブで聴くとドーンと鳴る。クラブのスピーカー設定を見越した音作りなんです。

──へえー。……なんだか楽器専門誌のような話になってしまいましたが(笑)。

でもテレビの音質調整もだいぶ良くなってきてますよ、最近は。特にBS、CSはね。

ブログ企画「輝け! Myリリック!」

──4月からスガさんの期間限定ブログ「FUNKASTiC」がスタートしました。よくアーティストやタレントさんで、何かの企画でブログを始めたもののほとんど更新されず……みたいなことがあるんですが、スガさんは意外というか、かなり頻繁に更新されてますよね。

うん。でも俺の生活なんか切り取って出したってつまんねーし、「そんなことよりも中身のある深いものをやりたい」って提案してやってる。

──じゃあ、読者から歌詞を募集する企画「輝け! Myリリック!」もスガさんの提案で?

そうそう。みんなから詞を送ってもらって、それを俺が読むっていうコミュニケーションの場として。だから1日1回更新するかしないかぐらいのペースで。でも……始まったとたん、すげえ量の詞が投稿されてきちゃってて。

──しかも結構本格的な歌詞が集まってますよね。

めちゃっくちゃレベル高いです! 中学生の歌詞なんてすごいですよ。俺じゃ絶対思いつかないような発想で書いてますからね。ひたすら反省しきりです。「こんなにすごい奴がいたんだ!」って思うものもたくさんある。年齢ごまかしてんじゃねぇかなって思うもんね(笑)。

──でも、ブログにはスガさんのファンが集まっているんだから、どこかしらにスガさんの影響を受けているわけですよね。

というわけでもないみたいですよ。もともと作詞家を目指してた人が「詞を投稿・発表できる場がある」って噂を聞きつけて集まったりもしてるみたい。

──ここから新しい才能が誕生する可能性もありますね。じゃあブログは結構楽しくやっている?

そうですね。別にこうしなきゃいけないっていうルールもないし、結構のんびり楽しくやらせてもらってますので、ぜひ覗いてみてください。

ニューシングル「サヨナラホームラン」 / 2010年4月28日発売 / AUGUSTA RECORDS

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円(税込) / AUCL-23~24 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] 1223円(税込) / AUCL-25 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. サヨナラホームラン
  2. 世界が終わる5秒前
  3. FAN-KEY-TRAINリクエスト・ソング(タイトル未発表)
初回盤DVD収録内容
  • 「Hitori Sugar Tour 2008」ライブ&MC映像

ニューアルバム「FUNKASTiC」 / 2010年5月12日発売 / AUGUSTA RECORDS

  • Amazon.co.jpへ
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CD収録曲
  1. Party People
  2. 91時91分
  3. サヨナラホームラン
  4. 兆し
  5. ファンカゲリヲン
  6. トマトとウソと戦闘機
  7. 雨あがりの朝に
  8. ドキュメント2010 ~Singer VS. Rapper~
  9. 台風は北北東に進路をかえ・・・
  10. 夏色タイム
  11. 軽蔑
  12. はじまりの日 feat. Mummy-D
初回盤DVD収録内容
  • 2009年ロンドン公演 ライブ&ドキュメンタリー映像
スガ シカオ

スガ シカオ

1997年2月にシングル「ヒットチャートをかけぬけろ」でメジャーデビューを果たした、日本を代表するファンクミュージシャン。1998年1月にリリースされたSMAPのシングル「夜空ノムコウ」で作詞を担当したことで、多方面から大きな注目を浴びた。また、1999年7月には杏子、山崎まさよしと共に「福耳」を結成。ソロとはひと味違う魅力を見せている。2007年にはデビュー10周年を迎え、初のシングルコレクション「ALL SINGLES BEST」リリースや武道館ライブなど、精力的な活動を展開している。