ナタリー PowerPush - SONPUB
「世界に通用する新しいポップを作りたい」いざ音とクリエイションの大海原へ
過去にRIP SLYME、湘南乃風、Def-Techなどの楽曲プロデュースを手がけ、Daft Punk、Diploとの共演経験もあるDJ兼プロデューサーSONPUB(サンパブ)。彼が約5年ぶりにオリジナルアルバム「Mother Ship」をリリースした。「船」というコンセプトを持った今作には、客演でホリエアツシ(ストレイテナー)、O-Mocha、SIMON、SKY-HI、Bose(スチャダラパー)、Una、WISE、U-Roy、The BK Soundが“乗船”。EDM、フューチャーベースミュージック、ダブステップ、ヒップホップなどを先鋭的なポップに昇華させたSONPUB独自のサウンドが展開されている。
今回、SONPUBは「世界に通用するようなポップを作ること」を目標としたという。自信を持って届けるその内容について、海外への意識について、現代のクリエイターに求められる力について語ってくれた。
取材・文 / 鳴田麻未 インタビュー撮影 / 佐藤類
絶対的に新しい音にこだわった
──SONPUBさんがオリジナルアルバムを出すのに5年もかかったのはなぜなんでしょう?
自分のスキル的な部分も含めて、絶対的に新しい音っていうところにかなりこだわったからだと思います。僕は楽曲のトラックメイクからミックス、マスタリングまで、エンジニアリングの作業も自分でやるんですけど、その技術を学んで、革新的と思えるレベルまでスキルを持っていくのにすごく時間がかかったっていうのは大きくて。どうせ出すなら本当に革新的なものを出したいから。結果的には“ネクスト”に行けたと思ってるので、確実にパワーアップはしてると思います。
──技術の勉強も習得も込みだったら、短い時間で容易くできるものではないですね。
他人に頼ると、アイデアを100%具現化できないので。でもオリジナルの楽曲自体はたくさん作ってました。1つひとつ面白いものを。ただ、ここ2、3年ぐらいの間はいろんな仕事を受けて、やりたいことも多すぎて、周りから「何が結局やりたいんだ」って思われてたかもしれない。だから、自分が本当にやりたい方向性はこれだってモノをちゃんと見せないといけないなって思ったんです。あれもやってこれもやってますみたいなアルバムにはしたくなくて。今、自分が出すべき音っていうんですかね。シンプルでありコンセプトをしっかり持ったアルバムにしたかった。
──リミックスやプロデュースワークだけでは、リスナーの間でSONPUBという名前と顔と音楽性がしっかり結びついてるのか少々疑問ですからね。
そうですね。このアルバムで存在感をちゃんと表したかったんです。
──SONPUBのアイデンティティを。
もともと音楽を始めた理由から考えると、自分が作ったもので“自分”を見せたいってことが一番だったと思うんです。要はSONPUBという「アーティスト」として活動したいということなんですが、人と知り合ってアーティストプロデュースの仕事なんかをやらせてもらううちに、面白さとか発見することがいっぱいあって。単にこなすプロデュース仕事ではなくマジでぶつかるから自分のスキルアップにもつながったし、わかんないですけどアイデンティティ的な部分にも関係してると思います。
──SONPUBさんはこれまでの楽曲提供やオフィシャルリミックス制作などで、Def Tech、RIP SLYME、湘南乃風、ORANGE RANGE、Fatboy Slim、Daft Punk、Diplo、カニエ・ウェストらと関わっていて、確かに彼らとのものづくりは刺激的だろうと思います。
はい。楽曲を一緒に作るときは、そのアーティストの人間性ももちろん、彼らの目指してるところとか、求めてる音楽性やポップ性みたいなものも学ばせてもらいました。自分が持ってなかった部分とか、見ようとしてなかった部分のよさをいろんなアーティストから吸収して、アーティストプラス社会人としても成長できたような気がします(笑)。なので時間はかかったけど、ホント意味のある期間だったなと思いますね。
いろんな“音楽船”が集まる場所=「Mother Ship」
──アルバムはコンセプトに「船」を掲げて作られたそうですね。
船っていうキーワードは「Dondada」をきっかけに出てきたんです。実際に僕の地元に「Dondada」っていう船があるんですよ。地元のファミリーたちが乗ってる船なんですけど。そこからインスパイアされて、いろんな音楽が集まったアルバムだからいろんな“音楽船”が集まる場所っていう意味合いで「Mother Ship」って付けました。
──1曲目の「Let Your Body Go」から出航して、「Dondada」号で大海へ漕ぎ出し、途中幽霊海賊船(「Ghost Ship」)にも遭い……と、1枚を通してバーチャル航海を楽しめるような内容でした。
そうなんです。例えば最後の10曲目に入れた「Together, Everybody -Exodus-」はもともと先行シングルとして出した曲の別バージョンなんですけど、タイトルに加えた「Exodus」って言葉は、奴隷船からの脱出を歌ったBob Marley & the Wailersの「Exodus」から取ってるんです。つまり、自分の今のアーティストとしての現状からもっといい状況に抜け出してやるぞっていう意味も含めつつ。
──O-Mocha、SIMON、ホリエアツシ、SKY-HI、Bose、Una、WISE、U-Roy、The BK Sound……という「Mother Ship」に参加している豪華な面々はどのように集めたんですか?
まず楽曲があって、これまで自分と関係値のある人の中で、その曲に一番必然性を持って合う人って誰だろうって考えました。
──もともと全員関係があった方なんですね。
はい。仕事で知り合った人たちが多いですね。何も知らない人にいきなりオファーするっていうより……まあ、そんなこと言ったら夢はいっぱいあったんですけど。JAY-Zにオファーしてみたいとか(笑)。
──ロック、ヒップホップ、レゲエ、ポップスなどいろんなフィールドから人を呼んだこのラインナップからも、SONPUBさんの音楽的趣向の幅広さがうかがえますね。参加アーティスト各々のオリジナル音源を知った上で聴くと、「この人をこんな使い方していいんだ……!」という新鮮な驚きもありました。
ありがとうございます。例えば「Rock With You」は、SIMONにヒップホップシーンやクラブシーンで流行ってた曲の王道フレーズをシャウトしてもらって、そのボーカルを“音素材”としてサンプリングして、エディットしまくったみたいな曲です。
──やっぱりこの曲名なので、マイケル・ジャクソンの名フレーズもサンプリングされてますしね。
そうですね(笑)。
──急に和太鼓の音が入ってくる曲もありましたよね?
和太鼓はU-RoyとThe BK Soundをフィーチャーした「International Sound」ですね。U-Royさんはジャマイカでレジェンドみたいなレゲエの歌い手の方なんですけど、これは日本でもジャマイカでも、世界どこでも踊らせてやるよ!みたいな意味合いで作った楽曲で。だから日本の和太鼓みたいな音を入れたり、レゲエの節も入ったり、ダブステップも楽しんでもらえたりっていう曲にしました。あとBKとはMonster Rion(モンスターライオン)というレゲエとエレクトロニックをテーマにしたユニットを最近始めて、これが最初の作品になります。
──全曲、サウンドも構成もかなりカオスで、SONPUBさんの脳内はどうなってるんだろうと思っちゃいました。
狂ってます。あははは(笑)。
- ニューアルバム「Mother Ship」/ 2013年10月2日発売 / PHOENIX PLAYERS / Cabron Music / PECF-3059
- ニューアルバム「Mother Ship」
iTunes Storeにて配信中!
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収録曲
- Let Your Body Go feat. O-Mocha
- Rock With You feat. SIMON
- Dondada feat. Atsushi Horie
- Jack The Ripper feat. Sky-Hi
- Ghost Ship feat. Bose, Una, Wise
- International Sound feat. U-Roy, The BK Sound
- Bang Bang Bang -甘いメロディ-
- Robot Trap
- Robot Carnival
- Together, Everybody -Exodus-
このナタリーPower Push取材の模様(一部)が、インターネットラジオSuono Dolceの「Music Go Round」番組内にてオンエア!
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- Suono Dolce「Music Go Round」BounDEE by SSNW
- 2013年10月3日(木)20:00~22:00
- 2013年10月10日(木)20:00~22:00(※リピート放送)
- 2013年10月17日(木)20:00~22:00(※リピート放送)
- 2013年10月24日(木)20:00~22:00(※リピート放送)
- 2013年10月31日(木)20:00~22:00(※リピート放送)
ニューアルバム「Mother Ship」リリースパーティ×ハロウィンパーティ開催!
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- KATS'
- 2013年10月25日(金)東京都 渋谷WOMB
SONPUB(さんぱぶ)
アーティスト、プロデューサー、DJ。高校時代をロンドンで過ごし、その後音楽活動を開始。ソロおよびユニットのオリジナルアルバムや、Fatboy Slimなど多くのオフィシャルリミックスを発表し、国内外で支持を獲得する。2007年にDaft Punk世界ツアーの東京公演の前座を務め、2011年に「BIG BEACH FESTIVAL」へ出場するなどイベントにも多数出演。APE SOUNDS、ユニバーサルミュージックなどを経て、現在は自身の立ち上げたレーベルPHOENIX PLAYERSに所属している。自身主催の人気イベント「KATS'」は今年で5周年を迎える。2013年10月、5年ぶりとなるオリジナルアルバム「Mother Ship」をリリース。