自分の耳をあんまり信用しなくなった

──この20年間で実感する、ボーカリスト、プレイヤーとしての変化って何かありますか？

TAKE　どうだろうな。デビュー当時から何も変わってない気もするし、ちゃんとステップアップしてこれてんのかな？（笑） まあでも、自分の耳をあんまり信用しなくなったところはありますね。自分では「今日のライブ最高やったな」って思っても周りの反応がイマイチなこともあるし、その逆もある。ってことは結局、僕らは伝える仕事なんだから、自分の中でよし悪しの判断とか評論をしたらダメだってことなんですよ。そういう感覚を持てるようになったのは成長かもしれないですね。レコーディングでも、ちょっと声がひっくり返ってるけどみんなが気に入ってくれているならそれでいいっていう判断が素直にできるようになりましたから。

──客観的な視点を受け入れることで、ご自身の可能性が広がることもあるでしょうしね。

TAKE　そうなんですよ。そういう意味では去年やった「武哲」（ゴスペラーズの村上てつやとのユニット「武田と哲也」）の経験は大きかったかもしれないです。てつやはプロデューサー的な才能もすごくあるから、自分では失敗したと思ったテイクであっても、「いやいいよ。それちょうだい」って言ってくれたりする。それによって新たな発見もあるし、新たな自信も生まれたりするんですよ。だから最近は、「間違えないように何度も歌ってどれだけセクシーなんかな？」みたいなことをより考えるようにはなって。完璧を求めることも大事やけど、それ以上に「なんかわからへんけど惹かれてしまう」ものをチョイスするべきやなってすごく思うようになりましたね。

──KO-ICHIROさんはご自身の変化に関してどう感じていますか？

KO-ICHIRO　いろんなものを吸収して、自分のプレイをより豊かにしたいという気持ちはずっとありますが、どうしても手クセ感と言いますかね、パッと弾いたときに出てきがちなフレーズなんかはあるわけですよ。そこに対して、「それこそが自分の個性なんだ」と受け入れてやり続けたほうがいいんじゃないかなと20年やってきて思うようにはなりました。

TAKE　うん、俺もそう思う。だってB.B.キングのギターソロなんて全部「キュイーン」だけよ。なんかあったら「キュイーン」って鳴らしてる（笑）。それがいいんだよ。だからね、KO-ICHIROの手クセしか入ってないようなアルバムでもいいと思う。そこに、そのときなりのパッションが込められてればいいわけだから。

KO-ICHIRO　全部同じ曲になりそうだけど（笑）。

TAKE　あははは（笑）。でもお互いの引き出しは確実に増えてますからね。KO-ICHIROがライブのリハで何気なくポローンと弾いたフレーズがめっちゃカッコよくてセクシーだったりするんですよ。僕もね、お風呂なんかで出る鼻歌はたぶんすごくセクシー（笑）。それを作品にどう落とし込めるかっていう発明を今やろうとしているところはあるんですよね。

47歳と53歳の2人がいまだに音楽でワクワクできてる

──それって難しいことなんですか？

TAKE　うん。やっぱりね、レコーディングとなるとどうしても構えてしまって、演奏も歌もちょっとだけトーンが変わるんですよね。それがもったいないなっていつも思うんです。だから今後は何も考えていないときに自分からあふれる正直な歌や音……それが手クセってことなんでしょうけど、それをオーディエンスに届けることを追求していきたいですよね。清書したほうが読みやすいかもしれないけど、殴り書きのほうがカッコよかったりしますから。そういうところをS.O.S.としての武器にできたら、今まで以上にいい作品が生まれるんじゃないかなって思いますね。

KO-ICHIRO　永遠の未完成みたいな感覚ですかね（笑）。ちょっと粗削りだったとしても、だからこそ愛おしく思えるところもありますから。

TAKE　「永遠の未完成」は面白いな（笑）。そういう部分でも僕らはまた初心に帰れているような気がするんです。しかも、デビュー当時は力が入りすぎて気付けていなかったことまでわかったうえでの初心やからね。おそらくそこで生まれるパッションは当時を超えられるんじゃないかなって。47歳と53歳の2人がいまだに音楽でワクワクできてることが最高だなって思える20周年でもありますね（笑）。

──デビュー当初はそんな未来を想像していませんでしたか？

TAKE　まったく想像してませんでしたね。いろんなことがわかって大人になっていくにつれて、なんやったら音楽自体楽しめなくなってるんちゃうかなって思ったりしてたんで。でも実際20年経ってみたら、まだまだやれていないことも多いですからね。「まだ行けてない場所もあるよね」っていうKO-ICHIROの発言をきっかけに「Coming 2 you」ツアーへつながったところもありましたし。ここにきてもっとグルーヴィでセクシーで楽しい音楽をSkoop On Somebodyとして作れるような気がしているので、次はそういうアルバムになると思いますね。まだ1曲たりとも完成していないから捕らぬ狸の皮算用的なところはありますけど（笑）。早く制作に入りたいです。

KO-ICHIRO　めっちゃハードル上げてるけどな（笑）。

TAKE　自分でもそう思った。結果、めちゃめちゃ清書された曲ばかりのアルバムだったらホントごめんなさい（笑）。