SixTONESの5thシングル「マスカラ」が8月11日にリリースされる。
豪華アーティストとのタッグで発売前から注目されている今作。表題曲は常田大希(millennium parade、King Gnu、PERIMETRON)の書き下ろしによる胸を締め付けられるようなラブソングで、初回限定盤Bおよび通常盤にはボカロP・くじら提供の応援ソング「フィギュア」が収録されている。音楽ナタリーではこの2曲を軸にSixTONESの新たな音楽性が提示された5thシングルをレビューしていく。
文 / 寺島咲菜
常田が引き出した6人の色気
デビュー2年目に突入した2021年、SixTONESは1月に1stアルバム「1ST」、2月に4thシングル「僕が僕じゃないみたいだ」をリリース。音楽活動だけでなく、“バラエティ三銃士”と呼ばれるジェシー、髙地優吾、田中樹を中心に多くのテレビ番組で存在感を示し、さらにはドラマや映画、舞台への出演、エッセイの執筆など、あらゆる分野でマルチな才能を発揮している。結成6周年を迎えた5月には、グループ名の“SixTONES”にちなんで6周年を特別なものと捉え、メンバーはYouTubeでの生配信や、1カ月限定で開設したTwitterアカウントを通じて、ファンに感謝の思いを伝えた。この生配信の締めくくりに田中が視聴者に発信した「これからも俺らがんばっていき“ますから”! まだまだみんなに楽しんでもらえること用意して“ますから”」のメッセージ。この言葉は5thシングルのタイトルを暗に示していた。常田が5thシングルの表題曲「マスカラ」を制作することが発表されたのは、6月に行われたライブツアー「on eST」の神奈川・横浜アリーナ公演。今をときめく両者のタッグを、各メディアは大きく取り上げた。
King Gnuと音楽番組でたびたび共演し、プライベートでも交流を深めていたSixTONESのメンバー。中でもロック好きの京本大我はKing Gnuのファンを公言しており、コラボしたいアーティストとしてKing Gnuの名を挙げてきた。
SixTONESの現在の平均年齢は26歳。ジャニーズJr.時代からKAT-TUNの系譜を継ぐユニットとして知られる彼らは、年齢的にもそろそろ色気を打ち出していきたいと語っていた。そんなメンバーを研究しつつ常田が手がけたのが「マスカラ」。寂寥感のある大人のラブソングで、SixTONESのデビュー曲「Imitation Rain」でもモチーフになった“雨”がキーワードとなっている。前作「僕が僕じゃないみたいだ」で歌われている恋愛の初期衝動とは対照的に、恋愛経験を重ねた主人公の満たされない思いがつづられている。常田は作詞、作曲、編曲のみならず自らギターも演奏し、彼の盟友である江﨑文武(WONK、millennium parade)がオルガン、クラビネット、シンセサイザー、新井和輝(King Gnu、millennium parade)がベースで参加。アコースティックギターのアルペジオが物悲しいムードを引き立て、叙情的なエアギターの振り付けは、観る者の心を揺さぶる。またメロディ展開は複雑であるものの、そこはかとなく漂う歌謡曲のようなフレーズが耳なじみのよさを生み出している。ボーカルに注目すると、これまでのSixTONESは声を張り上げるようなエネルギッシュな楽曲が多かったように思うが、この曲では声量を抑えた歌唱で狂おしい感情を表現。ハイライトとなるのが森本慎太郎、松村北斗、京本、高地、田中、ジェシーが1小節ずつ歌いつなぐ最後のAメロで、メンバー1人ひとりの歌声を堪能できる。デビュー曲以降はユニゾンを減らし、6人それぞれの声を大切にしているというSixTONESの楽曲の方向性が示されているブロックだ。
くじらが贈った人生讃歌
「1ST」でロック、ポップス、ヒップホップ、R&Bなど多彩なジャンルに挑んだSixTONES。中でもアルバム通常盤に収録されたボカロテイストの「うやむや」で、彼らは新たな音楽文化と向き合い、ジャニーズソングの新境地を切り開いたと言える。この曲がボカロファンに認知されるきっかけとなったのが、アニメーションをえむめろ、イラストをダイスケリチャードが担当したミュージックビデオ。メンバーが出演しない全編アニメーションの映像、疾走感あふれるピアノロック調のサウンド、ボーカロイドが歌唱することを想定して作られたようなブレスの少ない構成は、耳の早いリスナーたちを驚かせた。
5thシングルの収録曲のうち最後までタイトルが伏せられていた「フィギュア」。SixTONESのYouTubeチャンネルでは同曲のミュージックビデオを鑑賞するメンバーの様子だけが公開され、そのネタバレ配慮の徹底ぶりはファンの期待をさらに煽った。
常田とのタッグでジャニーズファンのみならずロックファンの関心も集める中、くじら提供の「フィギュア」がシングルの初回限定盤Bおよび通常盤に収録されることが発表された。くじらはyama初のオリジナル曲「春を告げる」を生んだボカロP。幼少期に親の勧めでバイオリンを習い、中学時代から動画サイトへの楽曲投稿を始めたくじらは、2019年4月にボカロPとして活動をスタートさせ、5月にYouTubeにアップされていたyamaのカバー動画を発見する。その声に惚れ込んだくじらがプロデュースし、昨年4月に配信リリースされたのが「春を告げる」。SNSをきっかけに火が点き、さまざまなヒットチャートをにぎわせた。そんなくじらの楽曲で象徴的なのは、タイトかつメロディアスなダンスミュージック。「フィギュア」でも彼らしいサウンドアプローチがなされており、流麗なピアノのフレーズがリスナーをカタルシスへと導く。歌詞に込められているのは、「思い通りにいかない日々でも自身を見失わずあるがままに生きよう」というメッセージ。聴くものを後押しする人生讃歌でありながら、ラストの「ショーウィンドウに並ぶ僕ら 代替不可であれよフィギュア あるがままで」というフレーズは、ステージに立つSixTONES自身を指しているようにも思え、替えのきかない6人の個性を尊重していく意思表明にもとれる。こうした歌詞の字幕が付いたMVも制作され、香港在住のイラストレーター・リトルサンダーがイラストを、「うやむや」のMVにも携わったえむめろがアニメーションを手がけた全編アニメーションの映像が仕上がった。
SixTONESなりのプロモーション
5thシングルには「フィギュア」以外にもカップリング曲が収録される。初回限定盤Aには、別れた相手への未練が歌われた全編英語詞のラブソング「Make Up」、通常盤には、ジャズとヒップホップが混じり合う「Lost City」、4thシングルの表題曲をピアノとストリングスのアレンジでアップデートした「僕が僕じゃないみたいだ(Dramatic Rearrange)」。5thシングルでアーティストとしてさらなる進化を遂げるSixTONESは本作が多くの人の手に渡るよう、趣向を凝らしたプロモーションを展開中。2年目を迎えた「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」では「マスカラ」の歌詞「凡庸なラブストーリー」にちなんでラジオドラマの脚本を考えたり、グループのYouTubeチャンネルでは「マスカラ」の店頭用ポップを手作りしたりと、彼らなりに5thシングルをアピールしている。
6つの音色と音域、6人が持つ個性を輝かせようという意味が込められたSixTONESというグループ名。5thシングルで常田やくじらといった作家陣に引き出されたSixTONESの新たな一面は、多くの人々を虜にするだろう。