この1年で高まった一体感
──Silver Kiddは2023年前半をライブ活動に時間を費やしてきましたが、ライブを重ねる中で新たに見つけられたものはありましたか?
FUYU ありがたいことに、まず今年1月にBillboard Liveツアーをやらせていただいたんですけど、僕らはバンドを組んでほとんどライブをしないまま楽曲制作を進めてきたので、初めは「チャレンジングだな」と思っていたんです。ここまで個性が異なる4人が集まって、どんなライブができるのかと不安もありましたが、リハーサルを始めて初っ端から相性がよかったというか、統一感があったんですよね。そこから、見せ方や鳴らし方含めてもっとバンド感を強めていこうと、毎月ライブハウスで活動していって。今は4人が同じ目線で、同じところを目指せるようになったのかなと思うんです。そういう意味では、ライブを始めてまだ1年ぐらいですけど、わりと早い段階で一体感が作れている気がします。
AssH バンドって技術だけじゃなくて、「ヤバい」とか「カッコいい」とかそういう姿も見せていかないといけないと思っていて。各々プレイヤーとしてもアーティストとしてもある程度の技術はあるわけですけど、そこだけを強調して「俺らすごいだろ?」というダサい方向にだけは絶対に行きたくない。今思い返すとBillboard Liveのツアーだったり、その前にやった日清食品 POWER STATIONでの配信ライブも本当に素晴らしい演奏ができていたと思うんですけど、技術的じゃない一致団結感とか音の持つ魅力とか絡み方というのは、本当にここ最近でだいぶ変わったと思いますし、すごくやりやすくなりましたね。
Bubby この4人で集まって音を合わせたときに「Silver Kiddはなんなのか」ということがどんどんクリアになって、バンドとしてさらによくなっていったんだろうね。
Nyk あと、ライブを重ねたことで自分たちのアレンジ力も格段に上がったんじゃないかな。最初に「Cloud 9」を制作したときはSilver Kiddとしてライブをしたことがない状態で、それこそBubbyはまだ日本にすらいない状況。そこからこの1年、ライブを重ねるたびに僕ら自身も毎回よくなっているという手応えがあって。今回の「Die Pretty」ではアレンジャーを入れず自分たちだけですべて制作したんですけど、そういう成長が曲からもしっかり伝わるんじゃないかと思っています。
果てしなく広がる宇宙のように
──では、ここからはその新曲「Die Pretty」についてじっくりお話を聞かせてください。この曲で一気に突き抜けた感が伝わってきます。
Nyk そう感じてもらえるのが、一番うれしいです。
──サウンド的にも個性の強いプレイが凝縮されていて、しかもそこに無駄が一切感じられず、どれもこの曲に必要な要素であることが伝わってくる。例えば、Bメロでのスリリングなドラムプレイやグルーヴィなベースも激しいギターも、無意味に隙間を埋めるのではなくて、サビに向けて盛り上げるために絶対に必要な要素であり、その絶妙なサジ加減が心地いいんですよ。
FUYU この曲は「物語を作ろう」という思いのもと、4人で集まってアイデアを出しながら作りました。そういうテーマがアレンジにもしっかり表れているんだと思います。
AssH 最初はイントロのベースから作って、そこから発展させていったんです。Bubbyのベースっていい意味で普通じゃないので、僕が王道っぽいロックなフレーズをプレイしてもBubbyのベースが入ると急に世界が変わってしまう。だから、サビはストレートなサウンドになるよう心がけました。Dメロのコード構成もBubbyのアイデアで、僕からは出てこないようなものだったから、本当に楽しい制作期間でした。それに、結果として完成した曲を聴いて、「Silver Kiddってこれだよね!」と僕らが満を持して言えるようなものに仕上がりましたし。
Nyk BメロでFUYUさんが小刻みで叩き出すと、「どこに向かっているんだろう?」という不安を駆り立てられるんだけど、キャッチーなサビで一気に開かれる感が強まる。その構成も歌詞の世界観とマッチしていて。僕らにとってメジャーデビューにはこの曲しかないという、4人の思いが詰まった作品になったんじゃないかと思いますし、Silver Kiddのサウンドの中にはいろんな要素があるんですけど、「Die Pretty」はそのすべてがそろった自信作です。
AssH 僕の中では、Silver Kiddには宇宙のイメージがあって。宇宙って果てしなく広がっているじゃないですか。Silver Kiddもそうでありたいんです。この4人には限界はなく、各々がこのバンドやほかの現場、私生活で得たインスピレーションやアイデアが混ざり合っていって、Silver Kiddをどんどん更新していく。ざっくり言えばオルタナティブロックやミクスチャーロックなのかもしれないけど、特定のジャンルで言い表せないと思うんですよ。
──この曲に限らずですが、Silver Kiddの楽曲って概ね2、3分台とコンパクトにまとまっていますよね。
AssH ライブではまた異なるんですけど、音源制作においてそこはかなり意識しています。時代背景的にも今はコンテンツの消費サイクルも早いので、サビに到達するまでのタイムも僕が音楽を始めた頃と比べて短くなっている。なので、今回はギターソロを入れるのか入れないのかなども含め、いろいろ考えています。
Nyk 「Die Pretty」は4分近くあるので、僕らとしては長いほうですね。僕らの曲は音楽にめちゃくちゃ興味がある人が聴いてくれていると思うんですが、中にはたまたま耳にしたという人もいるわけで、そういう人たちにも届く曲を作りたくて。好きでいてくれている人だけに通じる曲ではなくて、誰の人生のサウンドトラックになってもおかしくないような、アクセスしやすい作品作りを心がけていきたいと思っています。
世に出したい曲はたくさんある
──歌詞についてですが、この「Die Pretty」という印象的なタイトルの楽曲でどんなことを表現したかったんでしょう?
Nyk 「Die Pretty」は直訳すると「美しく死ぬ」という意味なんですけど、潮時という意味合いの慣用句もあるんですね。この楽曲に関しては、恋愛の中で将来性が感じられず、このまま無理して関係を続けることで輝かしくてきれいな思い出までもが嫌な記憶にすり替えられてしまう、それに気付いた瞬間が描かれています。「死ぬ(=Die)」と「美しい(=Pretty)」を並べることにより、終わりを迎えるからこそ美しい思い出になるというメッセージを伝えたくて。すべての出来事が当たり前じゃないことをちゃんと意識して、1つひとつを大切にして生活していく、その中から生まれる喜怒哀楽を今回は表現しています。
──そういった表現が、ときには刹那的であったり艶っぽく感じられる。この「Die Pretty」含め、Silver Kiddの楽曲からは古きよき時代のロックが持っていた官能的な要素が強く伝わるんです。
FUYU ありがとうございます。僕たちもそういうロックに憧れていた時代があったので、その言葉はうれしい限りです。
──Silver Kiddはこの曲で全米デビューするわけですが、そこで選ばれたレーベルがAlpha Pup Recordsというユニバーサルミュージック傘下にあるアメリカの音楽レーベル。ヒップホップやエレクトロ系中心のレーベルという印象が強かったので、とても意外でした。
FUYU そもそもBubbyが自分のソロ作品を一度、Alpha Pupでリリースしていて(※2022年リリースの、Bubby & Eddie名義による「Pour Me A Drink」)。その流れで始まった縁なんです。
Nyk Alpha Pupがユニバーサルミュージックの傘下に入ったということもあり、ケヴィン(Alpha Pup Records主宰のダディ・ケヴ)としても扱うアーティストの幅も広げていきたかったようで、本当にタイミングに恵まれていたと思います。
Bubby ケヴ、ありがとう!
──となると、海外からのリアクションも楽しみですよね。
Nyk Silver Kiddとして今は東京に拠点を置いていますが、いろんな形で海外の人たちにアピールする機会があると思うんです。僕らとしても、ここから世界に出ていったときに日本の皆さんに誇ってもらえるバンドになれるようにがんばっていきたいです。
──Silver Kiddの音楽は海外からの影響を感じさせつつ、今の海外の音楽シーンにはない音だと思っていて。このミクスチャー感って、もしかしたら日本ならではのものなのかもしれませんよね。
FUYU 海外ではこういうサウンドってあまり聴いたことがないですし、僕も海外の人たちが聴いてどう感じるのか、すごく興味があります。
Nyk 先日ちょうどケヴィンと話したとき、「アメリカでも、人種的にこんなに鮮やかなバンドはいないよ」と言われました。音楽って文化と根深く結び付けられていた部分があったので、自分の周りで一緒に育った人たちとのつながりを大切にしているところもあるんですけど、僕らは意図してこういう編成になったわけではなくて、いろんな偶然が重なってこの4人がそろっただけなんです。
Bubby そういう点でもSilver Kiddらしい特色を出せていると思うよ。育った文化背景も環境もそれぞれ異なるので、そこを武器として生かしていきたいです。
Nyk 世の中的にもそういったグローバル化がどんどん進んでいるので、そういった意味でもこの先の時代を象徴するようなバンドになりたいですね。
──そして「Die Pretty」を皮切りに、この先どんな曲が届けられるのかも楽しみです。
AssH 世に出したい曲は本当にたくさんあるので、期待していてほしいです。
Nyk 今もちょうど新しい作品を作っているところで、僕らも次のアクションを本当に楽しみにしています。
プロフィール
Silver Kidd(シルバーキッド)
それぞれが海外にルーツを持つFUYU(Dr)、Bubby(B)、AssH(G)、Nyk(Vo)からなる4人組バンド。2022年9月に始動し、ライブハウスを中心に活動している。2022年11月にEP「Cloud 9」をリリース。2023年11月に新曲「Die Pretty」をアメリカのレーベル・Alpha Pup/Virginより配信リリースし、全米デビューを果たした。
Silver Kidd (@silver__kidd) | X