Shun Nakanishiインタビュー|Netflix「ボーイフレンド」出演を経て生まれた片思いソング (2/2)

今の自分ならではの片思いソング

──「ラブソングは滅べばいい」は、どのようなイメージで書き始めた曲なんですか?

片思いをしていた頃の気持ちを消化するために曲を作ろうと思ったのが始まりでした。片思いしていた時期のことを振り返ると、当時の自分は幸せなラブソングを聴きたくなかったんです。自分が幸せじゃないから、幸せな曲はいらないとすら思っていて、当時は鬼束ちひろさんやCoccoさんのような、絶望の中でもがいているような、“どん底を楽しむ”曲を聴いていました。恋愛の曲でも「なんで振り向いてくれないの?」「あなたのせいで」みたいな思いを歌った悲しいものばかり聴いていて、ハッピーな曲をノイズのように感じていました。「ラブソングなんていらない」という当時の気持ちを、「ラブソングは滅べばいい」という究極の表現に変えてタイトルにしたんです。

──この恋が叶わないならば、ラブソングなんて存在しなければいい。けっこう極端な考え方ですよね。

僕はちょっと極端なところがあるので(笑)。でも自分でも興味深いんです。片思い中は「幸せな歌はいらない」と思っていたのに、好きな人ができて、幸せな恋愛をしている今は、西野カナさんの曲とかがめっちゃ刺さる。どんなラブソングが心に染みるかは、聴く人がどんな恋をしてるかによって変わるんだなと思いました。

Shun Nakanishi

──ではこの曲も、片思い中の人が聴くかもしれませんね。

そうですね。あの頃の僕のように、相手に振り向いてもらえなくて「悲しい」という感情にただただ浸っていたいという人もいると思うんです。「この曲を聴いてとことん沈みたい」みたいな。この曲がそういう人たちの救いになればいいなと思います。そのためにも、やっぱり歌詞は大事にしたいですよね。

──「君を思い出さないって決めたのに もう名前を呟いてる」という冒頭の歌詞は特に秀逸です。叶わない恋だと頭では理解しながらも、本心では相手を求めている。片思いの経験がある人ならば誰しも心当たりのある感覚かと思います。

自分も片思いしていた頃は「どうせ叶わないんだろうな」という気持ちを抱きながらも、相手のことを思っていたので。この歌詞は本当に自分って感じ。「誰にも奪われたくない 別に僕のものでもないけど」という歌詞も矛盾しているし、当時の心境がそのまま反映されています。僕もそうだったけど、片思いをしている人ってどこか自分勝手になりがちだと思うんですよ。「なんで振り向いてくれないの?」「誰にも奪われたくない」「キスくらいさせて」みたいな。だけど「せめて夢の中では」「別に僕のものでもないけど」というふうにひと言付け加えているところは、「自分、ちょっと大人になったな」と感じます。今の自分ならではの片思いソングが書けました。

歌詞と楽曲へのこだわり

──歌詞を書くうえで、何かルールを設けていますか?

歌詞の選択肢って無限にあるじゃないですか。最初どう書き始めるのかを決めるのは難しいから、韻で制御しているというか。今回の場合は、「知らない」「I don't know why」「知りたくもない」「心拍が上がり」「奪われたくない」「僕のものでもない」……と「ai」の音で意識的に統一させました。

──メロディについては、いかがですか? 前作よりキャッチーにしたという話でしたよね。

基本自分で考えたメロディがベースになっているんですけど、共作曲のShinnosukeさんに「こう変えてみるのはどう?」と提案してもらって、実際に変えてみたら「確かにキャッチーになったな」ということがあって。自分1人では作れないメロディが完成して、コライトって大事だなと実感しました。

──トラックのこだわりについても聞かせてください。

前作がダンスミュージック系だったので、今回もエレクトリック要素が欲しいと思って。だけど「R&Bの曲を作りたい」という気持ちもあったから、R&Bを土台に、間奏からエレクトロに変わっていくようにしました。スタンダードなR&Bだったら、自分がやる意味がないので、好きなジャンルを融合させようという考え方でしたね。

Shun Nakanishi

宇多田さんとコラボしたい

──前作の「Rewind」も今回の「ラブソングは滅べばいい」も、恋の苦みを歌った曲でした。Nakanishiさん自身は今幸せな恋愛をしているのに、こういう曲がアウトプットされるのが面白いなと思いました。

確かに。どうしてなのかはわからないですけど……。たとえ今幸せだとしても、片思いや失恋のつらい記憶って、後遺症のように残り続けるものなのかもしれないです。でも11月にリリース予定の4thシングルはハッピーな曲なので、楽しみにしていてほしいです!

──5カ月連続配信リリースを経て、来年アルバムを発表予定なんですよね。どんな作品になりそうですか?

「愛の始まりから終わりまで」というテーマのアルバムを作ろうと思っています。自分の中にある全種類の愛を歌いたい。「愛」以外のテーマで曲を書いている人も世の中にはたくさんいるけど、「すごいな」と思います。今のところ、僕には難しい。青春や人生を歌おうとしても、結局全部愛の曲になっちゃうんです。なので、もっと成長したいですね。いつか卒業ソングとかを書けるようになりたいです。

──今後活動の中で実現させたいことはありますか?

一番実現させたいのは、宇多田ヒカルさんとのコラボです。椎名林檎さんとの「二時間だけのバカンス」のように、宇多田さんが歌って、そのあと自分が歌って……みたいな曲をやりたい。宇多田さんとのコラボはすぐにでも実現させたいけど……現実的に考えると、「5年以内で」かな? コラボするためには、まず、宇多田さんに僕の音楽を届けないといけない。届いてほしい!

──ライブはどうですか? 先ほど「今後ライブをやるなら」とおっしゃっていましたが。

ライブもやりたいです。だけどそのためには10曲くらい必要だと思うので、まずはアルバム制作をしっかりがんばるところからですね。歌がうまくなりたいので、2カ月前にボイトレを始めたんですよ。こないだレコーディングしたときも、自分の歌を聴いて「めっちゃいい!」と思えたから、ライブでもしっかり歌いたいんですけど……まだ経験がないから、つい「失敗するんじゃないか」ってイメージしちゃう。練習を続けていきたいです。

Shun Nakanishi

プロフィール

Shun Nakanishi(シュンナカニシ)

2000年生まれ、福岡県出身のソロアーティスト。2024年7月からNetflixで配信されている男性同士の恋愛リアリティショー「ボーイフレンド」への出演を機にブレイク。2025年8月にデビューシングルであり5カ月連続リリースの第1弾となる「Rewind」を発表し、9月に2ndシングル「ラブソングは滅べばいい」をリリース。Haze glitch名義でも楽曲を発表するほか、「ボーイフレンド」で結ばれた中井大とともにDaiShunとしても活動している。