しゅーず|迷いながらもたどり着いた、アーティストとしての新境地

しゅーず|迷いながらもたどり着いた、アーティストとしての新境地

2019年にアーティスト活動10周年を迎えて以降、マイペースな活動を続けてきたしゅーずが、初めての全曲書き下ろしによるニューアルバム「Velvet Night」をリリースした。

アルバムには、みきとP、湊貴大、梅とらといったベテランのボカロPのみならずAyase(YOASOBI)、くじらといった新世代のボカロP、さらにしゅーず自身が初めて作詞作曲を手がけた「Velvet Night」など計13曲が収録される。2019年のインタビューでは音楽活動の継続に悩んでいた彼が、節目の1年を経てどのような思いのもと今作を完成させたのか。1年半ぶりのインタビューで彼の音楽活動への思いの変化に迫った。

取材・文 / 倉嶌孝彦

仕事をしながらアルバムを作った1年

──前作「DEEPEST」のインタビューの際、しゅーずさんは音楽活動を続けるかどうか悩んでいるようでした(参照:しゅーず「DEEPEST」インタビュー)。結果として今、こうして新作のインタビューが実現しているので、音楽を続ける決断をしたわけですよね。

10周年ライブのアンコールで、「辞めようと思っていたけど、まだ続けます」というメッセージを伝えさせていただいたんですが、「よかった! うれしい!」という声がある中で「歯切れが悪い」みたいに厳しい意見をお送りいただく方もいらっしゃって……。賛否両論ある中で「続ける」という選択を皆さんに示したわけですが、音楽活動にすごく前のめりかと言われると、素直にうなずける感じではないんですよね。今回のアルバム制作も、ありがたいことにレーベルの方からお話をいただいたから実現したような側面が強くて。

──そうは言っても今作は全曲オリジナルという、かなり力の入った作品ですよね。

そうですね。これまでのアルバムはカバーが多くて、基本的にカバーというのは曲をお借りしている、という意識が強いんです。でも自分のために全曲書き下ろしの新曲をいただくとなると、否が応でも気合が入るというか。最初のうちは不安だったんですが、レコーディングを重ねるうちに「これは生半可な作品にしちゃいけないぞ」と気持ちが入りました。

──以前のインタビューでも触れましたが、しゅーずさんは音楽活動以外にも仕事をしていて、その両立は今も変わらないんですよね?

はい。僕の仕事はテレワークができるような職種ではないので、変わらず出勤して働くのがほとんどでした。こういう状況ですから、これまでと変わらずに働くというのは精神的負担も大きくて。ただアーティストを本業にしている友人たちは去年のライブスケジュールがほとんど飛んでしまったような状況だったので、まだ自分は恵まれている状況なんじゃないか、と思ったこともありました。友人たちも自粛期間で何もしないわけではなく、その分制作にガッツリ集中していたみたいなので、それができない自分からするとちょっとうらやましさを感じたり(笑)。どっちがいいとかではないんですが、自分にできることを突き詰めていった1年だったと思います。

──それを「うらやましい」と感じる根っこの部分で、しゅーずさんはやっぱりアーティストなんだと思います。

確かに、そうかもしれないですね。実はアルバムの制作は新型コロナウイルスが流行する少し前からスタートしていて、コロナ禍で制作期間が延びてしまった、という背景があって。僕は仕事をしながら休みの日にレコーディングをする、というものすごく忙しい時期もあったので、周りをうらやむことはちょくちょくありました(笑)。

求められている「夜」の要素

──アルバムのコンセプトである「夜」というキーワードはどこから出てきたんですか?

これまで僕の意識の中では“しゅーずというコンテンツ”に対して、あまりこだわりなくなんでも歌ってきたんですよ。でも活動を続けているうちに、自分に求められているもの、「こういう曲を歌うと喜んでもらえるぞ」みたいなものが見えてきて。それが大人びたテイストでしっとりした、イメージで言うと「夜」の楽曲だったんですよね。

──前作の収録曲「Highway Lover」のミュージックビデオで都会の夜景が描かれてたように、「夜」というのはしゅーずさん自身のイメージに合っていると思います。

ポップで明るくて楽しい曲は少ないけど、僕が得意な艶やかな曲がたくさん入ったアルバムなので、リスナーの皆さんが喜ぶような曲がいっぱい入っていると思います(笑)。ジャケットイラストは今回新しい方にお願いしているんですが、夜の街を見下ろしている感じの大人びた雰囲気で描いてもらいました。前回のジャケットに登場した、僕の愛犬もジャケットに入れてもらっています(笑)。

“伝説の人”と心を通わせた

──アルバム収録曲の中で最初に公開された曲が湊貴大さんの提供曲「一夜爛漫」です。この動画が公開されたのが昨年8月なので、このときからアルバムの制作は始まっていたわけですよね。

去年の8月の時点でアルバムの制作は始まっていたんですが、「一夜爛漫」を作り始めたときは、まだアルバムの構想はなくて。実を言うと、もともと去年どこかでライブをする予定でいて、「一夜爛漫」はそのライブのために作った曲なんです。だから「一夜爛漫」はアルバムの中でもダンサブルでポップなテイストが強いですね。湊さんは僕ら世代からすると“伝説の人”なので、昔はディレクションで立ち会ってもらうだけでものすごく緊張していましたが、今回ようやくレコーディングで心がつながった手応えがありました。最初のレコーディングなんて、僕があまりにも緊張しすぎているから湊さんがあえてスタジオで席を外す、みたいなこともあったんです(笑)。

──今回のレコーディングではどういうところに手応えを感じたんでしょうか?

まず席を外すことなくずっとディレクションしてもらっただけで、成長したなと(笑)。それだけじゃなくて、何度も一緒に曲を作ってきたから、湊さんが求めていることがある程度わかるようになって、言葉にしなくてもそれを体現できるようになってきた実感があるんです。この曲で言うとサビの部分で「Touch Me」「Catch Me」という言葉を重ねるんですよ。この部分、きっと湊さんがこだわっている部分だなと思って。ライブを想定して曲を作っていたから、ここはコール&レスポンス的に歌うところで、きっと湊さんが僕の持ち味を生かして用意してくれたところだとすぐわかった。普通のコーラスとは違って、けっこうガッツリ「Touch Me」「Catch Me」の言葉が重なるのは、湊さんのこだわりですね。