Seven Billion Dots|暗い道を照らす、ロックバンドの光

Seven Billion Dotsが2月17日に1stフルアルバム「HOPE」をリリースした。

Seven Billion Dotはアメリカ・ニューヨーク帰りのMasafumi(Vo)、実の双子であるKen(G)とドラマーLyo(Dr)からなる3人組ロックバンド。2018年に「出れんの!?サマソニ!?」や「RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 18/19」といったオーディションを勝ち抜いて注目を浴び、2019年12月にソニー・ミュージックレーベルズからメジャーデビューを果たした。初のフルアルバムにはメジャーデビュー曲「Stay With Me」やテレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディングテーマとして使用されていた「Maybe I」を含む全11曲を収録。これからさらなる高みを目指していくSeven Billion Dotsの進化の軌跡が刻まれたような作品となっている。

音楽ナタリーではSeven Billion Dotsの3人に初インタビュー。彼らのバックグラウンドからアルバムの制作過程、目指すバンド像まで話を聞いた。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ

音楽ってこんなに開放的にやっていいんだ!

──Seven Billion Dotsはどのように結成されたバンドなのでしょうか?

Masafumi(Vo)

Masafumi(Vo) もともとは3人とも違う活動をしていまして。僕はダンスボーカルをやっていて、KenくんとLyoくんはそれぞれ自分のバンドで活動していたり、ほかのバンドのサポートをしたりしていました。最初に僕とKenくんが知り合いの紹介で出会ったんですけど、KenくんとLyoくんが双子ということもあり、Lyoくんも自然と合流して。そうして3人になった感じです。

──Masafumiさんとしては「とにかくバンドが組みたい」という気持ちが強かったんですか?

Masafumi そうですね。ダンスボーカルをやっていたときに行き詰まりを感じ、気持ち的にふさぎこんでいってしまったんですよ。そんなときにBring Me the Horizonの「Avalanche」という曲のミュージックビデオをたまたまYouTubeで観て。イントロから激しい曲なんですけど、そのイントロを聴いたとき、ビビッときたんですよね。「あ、音楽ってこんなに開放的にやっていいんだ!」と思うとともに「もしかしたら自分はバンドのほうがやりたいのかな」と思い始め、ダンスボーカルの活動が終わると同時にバンドを組もうと決めました。

Lyo(Dr) Masafumiからバンドに誘われたときは「面白そうだな」と思いましたね。最初にもらったデモを聴いたとき、Kenと一緒に「あ、この声めっちゃいい!」って盛り上がったのは覚えてます。

──それぞれの音楽的なバックボーンを教えていただけますか?

Masafumi 僕が中学生の頃はGReeeeNやコブクロがすごく流行っていたのでそのあたりのJ-POPを聴いていたんですけど、ニューヨークに行っていた高校時代の2年間の中で、だんだんロックが好きになっていきました。今の自分がすごく影響を受けているであろうジャンルはポップパンク。さっき言ったBring Me the HorizonやAll Time Lowをよく聴いていたので、そういうバンドが自分の作る音楽に影響しているんじゃないかと思いますね。

Ken(G)

Ken(G) 僕がギターをやりたいと思ったきっかけは、テレビでL'Arc-en-Cielを観たことで、そこからX JAPANやGLAYなどを聴いていきました。高校では軽音学部に入ったんですけど、その部にはメタルが好きな人が多く、その人たちの影響でメタルばかり聴いていました。メタルのギターはフレーズがキャッチーなので、自分では意識していなくても、そこはSeven Billion Dotsの曲にも反映されているかもしれないですね。

Lyo 僕もKenと同じく、ラルクをテレビで観て「カッコいい!」と思い、バンドの音楽を聴くようになりました。そのあと、X JAPANのYOSHIKIさんを見たのがきっかけでドラムを始めましたね。高校はKenと一緒だったので、僕もメタルはよく聴いていて。なので、高校時代にKenと一緒にやっていたバンドではメタルを演奏していました。

──現状、作詞作曲のクレジットはバンド名義になっていますよね。曲作りはどのように行っていますか?

Masafumi ほとんどの曲は主に自分が書いているので、ある程度固めたものを2人に共有して、「ここをこうしたいんだけど」と相談しながらみんなで固めていく感じですね。Kenくんも曲を書くので、その場合は役割を変えて、Kenくんが主軸となって進めていきます。基本的に歌詞もメロディもアレンジも3人の意見を取り入れているので、バンド名義にしています。

──なるほど。Seven Billion Dotsが結成されたのは2018年2月で、その年に「出れんの!?サマソニ」や「RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 18/19」といったオーディションを勝ち抜き、「SUMMER SONIC 2018」や「COUNTDOWN JAPAN 18/19」といった大型フェスに出演しています。順調に活動できている感覚はありましたか?

Lyo 思ったより速いペースで進んでいるなという感覚は正直ありました。だいたいのバンドは地道に活動をしていくものだと思いますけど、自分たちの場合は、ほとんどライブをやったことがない状態でオーディションに臨んだので。だから当時は「おお、(オーディションに)通った……!」という感じでした。

Masafumi 「SUMMER SONIC」や「COUNTDOWN JAPAN」は、バンドマンにとってはやっぱり憧れの舞台というか。自分たちは「スケールの大きなバンドになっていきたい」とずっと思っているんですけど、大きなステージに立ち続けられるようなバンドでいたいし、そういう音楽をやっていきたいと再認識する機会になりました。

自分の中に多様なものがあっていい

──そしてSeven Billion Dotsは2019年12月にシングル「Stay With Me」でソニー・ミュージックレーベルズからメジャーデビューしました。その表題曲かつ今回のアルバム「HOPE」の1曲目に収録されている「Stay With Me」は壮大な曲で、「スケールの大きなバンドになっていきたい」というバンドの姿勢が表れているように思えます。そもそもどうしてそう思うようになったのでしょうか?

Masafumi これは自分個人の考えになるんですけど、最初に話したように、僕はすごく苦しくて縮こまっていた時期に、バンドの音楽にある種救われたんですよ。だからこそ、あの頃の自分と同じように行き詰まりを感じている人たちに「こういう考え方もあるのか」という1つの逃げ場を作りたい。だから自分たちの音楽を多くの人に聴いてもらいたいという思いがあるんです。そういう思いから、より多くの人に共有したい、広いステージに行きたいという考え方になっていきました。

──「ニューヨークに住んでいた時期もあった」と先ほどおっしゃっていましたが、今話していただいた考えには、そういったバックグラウンドも関係していますか?

Masafumi そうですね。ニューヨークって、歩いていると街並みがどんどん変わっていくんですよ。労働者階級が住んでいる地域もあれば、富裕層が住んでいる地域もある。そういう地域ごとの空気、文化、人と話してみた感じの違いみたいなものがすごく面白くて。ニューヨークに行って感じたのは、いろいろなものが同じ場所に存在していていいんだということ。Seven Billion Dotsの曲も、一貫性はあるけどいろいろな味付けのものがあるので、「自分の中に多様なものがあっていい」という考え方はバンドにも反映されているんだろうなと感じます。

Lyo(Dr)

──「HOPE」にはさまざまなタイプの曲が収録されていて、まさに多様性のあるアルバムになったかと思います。皆さんご自身は、どんなアルバムになったと感じていますか?

Ken できあがったあと、通して聴いたときにすごく前向きなアルバムができたんじゃないかなと思いました。曲調も歌詞の内容も、「HOPE」というアルバムタイトルに紐付いたものが多く出てきたというか。もちろん意識的にそうした部分もあるんですけど、こういう時期だからこそ、自然と前向きな内容になっていったんでしょうね。

Masafumi これまでが1stステージだとしたら、2ndステージへだんだん移行していく様子をこのアルバムで見せられていると思うんですよ。なので、Seven Billion Dotsのオリジナリティを新しく更新できたんじゃないかと思っています。

Lyo かなり思い入れのある作品になりました。最後の1カ月間、詰め作業を毎日のようにやっていたんですよ。今までよりも時間をかけて作っているし、作品について考える時間も長かったぶん、クオリティが高くなったんじゃないかなと思います。Masafumiも2ndステージと言っていたように、次以降の作品でもどんどん更新していけたらと思いますが、その足掛けとなる作品になったんじゃないかなと。