千田葉月|「ゾイド」新ヒロインが歌手デビュー プラスのエネルギー伝える

私、自由になれるんだ!

──「ヒカリ」の歌詞についてはどう解釈されました?

「ゾイドワイルド ZERO」で私が演じているサリーちゃんの心情を表していると思いました。物語の中で、彼女は最初、行き先もわからずただ逃げることしかできなかったんですけど、主人公のレオ(・コンラッド)と出会うことで自分の使命と向き合い、変わっていくんですね。なのでアニメをご覧になれば、例えば1番Aメロの「掻き消された 小さな声」からサリーちゃんとの関連性が見えるんじゃないかと。

──「ヒカリ」がサリーちゃんのことを歌っているのであれば、千田さんもサリーちゃんとして歌う、つまり千田葉月の歌ではなくキャラソンになってしまうといった危惧もあったのでは?

あったんですけど、けっこう私が前に出てきちゃうんですね。特に1番の歌詞は自分ともめちゃくちゃ重なるというか。私は高校1年生ぐらいのときに本気で「声優になる!」と決めたんですけど、親から反対されまして。そのときすっごい泣いていたことがBメロの「熱い涙 抱きしめて」に重なるし、でも今こうして声優のお仕事ができているということは、サビの「こんな私でも 変えてゆける」に重なるし。しかもそのあと「自由になれるんだ」って続くんですよ!

──千田さんは、抑圧されていたんですか?

いや、そんな大げさなものではないんですけれど、例えば高校生のとき、声優さんになったつもりで家でマンガのセリフを音読していたら「静かにして」と言われたり。あと、今考えれば当たり前なんですけど、受験期はマンガもアニメも封印されていましたし……。

──お風呂で歌えば近所から苦情が入るし。

そうそう(笑)。でも、大学に入学したら、親から「1年だけなら声優の養成所に通ってもいい」という限定的な許可をもらえまして。そこで大学よりも声優の演技の勉強をがんばっていたら「そこまでやりたいなら、満足するまでやりなさい」と。そこで、ついに自由になれた気がしたんです。

千田葉月

声優になれば、物語の中に入っていける

──ちなみに、どうして声優になりたいと思ったんですか?

もともと私は物語が大好きなんですよ。特に、中学2年生のときに図書室の司書さんからいろんな本を教えてもらい、1年に150冊ぐらい読んでいて。読みながら「この物語の中に私も入っていけたらなあ」と思っていたんです。で、その司書さんはアニメもお好きな方で、西尾維新さん原作の「<物語>シリーズ」とか、それこそ「銀魂」や「ONE PIECE」、「NARUTO-ナルト-」といったジャンプアニメをオススメしてくれたんです。それらを観ているうちに「あれ? このキャラクターとあのキャラクター、同じ人が演じてる?」と気付いたんです。そして「もしかして、声優さんになればいろんな物語に関われる?」「しかも自分が声優として物語の中に入っていける?」と思って、声優を目指すようになりました。

──声優としてアニメのキャラクターを千田さんが演じるのは今回の「ゾイドワイルド ZERO」が初めてですが、「ゾイド」シリーズについてはご存知だったんですか?

千田葉月

恥ずかしながら、知らなかったんですよ。オーディションを受けるにあたって企画書を読んだときも話が難しすぎて「これはマズい!」と、無印の「ゾイド」(1999~2000年に放送されたアニメ「ゾイド -ZOIDS-」)から順番に観ていきました。でも、最初はお勉強のつもりだったんですけど、観ているうちに「次は? 次は?」って夢中になっていましたね。

──そして、ヒロインであるサリー役に抜擢されました。

びっくりしました。そのことを知らせてもらった日は、「事務所に来てください」とだけしか言われてなくて、「なんの話だろう?」と若干ビクビクしていたので。

──「怒られるのかな?」とか?

まさに(笑)。ちょうどその少し前に喉を痛めてしまったんですよ。だから「声優としての自覚が足りない」みたいなお叱りを受けるんじゃないかと思っていたんですど、行ってみたら「サリー・ランド役のオーディションに受かったよ」と。私としては、例え名前のない役でもセリフがひと言だけでも、アニメのお仕事ができるというだけで飛び上がって喜んだと思うんですけど、まさかのヒロイン役で。事務所から出た瞬間、うれしさのあまり駅までダッシュしました。で、駅に着いてすぐ親に電話して「ちょっと聞いて!」って。

──親御さんの反応は?

留守電でした(笑)。