メンバーのことを考えて泣きながら書いた

──2曲目にはアルバムのリード曲「ファンファーレ」が収録されます。テレビアニメ「HIGHSPEED Étoile」のエンディングテーマとして書き下ろされた楽曲ですが、同時にSCANDALのテーマソングとも言える1曲になっています。作詞はTOMOMIさんですね。

TOMOMI　アニメの主人公が自立した強い女性だと聞いていたので、そこをストレートに伝える歌詞を書いていきました。ちょっと前ならストレートに伝えることが恥ずかしくて、ちょっと照れちゃう感覚があったんですけど、今はもう包み隠さず素直に書くほうがカッコいいと思えるんですよね。同時に、おっしゃっていただいたようにアニメの内容に自分たちと重なる部分がめっちゃあったので、そこも踏まえて作詞した部分もありました。歌詞を書きながら「自分たちがここからどう生きていくのか」「バンドとしてどう活動していくのか」みたいなことを考えていたら、ちょっと泣けてきちゃったりもして（笑）。もしレースのように、自分たちもゴールを迎えるときが来るのだとしたら、自分たち史上最高の状態でゴールラインを超えたいよな……とか、そんなことまで考えながら作詞作業に向き合いました。

──「誰も追いつけない世界へ」というフレーズは、ギネス世界記録を保持するバンドだからこその説得力がありますよね。「永遠に1番近いところへ行こう」というラインもすごくSCANDALらしい表現だと思いますし。

RINA　そこの歌詞、めっちゃ好きなんですよ。「ホントにそういうことだよな」って、めちゃくちゃ思いました。“永遠”に限りなく近いところまで走ることこそが今の自分たちのモチベーションでもあるから。

TOMOMI　そこはね、メンバーのことを考えてめっちゃ泣きながら書いた（笑）。

RINA　“泣き腫らした”？

MAMI　1行目の歌詞のまんまやん（笑）。

TOMOMI　あははは。この曲の歌詞はなかなか書き上げられなくて。何回かプリプロも飛ばしちゃったりしたんですけど、どうしても納得いくまで書きたかったんです。本当に時間をかけて紡ぎました。

──作曲とアレンジはMAMIさんですね。

MAMI　「4人だけで鳴らすバンド曲もやりたいよね」っていう話の中でトライした曲でしたね。自分たちで曲作りをするようになってからは、こういうタイプの楽曲に対してTOMOMIが歌詞を書くことはなかったので新鮮さがありました。ちょっと作詞に苦戦してる雰囲気を感じてはいたんだけど、TOMOMIの「意地でも書く」っていう気持ちがすごかったので（笑）、納得するまで全然待ちますよっていう姿勢で。本当に納得のいく形に仕上がってよかったなって思います。

──歌詞に込められた思いの丈を声色に落とし込んだようなボーカルも最高ですね。

HARUNA　自分たちのことはもちろん、ファンの人たちのことも考えて作った曲なんだなってひしひしと感じたので、皆さんに向けて大切に届けたいという気持ちで歌いました。最近、今まで以上に強く思うようになったんですけど、ファンの人たちはSCANDALと一緒に成長して人生を過ごしているパートナーみたいな存在ですから。

MAMI　もうすぐ始まるアニメとともに、曲も楽しんでほしいなって思います。

“同じ血”が入ったメロディ

──続く「私たち」は作詞をRINAさん、作曲をMAMIさんが担当したラブソングです。

RINA　これは詞先で作りました。実はこの歌詞は私のストックの中にあったものなんですよ。書いた当時は何かが足りないなと思って保留にしていたんですけど、数年ぶりに読み返してみたら今の自分的にちゃんと仕上がってるなと思えて。たぶん、自分が大人になったことで中途半端な関係性も1つの形だと思えるようになったんだと思います。今回、形にするにあたってはDメロだけを今の自分の言葉として書き足した感じですね。そこからMAMIにメロディを付けてもらいました。

MAMI　RINAの中に明確なサウンドのビジョンがあったので、それを踏まえながら明るいメロディを付けていきました。切ない歌詞との面白い二面性が出せたんじゃないかなと思います。全体的な雰囲気としてこの曲はポップスに仕上げたかったので、アレンジを江口（亮）さんにお願いして、印象的な鍵盤をいろいろ入れていただきました。すごくかわいい曲になりましたね。

──「Plum」ではEOWが作曲とアレンジで参加されています。EOWのボーカルであるLacoさんとSCANDALは同じ音楽スクールに通っていたんですよね？

TOMOMI　はい。小学生時代からの仲間なんです。今回、一緒にやることができて、もう感動的！

HARUNA　あははは。

TOMOMI　Lacoと一緒にお仕事できること自体がすごく幸せなことなんですけど、それ以前に私は、ただのファンってくらいEOWの音楽性が大好きなのですごくうれしくて。今回はEOWのテーマでもある明るくて泣けちゃう曲を、SCANDALとしてやってみたいなと思ったんです。私が持っていたストックの歌詞をブラッシュアップしてEOWにメロディを付けてもらいました。EOWとタッグを組んだからこそ生まれた、色気のある失恋ソングです。

RINA　EOWはレコーディングにも来てくれて。一緒に話しながら録っていったんですけど、自分のプレイに対していろんな意見をくれたり、プラスの言葉をかけてくれたりするのがすごく新鮮で、すごくハッピーな空間でしたね。

TOMOMI　Yutaroがめっちゃ褒めてくれるんですよ（笑）。

HARUNA　そういうのって大事だもんね（笑）。

TOMOMI　しかもサウンド的には自分たちからは絶対に出てこないアイデアをくれるしね。

MAMI　めちゃくちゃ勉強になりました！ 演奏していてすごく気持ちいいし、HARUNAの声にもすごい合ってるよね。

HARUNA　うん。メンバー以外の人が作った曲を歌うのはやっぱり新鮮ですし、同じスクール出身のLacoが作ったメロディはすごく歌いやすいんですよ。どこかに同じ血が入ってるというか（笑）。ちょっと懐かしくて、エモい気持ちにもなりましたね。

思いを詰め込んで大爆発させてみた

──7曲目の「LOOP」はRINAさんが作詞作曲を手がけています。荒々しいサウンドの上で「こんな世界じゃ終われないわ」「こんな世界じゃ笑えないわ」と歌う痛快なロックナンバーですね。

RINA　ロックとかグランジっぽい、ガチャッとした汚れたサウンドがやっぱり好きなんですよね。これは思いっきりライブハウスでかき鳴らせるような、めちゃくちゃ簡単な曲を作りたいなと思って書いていきました。私はDTMで曲を作る際、ギターが使いこなせないのでループのコードを貼っていくんですよ。その作り方をうまく生かせたらなと思い、「LOOP」というタイトルと歌詞のテーマに落とし込んでいきました。

──同じことを繰り返す日々への怒りにも似た感情が描かれていますよね。

RINA　この曲を書いた時期は、そういう気持ちがすごく強かったんですよ。「こんなに同じスケジュールを繰り返す生き方でいいのかな」ってめちゃくちゃ思ってたし、ニュースを見ても「また同じことで失敗して問題になってるじゃん！」みたいなことをよく思っていて。そんな思いを詰め込んで大爆発させてみました（笑）。

HARUNA　サウンド的にはどこか新鮮な聴き心地もありましたね。ボーカルに関しては、曲調に合わせてけだるそうに歌ったほうがいいよねっていうのは理解してるんですけど、私はけっこう根がマジメなので（笑）、ついついちゃんと歌っちゃうっていう。その塩梅がけっこう難しかったかもしれないですね。

──演奏はいかがでしたか？

RINA　これはもうほぼ一発録りで終わりました。

HARUNA　めっちゃ早かったよね。1日で歌まで録ったから。

TOMOMI　私は本当に1回しか弾いてないです（笑）。こういう曲だから直しとかあんまりないほうがいいかなと思って。1回だけ弾いたやつをそのまま出すっていうのはひさしぶりでした（笑）。

MAMI　こういう曲は好き勝手できるからいいんですよ（笑）。現場で出たアイデアに対して、「それもいいね。やってみよう」みたいな感じでトライできる。しかも、その“衝動”がいい感じに曲を盛り上げてくれて、聴いてて楽しい曲にもなるし。たまにこういう曲をやるのもいいなってすごく思いました。