SCANDAL「ハイライトの中で僕らずっと」インタビュー|世界一になっても止まらない4人のこれから

SCANDALのニューシングル「ハイライトの中で僕らずっと」が10月4日にリリースされた。

MAMI(G, Vo)が作詞作曲を手がけた表題曲「ハイライトの中で僕らずっと」は、人生が有限であることを強く意識したうえでバンドとしての新たな覚悟と決意を注いだ1曲。今年で結成17周年、メジャーデビュー15周年を迎え、8月には「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」というギネス世界記録を樹立したSCANDALにとって、本作はその未来をより輝かしく、力強く照らしていく最重要ナンバーとなっていくはずだ。またカップリングにはTOMOMI(B, Vo)が“生きることが下手な人への応援歌”として作詞作曲した「CANDY」も収録。タイプの異なる2曲により、SCANDALの多面性を鮮やかに伝えるシングルとなっている。

“世界一”の称号を手に入れたSCANDALのメンバー4人に、ギネス世界記録のこと、そして本作にまつわるエピソードを聞いた。

取材・文 / もりひでゆき

ギネス世界記録からの解放 より自由に、軽やかに

──SCANDALは今年8月21日に「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてギネス世界記録に認定されました。前回のインタビューでお話しされていたことが見事、現実になりましたね。

HARUNA(Vo, G) なんとか無事にその日を迎えられて本当にホッとしました。自分たちが17年続けてきた記録やいろいろな資料を集めたうえで申請したことだったんですけど、実際に認定されるまではなんとも言えない状況だったので。

TOMOMI(B, Vo) 自分たちはこの17年間、ただただ4人でずっと一緒に居続けただけなんですけど、それで世界一になれたのがとても自分たちらしいなと思うし、うれしいことでしたね。とは言え、世界一に認定されたからと言って、次の日から何かが大きく変わるわけでもなく(笑)。ここからまだまだ続いていくんだという気持ちですね。

MAMI(G, Vo) 認定された2日後から普通に仕事を始めていましたからね(笑)。本当に止まらずにずっと続いている気持ちです。自分たちにとって大きなターニングポイントになり得る出来事ではありますけど、決してそこがゴールではなかったので。そこも自分たちらしいなと思います。

RINA(Dr, Vo) 実は数年前から、SCANDALの1つの到達点としてギネス認定を意識しながら活動してきたところがあったんです。だから無事に認定されたことで、そこから気持ち的に解放されたとも言えるんですよね。なので、これから先は「あそこに向かわなきゃ」「ここまでやらなきゃ」「休んじゃいけない」とかを考えすぎず、いい意味でより自由に、軽やかに活動していけそうな気がしています。

──今回の記録はSCANDALが活動を続ける限り、他者に塗り替えられることはなく、認定された活動期間も伸び続けていくわけですよね。

RINA そうですね。

MAMI この瞬間も記録を更新中なので(笑)。例えば20周年とか25周年のタイミングで改めて申請すれば、新しい記録が公式になるんですけど。

──その事実はバンドにとって大きな自信にもなりますよね。

HARUNA そう思います。この17年を振り返ると本当にいろんな出来事があったし、その中でたくさんの夢を叶えてきましたけど、自分たちのことを褒めてあげる瞬間がほぼなかったような気がするんですよ。その時その時で達成感や満足感は味わっていたけど、心の底から「自分たちってすごいんだ!」と思った瞬間はあまりなかったなって。でも今回は世界記録ですからね。自分たち自身でも、ちゃんと自分たちのことを褒めてあげたい気持ちがあります。

HARUNA(Vo, G)

HARUNA(Vo, G)

絶対シングルで出したかった

──そんなSCANDALから届いた新曲「ハイライトの中で僕らずっと」は、結成18年目を迎えたバンドとしての決意と覚悟を改めて提示する1曲になっています。ギネス世界記録のことも相まって、今このタイミングで世に出される意味を強く感じましたが、作詞作曲を手がけたMAMIさんはどんな思いを曲に注いだのでしょうか?

MAMI もともと、どんな内容にしようかをあまり決めないままの状態で、メロだけは去年からできていたんです。そんな中、北米ツアー(2022年7月「SCANDAL WORLD TOUR 2022 "MIRROR" North America」)で自分たちがコロナにかかってしまい、途中でライブをすべてキャンセルしなきゃいけなくなってしまって。帰国することもできず、10日間くらいずっとホテルで過ごしていたときに、人間はいつ死ぬかわからないし、バンドが続けられなくなる日が来るかもしれないんだと本気で感じたんです。

──予期せぬ出来事は人生のさまざまな場面において起こり得るもの。そこへの危機感を覚えたんでしょうね。

MAMI はい。そこで思ったのは、今の自分がSCANDALというバンドに対して思っていることを楽曲としてしっかり書き残しておく必要があるんじゃないかということでした。その時点でギネス世界記録へのチャレンジを意識していたので、そういった思いも含めて書いていきました。今作では今まであまり言ってこなかったような、本音みたいな部分も言葉にできた気がします。

TOMOMI この曲のデモが届いたとき、これがどのタイミングで書かれたものか想像がついたんですよ。私自身、北米ツアーをキャンセルしたときにまったく同じ気持ちだったから。さらに言うと、その頃にほかのメンバーが作った曲にもだいたい同じ感情が詰め込まれていて。そこに私はすごく安心したんです。ギネス世界記録という大きなものを手に入れたあと、その先をどう生きて行くか想像がついていなかったけど、この曲があることでその先の道が見えてきた気がしたというか。自分たちにとって大事なポイントとなる曲になると強く感じました。

HARUNA デモを聴かせてもらったのは年始だったんですけど、2023年はギネス世界記録の件も含めて大事な1年になることは見えていたので、それにふさわしい1曲だなとすごく感じました。先を見つめた楽曲ではあるけど、そこにポジティブなことだけを詰め込むのではなく、自分たちが味わってきたギリギリな状態だとか、順風満帆ではないストーリー、私たちの人間らしい部分がちゃんと紡がれていたのがすごくいいなと。「SCANDALはこういうバンドなんだよ」ということを伝えられる曲だと思ったので、これは絶対シングルで出したかったんです。

RINA 結成から17年間の歴史があったからこそ生まれた曲だと思います。すべての言葉に共感できたし、自分たちじゃないと生み出し得ない曲がこのタイミングでできあがったのがうれしかったですね。個人的には歌詞の中にいい怒りのエネルギーみたいなものが詰め込まれているのもすごく好きなところで。私たちはまだまだ自分たちに期待してるし、「もっとできるはず」というパワーがありますからね。この曲が持つパワーに置いていかれないように、ここからも自分の心を燃やし続けておかなきゃという気持ちにさせてもらえました。

──強いパワーに満ちた歌詞が乗るサウンドも、SCANDALというバンドのアイデンティティを強く感じさせてくれる最高の仕上がりですね。アレンジは江口亮さんが手がけられています。

MAMI 最初はサビがぐわっと広がるような、思い切りJ-POPなサウンドにしたい気持ちが強かったんです。自分たち以外の楽器もいっぱい入ってくる派手な曲にしたいなって。でも、みんなで話し合っていく中で、この曲はちゃんとバンドが際立つものにしたほうがいいんじゃないかというアイデアが出て。そこをポイントにしつつ、「テイクミーアウト」(2016年7月発表のシングル)でいいコミュニケーションが取れた江口さんにアレンジをお願いしました。

MAMI(G, Vo)

MAMI(G, Vo)

──当初のイメージ通り、ストリングスをはじめとするアディショナルな楽器も盛り込まれていますけど、楽曲の太い軸になっているのは間違いなく4人の演奏と歌になっていますよね。

RINA そうですね。この曲はめちゃくちゃ感情移入しながら演奏できるので、レコーディングもものすごく気持ちよかったです。フレーズ的に複雑なところがあまりなく、全体的にシンプルなアレンジなので、余計な負荷みたいなものを感じることなく、純粋に楽しみながら演奏できるんですよね。ポジティブなことだけではない、私たちのいろんな感情が詰め込まれてはいますけど、音像的には明るくハッピーなシーンを作ってくれる曲になったので、ワンマン以外のライブでも活躍してくれそうだなって思います。

TOMOMI ベースはMAMIのデモアレンジからガラッと変わったんですよ。もともとはもうちょっとロックっぽくガツガツ弾く感じだったんですけど、最終的にはわりと隙間を開けて、リズミカルな雰囲気になりましたね。演奏はとても楽しいです。決め顔したい気持ちもあるけど、ずっと笑顔で弾いちゃいます(笑)。