THE CLASHが嫌いな人とエロ話のセンスがない人は信用できない

──紗羅マリーさんにとって、俊美さんから教えてもらったアーティストの中で一番衝撃的だったのは？

紗羅　THE CLASHでした。もちろん曲は聴いたことがあったけど、アルバムをしっかり聴いたら本当に衝撃的で！ 今でも一番大好きなバンドです。 俊美　そう言ってもらえるとうれしいなあ。僕的に、THE CLASHが嫌いな人とエロ話のセンスがない人は信用できないんですよ（笑）。SEX PISTOLSに対しては賛否両論があっていいんですが（笑）、THE CLASHは奥行きがあるし、やっぱりスゴイ。だからこそ、嫌いなんて信じられないんです！

紗羅　あとはMANO NEGRA。先入観全くなしで聴いたら、私のドストライクで（笑）。

渡辺　MANO NEGRAはすごくいいよね。もう解散してしまったけど、バンドのフロントマンだったマヌ・チャオという人が未だに世界を旅しながら音楽をしていて、成長することをやめないんです。ロックンロールを続けるのも大事だけど、成長することも大事だと思うんだよね。そういえば僕この前、小学校でライブをしたんだけど、ステージを観るみんなの目がキラキラしていたんですよ。その目はこれから、ずっと進化し続けるし、変わっていく。そう思うと、僕自身もこのままじゃいけない、って思ったんですよね。成長することをやめるおじさんもいるけど、それはすごくつまらないこと。もっとどんどん挑戦して、失敗して、それを成長し続ける子供たちと同じ目線で分かち合うようなおじさんになりたいんですよ。そうでないと、言葉の説得力がなくなっちゃうから。音楽というフィールドで、常に作品を残しながら挑戦をし続けていたいですね。

俊美さんが歌うチャンスをくれた

──そんな俊美さんの音楽談義を聞いているうちに、紗羅マリーさん自身、歌を聴くだけではなく、歌いたいと思うようになったんですか？

紗羅　実はずっと前から歌いたいとは思っていたんですが、自信がなくて、言葉にはできなかったんです。でも、モデルを10年やってみて、モデルだけじゃ自分の全ては表現できないことに気付いたんです。そんなふうに思っているときに、番組内で俊美さんが歌うチャンスをくれたんですよ。

──デビュー前に？

紗羅　はい。土砂降りの海辺で、弾き語りで「なごり雪」を歌わせてもらったんです。

──絶対に忘れないシチュエーションですね（笑）。

紗羅　忘れないですね（笑）。最初は緊張でどうにかなりそうだったんですが、歌い始めたら本当に気持ちが良くて！ それを体感してしまったら、もう自信がないとか言っていられないなって思ったんです。

渡辺　みんな番組のスタッフは紗羅マリーちゃんの歌を聴きたかったんですよ。音楽番組のただのアシスタントではなく、彼女に実力があることはわかっていたし、歌が好きなのは目に見えていたし。そんな期待に、彼女はあのステージで見事に応えたんです。

俊美さんは私の低い声をキレイと言ってくれた

──歌手として成長していく紗羅マリーさんを見ていた俊美さんが、TOKYO No.1 SOUL SETのアルバム「全て光」でコラボ相手に選んだのは必然だったんですね。

渡辺　そうですね。ほかのメンツは原田郁子に中納良恵、小泉今日子、土岐麻子、小島麻由美と、すごく個性的でしょ？ 全員間違いない実力を持っていて、キャラ立ちまくっているし。そんな中で、もっとクールに、もっとゴリっとしたサウンドが欲しかったんですよね。そこで紗羅マリーちゃんの名前を出したんです。元々紗羅マリーちゃんはエイミー・ワインハウスが好きだって言っていたし、そんな雰囲気が出ればいいな、って思っていたんです。媚びは売らなくていいし、斬新で、チャラくなく、誰もが知っているであろう「接吻」（オリジナル：ORIGINAL LOVE）を今のサウンドで紗羅マリーちゃんに歌ってもらいたかったんですよ。

──紗羅マリーさん、誘われたときの心境はいかがでしたか？

紗羅　本当にうれしかったですね。まず、ほかにコラボしている人たちの名前を見て興奮しちゃって、すぐに母親に電話しました（笑）。それと、何よりうれしかったのが、俊美さんは「紗羅マリーちゃんは高い声より低い声がキレイだから」って言ってくださったんです。普段、レコード会社の方や音楽関係の人たちは、若い人＝高い声と思うらしく、そういった曲を薦めてくれるんですが、私は低い声のほうが私らしいと思っていたんですよね。そこを一瞬で見破ってくれた俊美さんはさすがだな、と思ったんです。

渡辺　素敵な声は変えちゃいけないんですよ。うまく歌おうとボイトレしてもダメ。紗羅マリーちゃんも普段の声がすごくキレイだから、その声を聴かせたいと思ったんですよ。