音楽ナタリー PowerPush - さかいゆう×日野皓正 対談
“無”が生み出す音楽
メジャーデビュー前からさまざまなアーティストとのコラボレーションを繰り広げ、個性を遺憾なく発揮してきたさかいゆう。新作「さかいゆうといっしょ」は彼のコラボ作品をまとめた1枚で、過去の楽曲のみならず、録り下ろしの最新コラボナンバーも収められている。今回の特集ではさかい本人たっての希望を受け、新曲「闇夜のホタル」に参加しているトランペッター・日野皓正との対談をセッティング。2つの才能が世代を超えてシンクロする貴重な時間となった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 佐藤類
「で、ボーカルはどんな女の子なの?」
──今回はアルバム参加アーティストとの対談を企画する中で、さかいさん直々に「ぜひ日野さんと」というリクエストがありまして。
さかいゆう そうなんですよ。なかなかこういう機会もないと思うので。僕の中ではマイルス(・デイヴィス)の自伝に出てくる歴史上の人物なんですよ、日野さんって。
──初対面はレコーディング現場ですか?
日野皓正 そう。でもね、スタジオに行ったら歌うたいがいないなあ、今日はアレンジャーしかいないのかって思って息子(日野賢二。ベーシストでさかいの作品にも参加している)に聞いたわけ。「で、ボーカルはどんな女の子なの?」って。
さかい あっはっはっは!(笑)
日野 「親父、いたでしょピアノの。彼だよ!」って言われて「えーっ? 彼が歌うの?」って。ずっと女の子だと思ってたの。ピアノの人がアレンジについてああだこうだと言ってるけど、なかなかいいセンスしてるなあと思ったら、彼が歌ってるって聞いてびっくり(笑)。
──そもそもなぜ今回、さかいさんは新曲で新しいコラボレーションをするにあたって日野さんを誘ったんですか?
さかい 単純にファンで大好きだったから。jino(日野賢二の愛称)と知り合いだからお願いできたけど、普通に生きてたらこんな機会ありませんよね。でもね、日野皓正という人の存在はもちろん昔から知ってたんですけど、CDを買ってじっくり聴き始めたのってここ4年ぐらいなんですよ。淡い印象だけがある中で、CDを聴いてブッたまげましたね。今日持ってきたんですよ。(日野のCD作品を数枚取り出しながら)「Stella by Starlight(星影のステラ)」が聴きたくてこれ(日野皓正クインテット「LIVE!」)を買ったんですけど、この曲、ずーっとアドリブじゃないですか。
日野 知らない。
さかい 自分で演奏してんですよ!(笑)
日野 全部覚えてないんだもん。終わったらパッと、それ以上は聴かないから。
さかい あー、なるほど。それがいいんだろうなあ。本当にブッたまげたんですよ。マイルスがハービー(・ハンコック)たちと演った「プラグド・ニッケル」(1965年録音のアルバム「At Plugged Nickel, Chicago」)みたいな衝撃で。
日野 すごいの聴いてんじゃん。あまりメジャーじゃない、ヨレヨレのマイルスだよね(笑)。
さかい はい。日野さんの作品は、マイルスがその後エレクトリックに行かずにそのままアコースティックでやってたらこういう音になってただろうな、みたいな感じがしたんです。
「闇夜のホタル」のレコーディング
──「闇夜のホタル feat. 日野皓正」をレコーディングするにあたっては、さかいさんが自ら「こういうふうに吹いてほしい」とオーダーを?
さかい 何も言わなかったですね。まったくお任せで。
──では日野さんは事前にデモを聴いた上で……。
日野 デモは聴いてない。スタジオで「1回聴かせて」って言ってレコーディングした音を聴かせてもらって、じゃあ俺は最初セクシーに下のほうから出ていって、終わりのところで張り上げて……ってイメージを固めて。
さかい いやあ、感動しました。最後の編集はこちらに任せてくれたんですけど、ほとんど吹いてもらったそのまんまで入れました。
──頭に描いていた通りの音だった?
さかい いや、具体的なフレーズは事前に決めてなかったんですよ。一応キーボードでそれらしいフレーズは入れてたんだけど、日野さんが思うままに吹いてほしかったから。日野さんのトランペットはすごく力強いし自由なんだけど、歌心があるんですよ。
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- さかいゆう コラボレーションアルバム「さかいゆうといっしょ」 / 2015年2月4日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / AUCL-175~6
- 通常盤 [CD] 3186円 / AUCL-177
CD収録曲
- SHIBUYA NIGHT(featuring TOMOYASU TAKEUCHI) / さかいゆう
- 生まれてきてありがとう feat. さかいゆう / KREVA
- 記念日 feat. さかいゆう / マボロシ
- ピアノとギターと愛の詩 / 大橋卓弥(スキマスイッチ)
- シロクジ feat. さかいゆう / KOHEI JAPAN
- Magic Hour feat. さかいゆう / RHYMESTER
- LOVE & LIVE LETTER / 福耳
- いつもどこでも feat. さかいゆう / 冨田ラボ
- Hold You feat. Yu Sakai / Ovall
- ピエロチック feat. 秦基博 / さかいゆう
- Life is feat. Emi Meyer / さかいゆう
- 薔薇とローズ feat. Little Glee Monster / さかいゆう
- Mirror feat. お客さん / さかいゆう
- 闇夜のホタル feat. 日野皓正 / さかいゆう
初回限定盤DVD収録内容
さかいゆう TOUR2014 "Coming Up Roses" SPECIAL
- OPENING
- SHIBUYA NIGHT feat. 竹内朋康
- EMERGENCY feat. 竹内朋康
- Life is feat. Emi Meyer
- 愛するケダモノ feat. TOKU
- ピエロチック feat. 秦基博
- 薔薇とローズ
さかいの湯 Vol.3“さかいゆうといっしょ”スペシャル
2015年3月13日(金)
東京都 EX THEATER ROPPONGI
<出演者>
さかいゆう / KOHEI JAPAN / 土岐麻子 / RHYMESTER / Little Glee Monster
写真左:さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながらピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化させ、2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感ある歌声が広く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2014年1月には3rdアルバム「Coming Up Roses」、同年9月にミニアルバム「サマーアゲインEP」を発表した。2015年1月には書き下ろしの新曲を含むコラボレーションアルバム「さかいゆうといっしょ」をリリース。3月にはEX THEATER ROPPONGIにて、このアルバムのスペシャルイベント「さかいの湯 Vol.3 “さかいゆうといっしょ”スペシャル」を行う。
写真右:日野皓正(ヒノテルマサ)
1942年東京生まれ。9歳の頃からトランペットを学び始め、13歳の頃には米軍キャンプのダンスバンドで活動を始める。1967年に発表された初のリーダーアルバム「アローン・アローン・アンド・アローン」が大きな注目を集め“ヒノテル”ブームを巻き起こした。1975年にはアメリカ・ニューヨークに渡り、1989年には日本人として初めてジャズの名門レーベル・Blue Note Recordsと契約。 近年はチャリティー活動や後進の指導にも情熱を注ぎ、個展や画集の出版など絵画の分野でも活躍が著しい。唯一無二のオリジナリティと芸術性の高さを誇る日本を代表する国際的アーティストである。