「3カ月なら待てます」っていう人は多いですね

──ちなみに2012年12月で活動を休止するというのも、以前から決めてたんですか？

櫻井　いや、それに関しては思いも寄らなかった部分もあって。メンバー同士の仲が悪いわけではないし、バンドの活動自体はむしろ好調なんですよ。じゃあなんで止めるのか？ と言えば、運営の体制の問題なんですよね。これまでも紆余曲折あったんですが、今は一緒に活動していける仲間や味方が少ない状態なんです、正直言って。このタイミングで活動を止めて、運営面をしっかり強化しておかないと、この先、思いがけないところで息切れしちゃうことにもなっちゃうんじゃないかって。僕らとしても、もっと大きい会場で、もっともっと大勢の人たちに自分たちのロックを聴かせたいという気持ちがありますからね。さらに高みを目指すためには、一度勇気を振り絞ることも必要じゃないか、と。

──なるほど。とても明確な理由だと思いますが、ファンの皆さんの反応はどうでした？

櫻井　10月8日のファンクラブ限定ライブで発表したんですけど、かなりリアクションがありましたねえ。神妙な面持ちで発表しちゃいかんと思ってたから、ものすごく盛り上がる定番曲とものすごく盛り上がる定番曲の間でサラッと言ったんです、「活動を止めます！」って。そしたら、空気がガラッと変わっちゃって。

村田　そうそう（笑）。俺が前にいたら、耐えられなかったかも。

櫻井　それまで「楽しいか？ おまえら！」とか言って、ウワーッと盛り上がってましたからね（笑）。「止めます」って言った瞬間からすすり泣く声が聞こえてきて、呼応するように泣き声が大きくなって。「泣くんじゃない、おまえら」って怒っちゃいましたから。ただ、ビックリして泣いてる人も多かったと思うんですよ。

村田　うん。ホッとした部分もあったんですけどね、俺は。発表するまではドキドキしたけど、言ってしまったあとは肩の荷が降りた感じもあって。

櫻井　ずっと「どこで言おうかな」って考えてたんですけど、結局、アンコールのときになっちゃったんですよ。ここで言わないと、よくわからないことになっちゃうなって……。ライブを通して「これだけ盛り上がってくれるファンがいるんだから、大丈夫だ」っていう確信も持てたし、こちらとしても「事情は言えないけど、わかってくれ」ということではないですからね。今日、ここで話させてもらったようなことをきちんと説明して、最後はみんな深く頷いてくれて。その後もメールやお便りでいろんな声が届いてますけど、結構応援モードというか、ちゃんと理解を示してくれてるんですよ。まあ、人によって物差しが違うのもしょうがないんですけどね。「3カ月なら待てます」という人もいるし。

村田　「3カ月」って人は多いね。

──それって、「それ以上は待たせないでください」という意思表示でもあるんでしょうか？

村田　どうなんでしょうね。

櫻井　……3カ月っていうのは、Raphaelの活動休止からriceが始動するまでの時間なんですよ。

──あ、そこに重ねてるんですね。

櫻井　そう。「それだけなら待てる」っていうことでしょうね。「あんなに辛いことがあったときでさえ、19歳のときの2人はやってくれた。だから、今回も大丈夫だよね」って。

「どうやって休止のことを伝えよう」って考えてるときが一番辛かった

──まずは12月25日の赤坂BLITZですね。休止前の最後のライブをしっかり成功させることが、まずは大事になってくると思うので。

櫻井　そうですね。忘れられなくなるようなライブをやらないと……忘れられちゃったら、復活しても寂しいことになりますから（笑）。毎年クリスマスの時期には、その年のお世話になった方だったり、ご縁のあったアーティストに声をかけさせてもらって、オールスター戦みたいなイベントをやってるんですよ。言ってみれば「rice祭り」なんですが、今年はさらに力を入れているし、そうそうたる面々が参加してくれる予定なので。すごく盛り上がるんじゃないですか。

村田　内容も濃いし、時間も長いし。やれるだけのことを詰め込む日ですからね。

──さらにRaphaelの再演も同時に準備してたんですよね？

櫻井　そうですね（笑）。どっちも僕の仕切りというか、自分でやらないといけないことも結構あるので。ただ、さっきヒロが言ったことと同じで、発表したあとはラクになったんですよね。一旦口にしたら周知の事実になるわけで、もう止まれないじゃないですか。riceにしても、今は赤坂BLITZのライブに向かって進むだけ。そういう意味では、すごくいい感じですよね、今は。

村田　そうだよね。

櫻井　とにかく「どうやって伝えよう」って考えてるときが一番辛かったんですよ。人によって抱えてる思いは違うし、考え方も違う。だからこちらも伝える場所、言葉を慎重に選ばなくちゃいけないな、と……。ホント、それを考えるだけでおなかが痛くなる感じだったんですよ（笑）。それもいい思い出になったし、今は全然違う気分なんですよね。「あとは得意な歌を歌うだけ！」っていう。