Redhair Rosy「turn red」シリーズ完結|Ryosei Yamada(Vo)が赤く熟したバンドの変化を語る

Redhair RosyがEP3部作のラストを飾る「turn red Ⅲ」を配信リリースした。

2024年4月に活動終了したthe McFaddinのメンバーが新たにスタートさせたバンド・Redhair Rosy。前身バンド終了直後に制作がスタートした「turn red」シリーズは、2025年1月リリースの第1弾から約1年かけて赤く熟し、完結した。

音楽ナタリーではRedhair Rosyの作詞作曲を手がけるRyosei Yamada(Vo)にインタビュー。「turn red」シリーズを振り返りながら、熟す過程で芽生えた変化や、その変化が反映された最新作「turn red Ⅲ」について語ってもらった。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 山崎玲士

一緒に歌ってくれるお客さんの姿

──「turn red」3部作の最終作「turn red Ⅲ」が完成しました。このシリーズも、残すは3月27日に控えたワンマンライブのみですね。

長かったような、短かったような。とにかく走り抜けたので、ワンマンも「もう来るのか!」って感じです。レコーディングも自分たちだけでやってるので、マイクを立てるところから試行錯誤しました。何もかもイチからセルフでやっているから融通が利くし、納得いかなければ何回でもやり直せる。だからキリがない(笑)。忙しかったけど、それは自分たちが求めていた忙しさというか。めっちゃ楽しかったし、充実していましたね。

Ryosei Yamada(Vo)

──Redhair Rosy始動時から掲げ続けた「turn red」というフレーズ。改めて、この言葉をテーマにした由来について教えてください。

the McFaddinの活動が終わってからRedhair Rosyが始まるまでの期間をカナダで過ごしていて、ウエストサイドに住んでいた時期に「Rush」のミュージックビデオ撮影という名目でモントリオールに旅行したんですよ。そのMVは、現地の美容師さんに髪の毛を赤く染めてもらうという内容でした。美容師さんの家の庭で髪を染めてもらっている最中に、お隣のおじいちゃんから「ちょっと来い」と声をかけられて。フランス語だったのでよくわからなかったんですけど(笑)、とりあえず行ってみたら、家庭栽培でいろいろ育ててはったんですね。そこで、緑と赤が半々くらいになっているトマトやトウガラシをもらって、それを見たときに「俺みたいやな」と。トマトは赤くなるほど熟しておいしくなるし、トウガラシは辛さがマイルドになる。その様子を、変化していく自分たちに重ねた。それが「turn red」の始まりでした。

──そんなきっかけがあったんですね。

EPは3枚ともシングル集という感じで、コンセプトはあまりないんです。できた曲をリアルタイムでEPに入れていく方針でした。the McFaddinからRedhair Rosyへ変わっていく様子を見せたかったし、前のバンドに甘えることなく、俺らは今変わっている最中だとみんなに伝えたかった。

──改めて3作を振り返ってみて、それぞれどんな作品だったと感じますか?

「turn red Ⅰ」の収録曲の大半は、俺が海外にいたときに、メンバーの顔を見ずに作ったものなんです。それもあってか、パソコンの画面の中で完結しているような印象があります。「turn red Ⅱ」は、日本に帰ってきて、みんなとまた交わるようになってから作った曲が入ってるから、“心の中”って感じがする。今回の「turn red Ⅲ」はすごくリアル。自分たちが実際に触れている空気みたいなものが詰まっているなと思います。あと、ライブのセットリストを意識して作るようになりました。例えば楽曲がボールだとしたら、今まではそれをお客さんにぶつけて帰るようなライブをやっていたんですよ。そもそも理解とか求めてなかったし、売れるか売れへんかは別にどうでもよかった。自分が作った曲を披露する機会があって、一緒に演奏してくれるメンバーがいて、爆発さえできれば、今までの自分は満足やったんです。だけど最近は、お客さんとのキャッチボールを求めるようになってきていて。

──何か変化のきっかけがあったのでしょうか?

俺が書いたリリックを覚えてきて一緒に歌ってくれるお客さんの姿を見たときに、「ああ、俺も好きなアーティストのライブに行ったときってこうだったかも」と思って。自分のリリックが、お客さんの声で返ってくる喜び。そういうものをちゃんと受け取れるようになったんです。今の世の中は不安定だからこそ、ライブハウスでのなんてことのないやりとりをすごく大切に思えた。照明の具合もあるから、ステージからお客さんの目を見るのはけっこう難しいんですけど、最近はそれでもがんばって「俺と一緒に口動かしてるやつ、いるかな?」と探したり、「後ろの人はどんな気持ちで聴いてるのかな?」「ノれてるかな?」とみんなの姿を見ようとしたりしています。そういうときに「自分、大人になったな」と感じますね(笑)。

Ryosei Yamada(Vo)

しょうもない話ができる喜び

──EPの1曲目「I'm here if you need to talk」には、Ryoseiさんのマインドの変化が色濃く表れていますね。

そうですね。この曲では「みんなとキャッチボールできたらいいな」という思いから一緒に叫べるポイントを作りました。「ぜんぶどうでもいいよ」というリリックの部分です。普段生活していると、どうでもよくないことがたくさんあるじゃないですか。ニュースやSNSを見ながら「本当はこうしなきゃアカン」とか「こういうことはしないほうがいい」と思うこともあるし、「明日は仕事や」みたいなことも考える。モヤモヤすることもある。どうでもよくないことも多い世の中で「全部どうでもいい」なんてなかなか言えない。だけどこの曲を聴いて「なんかどうでもいいって言ってるやつがいるな」と思うことで心がちょっと軽くなるかもしれないし、ライブでメロディに乗せてみんなで歌っちゃえば、その瞬間はとても自由になれると思う。そういう喜びをみんなと共有したかったんです。

──「ぜんぶどうでもいいよ」の直前にある「Tell me about your dream last night」という歌詞も印象的でした。

昨日見た夢の話って、一番どうでもいいじゃないですか。結論とかないし、なんの生産性もない。でも、しょうもない話ができる喜びってあると思うし……極端な話、ミサイルが飛んできたらそんな話をしている場合じゃなくなりますからね。

──確かに。平和な証というか。

この前、お客さんとなんのオチもない話をして、すごくうれしかったんですよ。今回のEPにも入っている「Radio before school」という曲のリリックの1行目が「そろりそろり」なんですけど、その人から「僕ずっと“slowly slowly”だと聴き間違えてました」と言われて。そこから「もしかして、“そろり”の語源は“slowly”から来てるの?」「んなわけないか」みたいな会話をしたんですよ。それが俺には最高の瞬間で。こういう雑談って、会社とかではきっと無駄話って言われますよね。だけどその無駄が大事やと最近気付いたんです。

Ryosei Yamada(Vo)

──最近とは、具体的にいつ頃ですか?

友達が死んじゃったときですね。そいつと交わしてきた会話を振り返ってみたら、全部どうでもいい内容だったんですよ。だけど話していたその瞬間はめっちゃ楽しかったし、その友達はデザイン面でバンドに関わってくれていた人だったので、しょうもない会話がきっかけで生まれたものもありました。そのどうでもいい話が、俺にとっては、とても大切な思い出になっていて。

──そういう会話が、今の時代は失われていると感じますか?

そうですね。なんでなんやろ……。みんな貧乏だからじゃないですか? 俺も貧乏だから、「そんなことしてる暇があったら転売できるもん探してるわ」みたいな気持ちもわかるんですよ。みんな自分のことでいっぱいいっぱいというか。「8abyrousa」で「たまってくるだけほしい物リスト もうクリスマスは来ないでしょ」とか「貯めた金 老いるために 使うだけ?」と歌っているけど、これは余裕のない人たちを非難したいわけじゃなくて、自分もその1人やと思ってます。僕はそんなにできた人間じゃないし、人にとやかく言える立場ではない。だからこそ会話できる気がするし、「みんなと一緒や」と伝えたいんです。俺は自分をカッコよく見せるためにステージに立っているだけで、上から物を言ったり、説教したりしたいわけじゃない。ライブのときはよくフロアに行ってお客さんと遊んでるんですけど、そんな感じで、みんなと同じ目線に立っているつもりです。