デビューから「コナン」と歩む高校生シンガーRainy。|もっとたくさんの人に自分の音楽を届けたい!

Rainy。は2022年4月、「名探偵コナン」の人気キャラクター・安室透を主人公にしたスピンオフアニメ「名探偵コナン ゼロの日常」のエンディング主題歌「Find the truth」でデビューを果たした現役高校生シンガー。デビュー曲のミュージックビデオがYouTubeで総再生回数190万回を超えるなど、活動3年目ながら着実に人気を集めている。

2023年開催の「Animelo Summer Live 2023 -AXEL-」では、満員のさいたまスーパーアリーナにて“アニサマ史上最年少ソロ歌手”として圧倒的な歌声を披露。以来、アニメ、ゲーム、ドラマなどさまざまなタイアップ楽曲を届けてきた彼女が、現在放送中のテレビアニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマ「But ノーラヴ」をリリースする。

ダンサブルかつスピード感あふれるこの楽曲について、「自己愛をテーマに歌った」と語るRainy。は、「名探偵コナン」の世界観を大切にしながら、歌詞に込められたメッセージを自分自身にも重ねて歌い上げている。歌手活動のみならず、環境問題や社会活動にも積極的に関わりながら表現者としての道を模索し、日々成長し続ける彼女の“今”の思いに迫った。

取材・文 / 黒田隆憲

いろんな国の方が観てくれる

──Rainy。さんが高校入学と同時に福岡から上京して、そろそろ1年が経ちます。どのような変化を感じていますか?

デビューからずっと走り続けているような感覚なのですが、毎週のようにスタジオに入ってレコーディングをしたり、たくさんの楽曲に関わることができたりするのは、本当に幸せなことだと感じています。

──東京での生活はやはり福岡とは違いますか?

全然違いますね。東京はなんでもそろっていて、刺激にあふれた街だなと感じます。一番違いを感じたのは食べ物の味かもしれません。九州の醤油や出汁は少し甘めなので、東京で漬物を食べたときに「辛っ!」って驚きました(笑)。もちろん、事務所が近くなったことでボイストレーニングやダンスレッスンの時間が増え、TikTokでのダンスチャレンジも頻繁に投稿できるようになったのは、上京してよかったことの1つですね。

──仕事の現場が増え、たくさんの方と接する機会も増えたと思います。

そうですね。例えばラジオ番組やイベント出演など、さまざまな現場での振る舞い方やコミュニケーションの仕方などを自然と学べている気がします。高校生のうちから多くの大人の方と話をする機会があるのは、本当に恵まれているなと。実を言うと、私は初対面がちょっと苦手なんです。話すことは好きなんですけど、最初のひと言をミスしちゃったり、「もう少し丁寧に話すべきだったかな」と、あとから反省したりすることもあって。相手へのリスペクトを忘れずに接する姿勢を、マネージャーさんやスタッフさんの振る舞いから学んでいるところです。

Rainy。

──仕事をしながらの学業との両立、大変じゃないですか?

テスト前は特に大変です(笑)。スケジュール管理が苦手なので、時間の使い方は今後の課題ですね。勉強は自分でやるしかないので、朝起きたらまず勉強して、そのあとにSNSをチェックするなど、できるだけ効率的に時間を使うように意識しています。移動中の電車の中や空き時間を活用することも多いですね。

──ちなみに、得意な教科は?

英語と公共、あとは国語かな。言語を学ぶのが好きで、最近は韓国語と中国語を勉強中です。

──すごい。さまざまな国の言語をどうやって身に付けているんですか?

例えば海外ドラマを観たり、外国語がネイティブなYouTuberさんの動画を観たりすることでしょうか。最初は日本語字幕で意味を確認して、そのあと中国映画なら中国語字幕に切り替え、単語の発音を確認します。それをシャドーイングしながら覚えていく感じですね。耳から入ると覚えやすいので、ドラマのキャラクターが言ったセリフを、モノマネのように口に出して練習することが大事なんです。最近、中国人の友達に「発音がすごく自然だね」と言われて、ちょっとうれしかったです(笑)。

──最終的には海外での活動も視野に入れての語学勉強なんですか?

はい。海外、特にアジア圏での活動を視野に入れて、中国語や韓国語を学んでいます。インスタライブをやっていると、英語のコメントはもちろん、インドネシアの方からもコメントが来たりして、本当にいろんな国の方が観てくれていることに気付くんです。それもあって、もっといろんな言語に触れたいという気持ちが年々強くなっていますね。

──いろんな言語に触れると、改めて日本語の美しさや表現の豊かさに気付くことはありますか?

たくさんあります! 日本語は形容詞の種類が多かったり、一人称のバリエーションが豊富だったりして、本当に表現が奥深い言語だなと思います。漢字とひらがなが組み合わさっているのも美しいし、字がきれいな人が書く日本語の文章を見たりしても、「日本語って素敵だな」と改めて感じます。もともと言葉はすごく好きで、本を読むのも大好きなんですよ。この前初めて綾辻行人先生の「十角館の殺人」を読んだんですが、あまりにも面白すぎて全シリーズをコンプリートしました。図書館で本を探して回るのも好きで、上京してからもたまに図書館に行って本を借りたりしていますね。

──充実した日々を過ごしているのですね。逆に大変だったことはありますか?

ずっとつらいと感じていることはないんですけど、自主練がうまくいかなかった日とかに急に不安になることはたまにあります。トレーニングは大好きなのですが、その日やろうとしていた課題がうまくこなせず、「今日の時間の使い方、本当に最悪だったな」と思うと、帰りの電車の中ですごく落ち込んでしまいますね。基本的には寝たら忘れるタイプなんですけど(笑)。

コナンらしさを考察

──ではここから新曲についてお聞きします。「But ノーラヴ」はテレビアニメ「名探偵コナン」の新オープニングテーマとして⾳楽プロデューサー要⽥健さんが書き下ろした楽曲ですが、初めて聴いたときの印象は?

とにかくスピード感がすごいなと。最初は「But ノーラヴ……? どういう意味だろう?」と思いましたが、歌詞を読んでいくうちに、サビの「Iʼm 16 But ノーラヴ もっともっと強くなる そして⾃分の⼒で掴み取れ!」というフレーズが印象的で。ラブソングではないけれど、特別なメッセージが込められた楽曲なんだな、と感じました。「But I … no your love But I know your true love」というフレーズも、恋愛だけでなく、さまざまな形の愛を知ることの大切さを伝えているんだなと。

──歌詞の中で「コナンらしさ」を感じた部分は?

「恋の真実も、嘘も全て 駆け引きしようか」や「短絡的な論理は、振り払って 見極めてゆけ」というフレーズには、コナンの謎解き要素も感じられるなと思いました。それに、「曖昧な優しさで、君を傷付けたくない」という歌詞は、私の勝手な考えなんですけど、(工藤)新一くんがコナンとして生きている今の状況にすごくリンクしている気がするんです。新一くんは、コナンの姿のままで(毛利)蘭ちゃんに本当のことを言えないじゃないですか。そんな新一くんの葛藤をこの歌詞の中で感じられるなと思ってキュンキュンしましたね(笑)。

──その考察のうえで、自分なりにどう歌おうと思いましたか?

最初に考えたのは、「自己愛」ですね。「今はまだ小さな 光宿した⼼に」というフレーズなど、自分に対する“愛”を大切にしながら歌おうと。そして、特にお気に入りなのが2番のサビの「“いつの日か”なんてもの 頼りにしてちゃいけない」というところ。私自身、やらなきゃいけないことをつい先延ばしにしてしまう癖があって(笑)。特にきつい自主練はそうなりがちだったのですが、この曲を歌うことで「今やらなくてどうする!」と自分に言い聞かせられるようになりました。

──ミュージックビデオはコナンの世界観とはまた違ったテイストですよね。

はい。衣装を何度も着替えて撮影しました。今回はダンスシーンが多くて、息が上がってしまって(笑)。「もっと体力つけなきゃ!」と思いました。スクールバスの上に乗ったり、バスケットコートで寝そべったり、コンテナの間をガラケーを持って歩いたり。レトロな雰囲気の中にさまざまな仕掛けをちりばめた映像で、何度観ても新しい発見があると思うのでたくさん観てほしいです。

ザ・恋してます!な曲

──カップリング曲「Why? Why?」はどんな思いで歌いましたか?

「But ノーラヴ」は複雑な感情が入り混じった曲ですが、「Why? Why?」は「ザ・恋してます!」という感じのかわいらしい曲なんです。なので、友達の恋バナや自分が感じたキュンキュンエピソードを思い出しながら、甘酸っぱい気持ちをダイレクトに届けられるよう意識して歌いました。特に「Why? Why? 切なくて 息もできないくらいよ」というフレーズがすごく印象的で。ワイワイちゃん……と勝手に名付けちゃいましたが(笑)、彼女は本当に相手のことが大好きなんだろうなっていうのが伝わってきます。「⾔えないままで 流れてく Tell me why」とか、ちょっと切なくて素直になれない女の子の気持ちが表れていて、本当に甘酸っぱくてキュンキュンする曲になっていると思います。