ナタリー PowerPush - Prague

気鋭のロックバンドが描く「刹那の美学」とは

3人ともノーマルな発想やセンスじゃない

──1曲1曲のイメージについても聞かせてください。まず「仇花」はどうですか?

鈴木 「仇花」ってすごくストイックな曲だと思っていて。鉄の花束のような感じです。思いっきり高く飛ぶ前のバネのようなイメージがありますね。

──「サーカスライフ」はどうでしょう?

金野 花束の中に風船が混ざってるような感じですかね。ファニーで、カラフルなイメージ。サーカスという言葉が強いから、それにしか思えない。

──「夢人」は?

鈴木 僕のイメージでは、一輪の花のイメージなんです。

──「手に触れて」にも、そういう感じはありますね。

鈴木 そうですね。質量は同じだと思います。この曲も、花一輪という感じはしますね。

──では、最後の「ナイトフライト」は? このミニアルバムの中でもすごく印象的な曲ですが。

鈴木 この曲はジャケットの花束を表すようなイメージですね。赤いバラが飛び散っている、そういう感じ。

──Pragueのやっていることは、単純にウェルメイドなポップではないと思うんです。そういう意味でも、花束が飛び散っているというジャケットのイメージは、バンドのアイデンティティ、やろうとしていることとつながるものがあるんじゃないかと思うんですけれども。そこはどうですか?

金野 一筋縄では行かないところというのは、絶対ありますね。花束をただ花束として表現しない。そこがアイデンティティそのものなので。「花束」っていう言葉に決まったときに、まず「ジャケット写真を造花にしようか」という発想が生まれたんです。その時点で3人ともノーマルな発想やセンスじゃない。そういうところから逃れられない感じはしましたね。

鈴木 うん、逃れられない。

金野 いい意味で諦めがついたかな(笑)。

刹那の一瞬が、一番美しい

──なるほど。そういう意味でもひねくれているところはある、と。

鈴木 でも、ただひねくれているわけじゃなくて、僕らにしか見えない美しいものをちゃんと描こうとした。結果的にそうなったのはすごくいいことだと思います。僕らが「この曲いいね!」って思う瞬間って、すごく刹那なんです。それをちゃんと形にしようとするのが僕らのやること。その一瞬が、一番美しい。ジャケットでも、その“一瞬でしかないけれど美しい風景”というのを、ちゃんと表現できたと思います。

──Pragueにとっての「わかりやすさ」って、最大公約数の発想を自分の個性にまぶせたりすることじゃないと思うんですよ。誰にでもわかるものを目指すと、逆に、誰にも伝わらないものになる。そのかわり、今言ったような自分たちの感じる美しさを凝縮して濃くすると、それがきっちり伝わるものになる。僕はそういうものが「わかりやすさ」だと思うんですよ。そういう意味で今作はPragueの美学を「凝縮した」というイメージはあるんですけれども。

鈴木 表現を濃くしたっていうのは、間違いなくありますね。結果としてそうなったのかもしれないですけれども。自分らがいいと思うもの、美しいと思うものを、みんなに知ってもらいたい。その1つ1つをちゃんと濃くしていった結果、僕らにとってレンジが広いものができたと思っています。

──わかりました。今回のミニアルバムを経て、バンドの次も見えていますか?

鈴木 見えてますね。「何かを届ける」という力はつけられたので、今度はどういうものをどういう形で届けるか、どういう風景を見せようかというモードに入ってます。曲もたくさんできてるし。Pragueはどんどん周りの風景を作れるようになってきてると思います。「こういう風景の場所を歩いてると聴きたくなる」というような曲がたくさん生まれてますね。

ミニアルバム「花束」 / 2011年5月11日発売 / 1575円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1773

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CD収録曲
  1. 仇花
  2. サーカスライフ
  3. 夢人
  4. 手に触れて
  5. ナイトフライト
Prague(ぷらは)

鈴木雄太(Vo,G)、伊東賢佑(Dr)、金野倫仁(B)による関東出身のスリーピースバンド。同じ高校で3年間同じクラス、軽音楽部、プライベートも一緒にいた腐れ縁の鈴木雄太と伊東賢佑の2人が、同じ音楽専門学校に進み、2006年に金野倫仁と出会って結成。自主制作盤を2枚出したところでレコード会社の目にとまる。2009年9月9日シングル「Slow Down」でキューンレコードよりメジャーデビュー。2010年7月には1stアルバム「Perspective」をリリースし、独特の音楽性と高い演奏力で大きな注目を集めている。