ハイレゾ音源を付ける理由
──今作の初回生産分にはハイレゾ音源を収録したDVD-ROMが付属します。前作「a new philosophy」にはハイレゾ音源のダウンロードコードが付いていましたが、前回の反響はどうでしたか?
岡田 前作ではけっこうな数の方がダウンロードをしてくださったみたいで、Twitterを見ていて「ピロカルピンでハイレゾが好きになってハマった」っていう意見もありました。それはとてもうれしいことですし、「リスナーがハイレゾを導入するきっかけなればいいな」という目論見通りでもあります。
──今作のハイレゾ音源はどういった意図で?
岡田 前回やったからというのももちろんあるんですけど、今回は特にハイレゾで聴く意味のある作品ができたと思うんです。というのも今作はハイレゾが得意とする高音域がすごく出ていたり残響が響いていたりするので。自分でハイレゾ版の音を聴いたときに「ヤバい!」って思いました。
──松木さんはいかがでした?
松木 実は私はまだ自宅にハイレゾを聴く環境が整っていないんですけど、ミックスの段階ではハイレゾの状態で聴いていて、やはり音がまったく違いました。
──お話を伺って、今回のハイレゾはさすがに聴いてみたいなと思いました。
岡田 松木を含め「ハイレゾって敷居が高いな」と感じる人もいると思うんですが、最近のPCやスマートフォンだとデフォルトで対応している製品もけっこうあるんです。その辺もピロカルピンのサイトでケアしていけたらなと思っているところですね。
──今後の作品にもハイレゾ音源のデータを期待してしまいますね。
松木 そうですね、もうやめられないですね(笑)。
岡田 それだけ期待されるのであればこちらも出す意味がありますね。それにCDというものにこだわる活動はもう古いと思うんです。ただ流通をかけるにあたってはCDが主流になっているじゃないですか。だからといって「CDよりもっといい音源がいっぱいあるのになんでCD音源を買ってもらわなきゃいけないんだ?」っていう疑問が前回からあって。であれば「モノとしてCDは売るけども、そこにハイレゾ音源も入れてあげようよ」ということですね。ハイレゾなどが出てくる前はCDが一番音質も良くて、それが店舗で売られていたわけですが、今はCDが一番音質がいいわけでもないのに、店舗で売られるのは基本的にはCDという微妙な状況じゃないですか。音質もよくすぐ入手できるダウンロードなどで音楽を買っている人に対してCDを買ってもらう動機付けが何もない状況なんですね。そういう状況は是正したいと思っています。
──なるほど。
岡田 それと、今作はCD用とハイレゾ用に別のマスタリングを行っていますので、ぜひ両方共聴いてほしいなと思います。例えば「ピノキオ」という楽曲はCDとハイレゾで印象がけっこう変わるかもしれません。
扉の向こう
──今作のジャケットには扉が描かれています。ピロカルピンはこの扉を開けて、これからどこへ向かうのでしょうか?
松木 今回で8枚目のアルバムですが、8枚目でありながら制作中に新しい世界が見えた気がします。なので、そこで見えた新しい世界に向けて、これからももっと制作を続けていきたいと思っています。
岡田 今までの作品は発表後に満足できた反面、後悔や反省点が残ることが多かったんです。もちろんその都度後悔や反省を次の作品にフィードバックさせてきましたが、「ノームの世界」に関しては非常に満足感が強くて、「自分たちのやりたかったのはこれだったのか。ようやくピロカルピンはスタート地点に立てたんだな」って思ったんですね。
松木 そうですね。音楽の世界は奥が深くて、「まだまだ知らない世界があるんじゃないかな」って感じましたね。
──そして6月からは東名阪でワンマンツアーがありますね。
松木 今回のアルバムがとても世界観があるものなので、今この世界観をライブでどう表現しようかなって悩んでいるところではあります。音源で「次元を超えた」と感じられたように、ライブも1つ次元を超えたものにしたいなと思っています。
岡田 楽しみにしていてください。
次のページ »
ピロカルピン×muevo 中山顕洋氏・田中健司氏 座談会
- ピロカルピン「ノームの世界」
- 2017年5月10日発売 / miracle oasis music
-
[CD+DVD-ROM]
2160円 / DDCZ-2155
- CD収録曲
-
- 精霊の宴
- 朝
- 赤色のダンサー
- ピノキオ
- 流星群
- 小人の世界
- グローイングローイン
- 風立ちぬ
- DVD-ROM(※初回生産分のみ)
- アルバム全曲分のハイレゾ音源データ(96kHz / 24bit)
- ピロカルピン「『ノームの世界』リリースワンマンツアー『small small world!!』」
-
- 2017年6月3日(土)東京都 下北沢CLUB Que
- 2017年6月10日(土)大阪府 ROCKTOWN
- 2017年6月11日(日)愛知県 ell.SIZE
- ピロカルピン
- 松木智恵子(Vo, G)と岡田慎二郎(G)によるロックバンド。2003年に松木によって結成され、2009年7月にタワーレコード限定シングル「人間進化論」とHMV限定シングル「京都」を同時発売しインディーズデビュー。2010年11月から2カ月連続でシングル「存在証明」「終焉間際のシンポジウム」を発売し、繊細な世界観とダイナミックなサウンドで話題を集める。2012年5月にはアルバム「蜃気楼」でユニバーサルJよりメジャーデビュー。2014年12月に自主レーベル「miracle oasis music」を設立し、翌2015年5月にアルバム「a new philosophy」をリリース。2016年8月から10月にかけてアルバム制作のクラウドファンディングを実施し、176%の達成率で大成功に。この資金をもとに制作されたニューアルバム「ノームの世界」を2017年5月10日に発表した。