言いたいことがストレートに出た

──歌詞も全体的にわかりやすく前向きな言葉が並んでるなという印象を受けました。タイアップを意識したからなんでしょうか？

松木　歌詞に関してはタイアップを意識したつもりは全然なくて。歌詞を付けた時点ではメジャーレーベルとの契約が切れていたので、タイアップのことはまったく考えずに作ってるんですけど、メロディがそういう観念に基づいて作られているので、自然とわかりやすい歌詞が合うようになっているのかなと。メロディと歌詞がそんなふうにリンクしているというのは新発見でした！

岡田　昔の松木は文学的なリリックを埋め込みたい、ちょっと難しくしたいっていう思考があって。その流れから、松木のイメージ作りじゃないですけど、スタッフと話し合って直接的な表現をできるだけ避けるようにしていたんですよ。でも今は歌詞について言う人がいなくなったので、そういうところで言いたいことがストレートに反映されてるんじゃないかと思います。今回はよくも悪くも、松木から出たものがそのまま反映されていますね。

──そのほかに松木さんにとって印象的な曲はありますか？

松木　「南十字星」はずっとライブで演奏していた曲なんですけど、ライブでお客さんが歌ったりする曲が欲しいなと思って作った曲で。ライブで披露したところ、お客さんからの評判がよかったので音源化しました。ライブで先に演奏していたものを音源化するというのはひさしぶりでしたね。

──確かにライブで盛り上がりそうな曲ですね。

松木　あと「BE FREE」。去年の5月に結成10周年記念ライブをやったんですけど、その時点でメジャーから離れることは決まっていて。そのライブで、箱から逃げる鳥をイラストにして「BE FREE」って書いたTシャツを販売したんです。そのときの心境が元になって、この曲の歌詞につながっています。

承認されたい欲求からの解放

──鳥かごといえば、今作のジャケットも鳥かごですね。これまでは一貫してイラストレーターの吉田利一さんによる点描画のジャケットでしたが、今回は初めて写真です。

松木　自主レーベルなので、まずは心機一転、新しい姿勢を打ち出したいと思いまして。

岡田　僕らも吉田さんの点描画を気に入ってることは間違いないんですけど、吉田さんの点描画＝ピロカルピンではないんですよね。それがずっと気になっていて。イコールじゃないよっていうのを主張したかったので、このタイミングで変えました。

──ジャケットの鳥かごは空っぽで。“鳥かごから出ていく”っていうのがアルバムのテーマであったりもするんでしょうか？

松木　自主に戻って思ったのは、私は周りからの承認を求めていたんだなってことで。自分が音楽を作ったり、バンドをやってることに対して、例えばメジャーと契約をしてるとかお客さんがたくさんついてるとかそういう部分で「やっていいんだ」と思えていたというか。それがバンドの士気につながってる部分もどうしてもあったんですよ。インディーズデビューが決まって、メジャーデビューが決まってっていうタイミングでみんなのやる気が上がって。でも今回、自主に戻ってそういう部分から解放されたいっていう気持ちがあることに気付いたんです。自分たちが自分たちに期待をして、自分たちで認めるっていうのがすごく大事だなって思って。そのイメージが、鳥かごにつながっています。