ナタリー PowerPush - PINC INC
CUTEでハイテンションなポップ・パンクを武器に2009年の音楽シーンを“PINC”色に染める
2008年3月19日にシングル「デンジャラス・ラブ」でメジャーデビューを果たした、男女4人組バンドPINC INC。デビューからわずか7カ月の間に4枚のシングルを立て続けに発表し、着実に成長を重ねてきた彼女たちがいよいよ1stアルバム「もっとキミ色に染まりたい」を1月28日にリリースする。
ナタリーではPINC INCの紅一点、碧井椿(Vo)にインタビューを敢行。アマチュア時代にバンド経験が一切ない彼女のこれまでの経歴や、アルバムの魅力、さらには今後の目標など、あれこれ語ってもらった。
取材・文/西廣智一
高校の進路相談で「受験はしません、歌手になります」
——音楽との出会いっていつ頃か覚えてますか?
小学生の頃にSPEEDさんや安室奈美恵さんをテレビで観て、私もダンスをやりたいと思ってダンススクールに通い始めました。それで、中学に入ってからボーカルレッスンに通い始めたんです。
——歌を習うようになってから、プロを目指したいと思うようになったんですか?
そのスクールの発表会やイベント、歌のコンテストに出たりしたんですけど、コンテストで賞をもらったら嬉しくなって。それで、もっと歌いたいと思ったのがきっかけです。
——当時はどんな曲を歌っていたんですか?
中島美嘉さんとかですね。いくつかオーディションにも受かって、高校の進路相談で「受験はしません、歌手になります」と言って。それで時間をかけて考えて、今の事務所に決めたんです。
——かっこいいですね。高校の先生は碧井さんの歌手宣言に驚いたんじゃないですか?
中学の頃からそういう音楽活動をしていたから、先生も知っていて応援してくれてたんですよ。
——そのときはバンドでの活動はまったく頭の中になかったんですか?
友達がバンドを組んでライブをしてたんで、それをよく観に行ってました。だから興味はあったんですけど、当時の私は単純に“歌いたい”という気持ちのほうが強かったし、バンドってやっぱり一人じゃできないから難しいなあと思っていました。だから、まさか本当に自分がバンドを組むことになるとは思わなかったですね。
——高校を卒業した後は、デビューまでひたすらレッスンの日々だったんですか?
レッスンをしたり、詞を書いたり。私、そのとき思いついた言葉をずっとメモ帳に残すようにしてたんですけど、作詞という形で書き始めたのは2年くらい前からなんです。
——じゃあ本当に最近のことなんですね。昔書き留めていた言葉は、現在作詞する上で参考になったりしますか?
たまにありますよ。作詞するときに昔のノートを見て、「あのときはこういうこと考えてたんや」と思ったり。それを参考に作詞することもあります。
——今回のアルバムには碧井さんが作曲を手がけた楽曲もいくつかありますよね。作詞と同じように、作曲も最近始めたんですか?
去年の夏くらいからですね。もともと楽器も習ってなかったし、楽譜も読めないんですよ。でもギターを始めて、コードが弾けるようになってから、鼻歌で作曲するようになったんです。
——それじゃあ、レコーディングして完成した曲を聴いたときは、感慨深いものがあったんじゃないですか。
そうですね。鼻歌で作ったデモテープからちゃんとアレンジされて、ひとつの作品になっていたから、最初にできたものを聴いたときは「うわあ」って感じで、本当にビックリしましたよ。
歌詞でつまずいたことは今まで一度もない
——ところで、PINC INCというバンド名はどうやって決めたんですか?
もともと私、ピンクが大好きなんです。それで、みんなであーだこーだと名前を決めてるときに、ふっと机の上を見たら、ピンクのインクがあったんですよね。
——ああ(笑)。バンドのイメージカラーもピンクで、ギターもピンクですもんね。
それで「PINK INK」にしようと。でも「K」やったらなんかカクカクしてる感じがするから、可愛くするために「PINC INC」にしたんです。
——まったく想定していなかったバンド活動を始めて、ギターや作詞も始めて、今までにないチャレンジの連続ですよね。
はい。自分で作詞するようになってから、最近では他人が書いた歌詞はあまり歌いたくないかなと思うようになって。
——やっぱり全然違います?
違いますね。昔はカバー曲を歌ってたけど、今は自分の思ったことを自分の言葉でダイレクトに伝えられるのが大きいです。
——詞を書くのが大変だとか、壁にぶつかったりすることはありますか?
大変と思ったことがなくて。デモをもらった時点でパっと思いつくイメージを、そのときの勢いで作詞していくんです。逆に、何日かに分けて詞を書いたりすることができなくて、その日のその何時間かで集中して書かないと、次の日に続きを書こうとしても無理ですね。だって、もう次の日には最初に書き始めたときの気持ちじゃないから。
——なるほど。そういう意味でこのアルバムはロックの初期衝動じゃないですけど、本当にファーストインスピレーションで書いたものが集まった作品なんですね。
はい、全部そうです。だから歌詞でつまずいて、めっちゃ時間がかかったということは今までに一度もないですね。多分書きすぎて煮詰まったときにそうなるかもしれないけど、今のところは大丈夫です。
PINC INC(ぴんくいんく)
碧井椿(Vo, G)を中心に結成された4ピースバンド。2008年2月、後に2ndシングルとしてリリースされる「キミにHUGされていたい」のデモテープが関係者の耳に止まり、デビュー前にもかかわらず、複数のTV番組のテーマソングに抜擢される。
2008年3月、大人気コミックの初ドラマ化作品「ワイルドライフ ~国境なき獣医師団R.E.D.~」のテーマソング「デンジャラス・ラブ」でデビュー。等身大の女の子の気持ちを力強く代弁するボーカル碧井椿の凛としたハイトーンボイスと、キャッチーなメロディ、エレクトロ / エモ / フォーキーなど楽曲ごとにさまざまな要素を取り入れながらも、一貫してキラキラしたスピード感溢れるサウンドを特徴とする。
2008年5月、ヒットメーカー大野愛果とメロコアバンド・MR.ORANGEの森下志音(現Naifu)が楽曲を手がけ、デビュー前のTVオンエアで話題となった2ndシングル「キミにHUGされていたい」をリリース。2008年8月、パンキッシュさを前面に打ち出した3rdシングル「週末大キライ」をリリース。2008年10月、テレビ東京系アニメ「ゴルゴ13」オープニングテーマとして、クールで疾走感溢れる4thシングル「So faraway」をリリース。
デビューから7カ月の間に4枚のシングルをリリースした勢いのまま、2008年11月には上木彩矢が出演する神戸大学六甲祭ライブにオープニングアクトとして出演。数千人の観客の前で堂々としたパフォーマンスを行った。
09年1月28日、デビュー10カ月目にしてついに待望の1stアルバム「もっとキミ色に染まりたい」をリリースする。