PELICAN FANCLUB エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)×牛丸ありさ(yonige)|“SF”と“日常”が重なったとき、そこには何が生まれるのか?

エンドウくんがすごく生き生きしているように見えました

──牛丸さんのささやくような低音域を聴いたとき、個人的には「牛丸さんの声をこう使うのか」という新鮮さを感じました。

エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)

エンドウ 牛丸の低音域というのは、yonigeが去年リリースした「健全な社会」という作品で初めて聴いた一面だったんですけど、それが僕の中ですごくヒットしたんですよ。牛丸の出す低い声には、自分の中にあるフェティシズムをくすぐるものがあるんです。自分が女性だったら、こういう声を出したいなあと思いますね。

牛丸 私自身も「健全な社会」を作ったくらいの時期に、「低い声、思ったよりも自分に合うなあ」と気付くことができて。「アボカド」を出した頃(2015年)やそれよりも前の時期は、私自身、高い声のほうがいいんだろうなあと思っていたし、地元の先輩にも「もっとキー高くしろよ」って言われていたんです。高い声は耳に届きやすいから、キャッチーになりやすいし、ライブ映えもしやすいので。だけど最近、家の中で1人で弾き語りをしながら曲を作ることが増えてきて。家でぼそぼそと歌っていると、自然とキーが低くなっていくんですよ。そのままレコーディングしてみたら、けっこうよくて。「キー低くてもいいんだ」と気付けたのはたまたまだったんですけど、自分に合う歌い方に気付けてよかったですね。

──牛丸さんは、PELICAN FANCLUBの制作現場に入ってみて、何か印象的なことはありましたか?

牛丸 エンドウくんがすごく生き生きしているように見えました。

エンドウ ふふふ。

牛丸ありさ(yonige)

牛丸 私はレコーディング中、けっこう思い詰めてダウナーになりやすいんですけど、エンドウくんは楽しそうで。それが新鮮でした。

エンドウ 僕はレコーディング前に1回どん底に落ちるので、あとは上がるだけなんですよね。だからレコーディング中は解放感があるというか。デカい音で録れるのが単純に楽しいという気持ちです。

──デカい音といえば、ライブで「星座して二人」が聴ける日も楽しみにしています(※取材は8月上旬に実施。その後、ツーマンライブが11月5日に東京・LIQUIDROOMで開催されることが決定した)。

エンドウ タイミングが合ったら共演したいですね。

牛丸 あー、確かに。

エンドウ 同じ舞台の上で「星座して二人」を演奏したいという気持ちはすごくありますね。なので、「期待していてください」と言っておきます。

──ミュージックビデオは山梨県にある廃墟で撮影したんですよね。

エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)

エンドウ はい。歌詞に沿った内容にしたかったので、さっき話したようなことを監督にも共有しつつ、「宇宙と地球を行き来するような、視点がすごく切り替わる映像にしたい」とイメージを伝えて。「星座して二人」という言葉から「正座」を連想する人もいるかもしれないですけど、そういう言葉のちょっとした違和感が、視覚的に展開されていく映像になっていると思います。PELICAN FANCLUB史上一番、映像と音楽がリンクしているような、シュールでギミックの効いた作品なんじゃないかと。

牛丸 でも正座はつらすぎましたね(笑)。トータルで30分くらい正座してたのかな?

エンドウ してましたね。「正座したい」というのは僕らから監督に伝えたんですけど。

牛丸 かったい椅子の上で正座してたので、2人とも、めっちゃ疲れ果てて。

エンドウ うん。いろいろな意味で痺れました(笑)。

他者がいるから平和がある

──シングルの通常盤には「星座して二人 feat. 牛丸ありさ(Kabanagu Remix)」が収録されています。このリミックスは牛丸さんも聴きましたか?

牛丸 聴きました。面白かったですね。私、今までは「リミックスって何のためにあるんだろう?」って思っていたんですよ。

エンドウ あー。僕が今回Kabanaguさんにリミックスしてもらいたいと思ったのは、「想像の外を見たい」と思ったからで。

牛丸 うんうん。

エンドウ 自分が作ったものなのに、形が変わっている。それって自分たちにとってのヒントにもなるし、自分たちの音楽性の1つにもなると思うんですよね。幅が広がるというか。

牛丸 確かに。

エンドウ Kabanaguさんのリミックスを聴いて、作品として美しいものになったなあと思ったし、当然「僕じゃできなかったな」とも思いました。それは牛丸をフィーチャリングで呼んだのと同じような感覚で。

──今話してくださった内容は、もう1つの表題曲「Who are you?」や期間限定盤に収録されているKANA-BOONのカバー「シルエット」も含めた、今回のシングルに通ずるテーマでもあるように感じました。

エンドウ 今回この作品でやりたかったのは、今あるものを壊して、誰かと新しいものを作り上げるということでした。というのも、去年11月にリリースした「ディザイア」というシングルで初めてプロデューサーを迎えて楽曲を制作したんですけど、そこで起きた化学反応は自分の想像を超えたものだったんですよ。「バンドはメンバーだけで完結する」という固定観念を壊すことで自分たちにない引き出しが増えるのならば、そういうことは積極的にやっていきたいというふうに思ったんですね。なので、今回このシングルではフィーチャリングやリミックス、カバーを入れることにしました。

──他者との交わりから新しいものを創造するということは、先ほど話していただいた通り、自身の拡張にもつながる一方、それ以前に「他者を受容しよう」という気持ちがなければできないことかと思いますが、いかがでしょうか?

エンドウ そうですね。今回このシングルで伝えたかったメッセージというのは、「他者を受け入れる」ということなんですよ。僕は存在価値を否定する空気が社会に蔓延していると感じているんですけど、「それはいったいどうなんだ?」と疑問に思うことが日々あって。存在価値がないと言ってしまえばそれまでですが……みんなの暮らしの中身は知らないけど、空から見ればその1つひとつはきれいなんだよと伝えたい。だから「星座して二人」の歌詞も、そして「Who are you?」の歌詞も、「誰かがいることで自分がわかる」ということが1つの軸になっていますね。僕は、他者がいるから平和があると思っているので。そういうことを伝えたかったです。

左から牛丸ありさ(yonige)、エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)。

ライブ情報

PELICAN FANCLUB 2man Live「星座して光」
  • 2021年11月5日(金) 東京都 LIQUIDROOM <出演者> PELICAN FANCLUB / yonige
PELICAN FANCLUB(ペリカンファンクラブ)
PELICAN FANCLUB
エンドウアンリ(Vo, G)、カミヤマリョウタツ(B)、シミズヒロフミ(Dr)からなるスリーピースバンド。シューゲイザー、ドリームポップ、ポストパンクといった海外の音楽シーンとリンクしながら、日本語ロックの系譜にもつながる、洋楽と邦楽のハイブリットな感性を持つ。2018年11月にKi/oon Musicよりメジャーデビュー作「Boys just want to be culture」をリリース。2019年11月にテレビアニメ「Dr.STONE」のオープニングテーマ「三原色」をシングルとして発表し、2020年11月にはテレビアニメ「炎炎ノ消防隊 弐ノ章」のエンディング主題歌を表題曲としたシングル「ディザイア」をリリースした。2021年9月にテレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディングテーマと、牛丸ありさ(yonige)をフィーチャリングゲストに迎えた楽曲を収めた両A面シングル「Who are you? / 星座して二人」をリリース。
yonige(ヨニゲ)
yonige
牛丸ありさ(Vo, G)とごっきん(B, Cho)からなる大阪府寝屋川市出身の2人組バンド。small indies tableの第1弾アーティストとして、2015年8月に初の全国流通盤「Coming Spring」をリリース。2017年9月に1stフルアルバム「girls like girls」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりメジャーデビューした。2019年8月には東京・日本武道館でワンマンライブ「一本」を開催。2020年5月にアルバム「健全な社会」を発表した。2021年8月に新作音源「三千世界」をリリースし、9月からワンマンツアー「三千大千世界ツアー」を開催する。