ナタリー PowerPush - PAGE

「閃光ライオット2011」グランプリ17歳のデビュー作「You topia」

スピードが速すぎて気持ちが追いついてない

──その後すぐ、メジャーレーベルと契約を結ぶことになりますが、契約のオファーを受けたときはどう思いました?

インタビュー写真

そこもそんなに驚かなかったんですよね。担当の人が「メジャーの人が会いたがってるよ」「(淡々と)あー、マジっすか」って。「閃光ライオット」でグランプリを獲った日から常に夢を見てる感じっていうか、霧がかかってる中にずっといるっていう感覚で、何があってもあんまり驚かなくて。

──そもそもメジャーデビューへの憧れはあったんですか?

ありましたね。昔からあったんですよ。ケツメを初めて聴いたときくらいから。彼らのライブ映像を初めて観たときに、自分もこういうステージに立ちたいなって思ってたから。喜びが湧かないというより、スピードが速すぎて気持ちが追いついてないっていう感じなのかもしれないです。

──今回のデビュー曲「You topia」は、中1の頃の片思いをテーマにしているそうですね。

結構実話というか、リアルなことを言ってるんです。でも、最初はこういう曲を書くつもりはなかったんですよ。けど「君に会いたいけど『また今度な』と言ったら感じる温度差」っていうフレーズがまずパッと出てきたんです。それで、「おっ」と思って、そのまま頭の中でサビと、ところどころのラインを作って書き出して。そのフレーズに合うトラックを探そうと思ってiTunesの中にあるトラックを探して、それに合わせて言葉をはめて5時間くらいで書いたんです。

──バース3の同じ母音を続けるところのラップがキャッチーで耳に残りました。

それ、よく言われるんですけど、実はもう面倒くさくなって書いたんですよ。バース2の終わりぐらいから「書くの、だるっ」と思って。それでサボったんです。同じ母音で行っちゃえ、みたいな。

──今回のシングルに収録するにあたり、原曲とトラックを差し替えていますが、仕上がりにはどんな印象を持っていますか?

華やかっていうか、結構疾走感が出たなと思います。歌詞は暗いんですけど、トラックは明るいんで聴きやすいんじゃないかなと。哀愁前向き系な曲になったと思います。

──薄く入ってる女性コーラスがキュートさを出してると思うし、淡くハジける感じがありますよね。恋してるときのウキウキ感が伝わってくる印象があります。

いや、でも、自分の中では思いが叶わなくて気持ちは下がってるんですけどね。自分の理想は振り向いてくれることだけど、でも、相手が振り向かないのはわかってて……でも、あれ、ここでは振り向いてる。あ、ここは夢の中なんだ、っていう曲なので。自分の中では気持ちはダウンなんですよね。デモの時点では暗い曲だったから。

ネガティブなまま前向きな感じのことを歌おう

──2曲目「マナツニミタユメ」は、どんなきっかけで書いた曲ですか?

これは「閃光ライオット」でアルバムを発売しようという話になったときに、ネットに上がってる曲だけのアルバムは嫌だなと思って。何か新曲を入れたいなと思って作った曲です。

──歌詞のテーマは?

テーマは、サビの最後にある「夏の夢が僕の夢をかなえてくれる」っていうこと。夢とか理想を寝るときに見る夢が叶えてくれる、夢の中ならなんでもできる、みたいなテーマです。

──寝てるときに見る夢に現実逃避する、みたいなこと?

そうです。夢への逃避。これも「You topia」と同じ、哀愁前向き系ですね。ひたむき前向き系というか。

──この曲もトラックがリアレンジされて収録されていますね。

色で言ったら灰色っぽくなったかなって。デモのときのイメージは青だったんです。藍色っぽい感じだったんですけど、ちょっと黒みがかかったグレーになったなって。

──3曲目にはMUROさんによる「Monochrome」のリミックスを収録。この曲はどんな思いから作ったんですか?

テーマ的には「マナツニミタユメ」と一緒ですかね。ネガティブというか結構暗いことを言ってるので。

──孤独がテーマと言えそうですね。

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僕、学校で暗い子だったんで。休み時間とか昼休みとか、ずっとひとりで席に座ってたんですね。そういうとき、頭の中に、教室の上から撮ってるカメラに自分が映っていて、自分の席のところだけ暗くなってる、みたいなイメージが浮かんでで。周りには色が付いてるけど、自分のところだけは味気ないというかモノクロだな、みたいな。それを歌詞にしたんです。

──そんな自分の世界をカラフルにしたいという願望はあるんですか?

いやー、それはないと思います。

──モノクロのままでいいってこと?

っていうか、多分、何もしようとしてないんですよ。「なったらいいな」みたいな。

──この曲の歌詞には「昔から虚しいくらいに無関心」っていうフレーズも出てきますよね。

そうですね。いろいろな物事に対して本当に関心がないんで。だから、「なったらいいな」はあるんですけど、そのために行動はしないと思うんですよ。だったら、ネガティブとうまく付き合おう、みたいな。逆にネガティブなまま前向きな感じのことを歌おうっていう。

──「逆さまの感情」という歌詞も出てきますけど、何かしようと思ってる、何か動き出そうと思ってるんだけど、何をしたらいいかわからない、みたいな。そういう心の葛藤はPAGEくんの歌詞に共通してるような気がします。

ああー(と得心)。

──かといって、そんなに焦ってるわけでもないな、とも感じるんですけどね。

うん、焦ってはないですね。

メジャーデビューシングル「You topia」 / 2012年7月18日発売 / 1223円 / Ki/oon Music / KSCL-2069

CD収録曲
  1. You topia
  2. マナツニミタユメ
  3. Monochrome MURO REMIXX
  4. You topia SWG REMIX
PAGE(ぺいじ)

プロフィール写真

1995年生まれ、愛媛県松山市出身のラッパー。小学6年生のときに観たケツメイシのライブDVDに感銘を受け、音楽に目覚める。2008年からリリックを書き始め、2011年1月にマイクとインターフェイスを購入し宅録を開始。直後からニコニコ動画に「ニコラップ」と呼ばれるジャンルのラップを投稿し始める。同時期に10代限定のロックフェスティバル「閃光ライオット2011」に応募し、予選を勝ち上がる。同年9月に東京・日比谷野外大音楽堂で開催された決勝戦で見事グランプリを獲得(当時の名義はPAIGE)。「閃光ライオット」での一連のステージを現在のディレクターに見初められ、2012年7月にKi/oon Musicよりメジャーデビューシングル「You topia」をリリースした。