俺らの場所には誰もいない

──アルバムはバンドの新境地とも言える1曲目「JEALOUS LOVE」から始まります。ファンキーなリフとファットなディスコビートが新鮮ですね。

もともと下北沢のレーベルからデビューしたバンドで、最初にライブしたのは東高円寺のU.F.O.CLUBだったりするんだけど、今はfelicityから出してるんだし、だったらもうちょっと都会の雰囲気を出してみようかってことで。それで電気グルーヴの「Shangri-La」とか、Blurの「Girls and Boys」とか、宇多田ヒカルとかを研究して、でもおとぎ話の4人で演奏したら、結局あんまりそういう感じにはなんなかった（笑）。

──それが逆に面白いですよね。都会的な雰囲気はありつつも、銀座とか六本木のイメージではないというか。

そうなんです。じゃあどこなんですかね？ やっぱ住んでるから中野かな。

──確かに中野はけっこう都会ですけど（笑）。

おとぎ話に本物のアーバンは無理なんで、「JEALOUS LOVE」では逆転の発想で、そういうノリのいい曲を切実なラブソングにしたら面白いかなと思って作ったんです。そういうのしかできないというか、そこが個性だから。

──結果、ちゃんとおとぎ話の音になっていますよね。奇をてらって「新しいビートを導入してみました」みたいなことではなく。

そういうんじゃないですね。そうやって「今回○○に挑戦してみました！」みたいな人ってすごく多いし、そうやって勉強して作った音楽で売れちゃってる人も多いけど、俺はそれが怖くって。だから今回も「がんばってチャレンジした」とかじゃないんです。頭でっかちにならないようにっていうのだけは、けっこう意識してますね。

──無理やりじゃなく、自分たちの中にあるもので作る？

うん、昔は自分がどういう音楽をやりたいのかもわかってなかったし、頭よくないくせに頭でっかちみたいなやり方をしてたこともあったと思うんです。でも10年以上バンドをやってきて、こないだの「CULTURE CLUB」で、その経験を全部ちゃんと詰め込んだアルバムがやっとできた気がして、自分がやってきたことが間違いじゃなかったって思えたんです。だから今、素直に「そもそも何がやりたかったんだっけ」っていうところに立てたというか。

──自分たちの居場所を見つけた？

そうかもしれない。ずっとやってきたけど、結局どこが自分たちの場所なのかわかんなくて。ロックンロールバンドにもなりきれないし、シティポップでもない。「じゃあどこなんだろう」って思ったら「あれ？ 誰もいないのが俺らの場所なんだ」みたいな。そのことに気付いてからはすごく楽に作れるようになった。ラッキーでしたね。どっかのジャンルで無理して売れてなくてよかった。改めて「こんな面白い成長の仕方してるバンド、ほかにいないな」って思うんで。