岡本真夜「singer-songwriter」インタビュー|デビュー30周年に取り戻した自分の歌声 (2/2)

実は作詞が苦手な岡本真夜

──ちなみにストック曲って何曲ぐらいあるんですか?

ちゃんとできているものもあるんですけど、メロディのみの曲が多いですね。歌詞は作るのにどうしても時間かかるので。メロディのみだと100曲以上あると思います。なので、ちょっとずつ小出しに(笑)。

──となると、曲先が多いですか?

私の曲は、ほとんどがそうです。ファンの皆さんは歌詞が先にできるイメージがあるようですけど、作詞は本当に苦手で。毎回歌詞の作業から逃げたくて「できないできない」ってマネージャーに言っています。言葉は難しいですね。私は詞先でメロディを付けることは絶対できないです。2回ぐらいトライしたけど「あ、無理」と思って(笑)。この曲も苦労しましたけど、ウインターソングは大好きなので毎年冬の時期に聴いてもらえるようになったらうれしいですね。

岡本真夜

──「10年目のLove Letter」は岩崎宏美さんに提供した曲のセルフカバーですね。

2018年に宏美さんのアルバム(「PRESENT for you * for me」)に書かせていただきました。この3、4年、自分のライブでも歌っていますが、ちゃんと音源に残したかったので30周年の節目で新たに録りました。宏美さんには2004年に「手紙」という曲を初めて提供させていただいて。「10年目のLove Letter」は、その「手紙」に出てくる男女2人の10年後を描いた曲です。

──2曲をつなぐストーリーがあったんですね。

宏美さんもこの楽曲をすごく気に入ってくださっているそうでうれしく思います。私にとって楽曲提供もアーティストとしての1つの夢で、ありがたいことにデビュー直後からいろんな方にお話をいただきました。こだわりとしては、あげるのがもったいないと思えるものを提供することなので、提供した曲は全部大好きです。自分の分身であり、子供と同じ存在。なので、今回レコーディングできたことがうれしいです。制作順でいくと次は「恋心ウラハラ」ですね。これも「雪に願いを~cherish my love~」と同じ2005年にあった曲で、シングル候補として1回レコーディングしかけていたんですけれども、最終的に違う曲が選ばれて。それからずっと寝ていました(笑)。

──当初から今のようなビッグバンドのアレンジを想定していたんですか?

そうですね。こういうサウンドのイメージもたまに湧いてくるんです。作ろうと思って作れる音じゃないというか。私は基本的に構えるとできない人で、生活の中で気付いたらサビが頭の中で回っている状態。それを録音して仕上げるという流れなんですね。これも急に頭の中に現れました。詞の世界もメロディが引っ張ってきたものです。

岡本真夜

岡本真夜は「最強伝説更新中」

──マイナー系のアップテンポの曲にも真夜さんらしさを感じますが、どなたかに影響を受けているんでしょうか?

「Lastly」もそうですけど、私、学生時代に中森明菜さんがすごく好きだったんです。「ミ・アモーレ」とか「TATTOO」とかカラオケでよく歌っていたので、明菜さんの影響があるのかなって。

──そうだったんですね。この曲は明菜さんにも歌ってほしいです。

明菜さんには以前「Rain」というアルバム曲(2003年リリース「I hope so ~バラード・アルバム~」収録)を書かせていただきました。そのときお会いはできなかったんですけど、お手紙でお礼をいただいて。家宝にしています。

──今後も楽曲で交流ができたらいいですね。これも歌詞は大変でしたか?

これは意外とメロディが引っ張ってくれたので、ギリギリではなかったです。今後ライブで盛り上がりそうな曲なので、4月からのツアーでもどこかで歌おうかなと思います。

──ぜひとも。楽しみにしています。

次に作ったのが「最強伝説更新中」という、ちょっと変わったタイトルですけど今回のアルバムのリード曲です(笑)。

──インパクトがすごいですし、今作の目玉の1つだと思います。

こういう単語もなんとなく出てきちゃうんですよね。あまり深く考えてない(笑)。これもメロディだけ97、8年頃からあって、今回のアルバムに元気な曲も1曲くらいないとなってことで引っ張り出してきて、歌詞を最近書きました(笑)。

──意外です。これこそ詞とメロディが一緒に出てくるタイプの楽曲かなと思っていました。

これは、ギリギリで仕上げました。締切間際になると鬼マネ(マネージャーの愛称)から催促のLINEが毎日来るんです。で、私はいつも寝ているスタンプを送って。

岡本真夜

──(笑)。歌詞はどう書いていきましたか?

これは「OK」というワードが先にはまったので、そこから考えた感じですね。このワードをどう生かそうかという逆算で。歌詞に出てくる“友達”は、私の親友がモデルなんです。私よりちょっと上のお姉さんで、とにかく明るくて最強な人。若い頃は落ち込むことも多かったですが、人生半分過ぎたら本当に自分のやりたいことをやって、細かいことは気にせず開き直るのも大事だし、前を向いてパワーアップしていきたいという気持ちを彼女からいつももらうんです。そういう体験も踏まえつつ、友達でも恋人でも自分が信頼できる人が1人いればこんなに元気に過ごせるよ、ということを聴いてくれた人に伝えたい。とにかく2人でいると笑ってばかりで最高なんです。本当に誰と出会うかで人生変わるんだなって、彼女と一緒にいるとつくづく思います。今のチームもそう。「最強伝説更新中」はすごく明るい曲なので、ドライブ中に聴いたり友達とカラオケで歌ったりして楽しんでもらえるといいなと思っています。もちろんライブでもかなり盛り上がるのではないかと。(頭の上で両手で丸を作り)「OK」って、みんなでやりたい。

──「最強伝説更新中」と書いたキーホルダーやステッカーがあったら欲しいです。

本当ですか? 今ちょうどツアーのグッズを考えているところなので、作ろうかな?

──そしてアルバムの最後を飾る「Promise」。最初にこのウイスパーボイスを聴いたとき、ジェーン・バーキンが頭に思い浮かびました。

ありがとうございます。これも98年にメロディとワンコーラスだけ歌詞を付けたまま寝かせていた曲です。私の4枚目のアルバム「Hello」の最後に「With you」っていうバラードがありまして。石井聖子ちゃんに提供して当時ドラマ「失楽園」のエンディングテーマになった曲なんですけれども、その曲の依頼をいただいたときに「With you」と「Promise」の2曲を作って、結果「With you」が選ばれたんです。なのでこれもやっと世に出せた感がありますね。新たに書いた歌詞は「失楽園」をイメージしたというよりは、切ない世界を意識しました。

──この歌がアルバムの最後に届けられたことで、また新たな真夜さんの一歩が感じられました。

うれしいです。この十何年かは自分が思ったように歌えなかったので、声の出し方が戻ってきた段階で歌入れができてすごくよかったなって思います。ボイトレに行くたびに、ちょっとずつですけど昔の声の出し方ができるようになり、声質も徐々に変わっていくのがわかるから面白いなと。この十何年、歌いづらいところは、地声で出せる音域でもファルセットに逃げていた部分があったんです。「Promise」もファルセットに逃げてしまっていたようなところを地声で出せたので、希望しか感じなくて。マネージャーからは「岡本真夜が戻ってきた」って言われました。生きていればいろんなことがありますけど、無駄なものはないんだなとつくづく思います。今回はミニアルバムで全6曲ですが、いろんなタイプの曲を入れられたので、繰り返し聴いていただけたらうれしいです。

岡本真夜

これからもマイペースで

──4月4日には今作をタイトルに冠したコンサートツアーがスタートします。

初日の会場は高知県四万十市。私の地元から始まります。ライブは単発では開催していましたけど、ツアーはコロナ以降やっていなかったのでひさしぶりです。今回4本ですが、徐々に声も復活しつつあるので、年々本数を増やせていけたらと思っています。

──現時点では、どんな構成を考えていますか?

皆さんのいろんな思い出とともに集大成を意識した選曲に加えて、今回のミニアルバムからの曲を楽しんでほしいなと思っています。そして東京公演はデビュー日であり31周年の始まりの日なので、ほかの会場とは違う何かがあってもいいかなって、ちょっと考えています。

──次の目標も生まれましたか?

はい。今、おかげさまでやる気が復活しているので、チーム間ではまず35周年を目標にいろいろと考えています。基本、体はタフですし、声が完全復活すればもう完璧なので。100%叶うかわからないですけど、95年の声に戻せるように先生も考えて1つひとつ治してくださっているので、期待しつつ楽しんでレッスンを続けたいです。この1年でかなり戻った感覚があって、マネージャーにも知り合いにも「声が明るくなりましたね」って言われたんです。

──今回、こうして元気な真夜さんの声をファンの皆さんに届けられてうれしいです。

待ってくださっているファンがたくさんいたことが、「音楽の日」に出演したことをきっかけにわかって。そういう人たちの思いに応えられるようにがんばっていきたいです。少し前までは歌いたいけど歌えない、来てくれたお客さんに申し訳ない気持ちでずっといたんですが、今は本当に歌いたくてしょうがない。そうそう、30周年で本当に歌手をやめようと思っていたので、数年前に「SUN&MOON」というファンクラブを閉鎖しちゃったんです。でも、ここに来て声も戻りつつあるし、ファンの皆さんも喜んでくださっているので、また近々設立しようかなと思って今、マネージャーと準備しています。

──楽しみですね。

私は私にしかできない世界があるので、これからもマイペースでやっていこうと思います。

岡本真夜

公演情報

30th Concert 「singer-songwriter」

  • 2026年4月4日(土)高知県 四万十市総合文化センター しまんとぴあ
  • 2026年4月11日(土)大阪府 高槻城公園芸術文化劇場 中ホール
  • 2026年4月12日(日)愛知県 今池ガスホール
  • 2026年5月10日(日)東京都 きゅりあん 大ホール

プロフィール

岡本真夜(オカモトマヨ)

1974年生まれ、高知県出身の女性シンガーソングライター。1995年にシングル「TOMORROW」で歌手デビューを果たす。この曲が連続ドラマ「セカンド・チャンス」の主題歌に採用され、新人ながら200万枚の大ヒットを記録。女性としての葛藤や喜びが込められた歌詞、耳なじみのいいポップチューンでリスナーから共感を得ている。ベテラン歌手からアイドルに至るまで、幅広いアーティストへ作品を提供しているほか、エッセイを執筆するなど、さまざまな分野で活躍している。2012年に東日本大震災の復興支援のためにアルバム「Tomorrow」を発表。2016年3月にmayo名義でピアニストとしてデビューし、シンガー岡本真夜、ピアニストmayoとしての活動を展開している。2025年にデビュー30周年を迎えるとともに、メニエール病を患い発声障害に悩まされていたことを公表。同年7月にはTBS系音楽特番「音楽の日2025」に出演し、ボイストレーニングを経て復活した歌声を披露した。2026年2月に新作ミニアルバム「singer-songwriter」をリリース。