OH MY GIRLが日本ベスト盤リリース、稀有なキャリアを歩む7人が起こした“奇跡”とは

韓国の7人組ガールズグループ・OH MY GIRLが、3月30日に日本ベストアルバム「OH MY GIRL BEST」をリリースした。同作にはデビュー曲「CUPID」から、今年3月28日に韓国でリリースされた最新アルバムのリード曲「Real Love」までのほぼすべての楽曲が収録されており、彼女たちの7年間の軌跡を余すところなく収めたコンプリート盤と言える内容になっている。

2015年に韓国でデビューし、2018年には日本デビューを果たしたOH MY GIRL。2019年に韓国でサバイバル番組「Queendom」に出演すると多彩なコンセプトを見事なパフォーマンス力で表現して話題を集め、2020年リリースの「Nonstop」「Dolphin」はロングヒットを記録した。トレンドが目まぐるしく移り変わるK-POP界において着実にヒットの輪を広げていくという、稀有なキャリアを歩んできた7人。そんな彼女たちの道のりと魅力を、これまで音楽ナタリーに掲載してきたインタビューでの発言を織り交ぜつつ、日本デビュー当初からOH MY GIRLを取材してきたライター・宮崎敬太の文章で振り返っていく。

文 / 宮崎敬太

メンバー紹介

ヒョジョン

ヒョジョン

1994年7月28日生まれ
リードボーカル
最年長、感受性が豊かなリーダー。

ミミ

ミミ

1995年5月1日生まれ
メインラッパー
魅力にあふれたハスキーな声のラップが特徴。

ユア

ユア

1995年9月17日生まれ
サブボーカル
8.5頭身という抜群のスタイルの持ち主。

スンヒ

スンヒ

1996年1月25日生まれ
リードボーカル
抜群の歌唱力を持つムードメーカー。

ジホ

ジホ

1997年4月4日生まれ
リードボーカル
気さくで日本語が堪能。

ユビン

ユビン

1997年9月9日生まれ
サブボーカル
子役出身でさわやかなビジュアルの持ち主。

アリン

アリン

1999年6月18日生まれ
サブボーカル
メンバーから愛される最年少。

OH MY GIRLが起こしてきた現在進行形の“奇跡”

OH MY GIRLが日本デビューしたのは2018年(デビュー時のみOH MY GIRL BANHANA名義)。ナタリーは最初の記者会見に参加した(参照:韓国ガールズグループOH MY GIRL BANHANA、8月に日本デビュー)が、リーダーのヒョジョンとミミを中心に、メンバーたちは記者からの質問に覚えたての日本語で一生懸命答えていたのが印象的だった。

OH MY GIRL BANHANA「バナナが食べれないサル」通常盤ジャケット

OH MY GIRL BANHANA「バナナが食べれないサル」通常盤ジャケット

意外に思われるかもしれないが、2018年の段階では日本におけるK-POPのガールズグループは今ほど一般的な知名度が高くなかった。むしろ先行していたのは韓国のメイクやファッション。OH MY GIRL BANHANAでのデビュー時の取材(参照:OH MY GIRL BANHANA「バナナが食べれないサル」インタビュー)で、「日本の女の子は韓国の女の子に憧れている」と伝えたら、ムードメーカーのスンヒはこんなことを言ってくれた。

「私たちも日本の女の子たちのいろんなものを見て影響を受けているんです。例えば、チークを濃くしてかわいい雰囲気にしたりとか。もしかしたら日本と韓国でお互いに学び合ってるのかもしれないですね。2つの文化が一緒になればもっともっと面白くて、楽しいことになると思うな」(スンヒ)

この発言を聞くまで筆者は、韓国の人たちが日本の文化をどう捉えているかをイメージできなかった。だからこそスンヒの言葉にとても感動した。そして今思うと、この取材の直後に日韓合同オーディション番組「PRODUCE 48」の放送が始まっているのはなんとも意義深い。

翌19年の1月にはOH MY GIRL名義で待望のデビューアルバム「OH MY GIRL JAPAN DEBUT ALBUM」を発表する。本作には18年に韓国の音楽番組で初の1位を獲得した記念すべき1曲「Secret Garden」など、代表曲の日本語版が多く収録されている。

OH MY GIRL「OH MY GIRL JAPAN DEBUT ALBUM」通常盤ジャケット

OH MY GIRL「OH MY GIRL JAPAN DEBUT ALBUM」通常盤ジャケット

「韓国でデビューしたときよりもみんな確実に歌がうまくなっているので、今の私たちを表現できてると思います。『CUPID』はオリジナルと比べて聴くと面白いかもしれません」(アリン)(参照:OH MY GIRL「OH MY GIRL JAPAN DEBUT ALBUM」インタビュー

ちなみに「CUPID」とは15年に発表したミニアルバム「OH MY GIRL」のリード曲。OH MY GIRLはこの作品で韓国デビューした。こうした歌い直しを聴くことができるのは非常にレアで、日本盤ならではの特徴だ。

「日本語と韓国語では言語の構造的な部分で発声の仕方が違うんですよ。日本語で歌うときは、歌詞に込められた感情のニュアンスをつかむのが難しかったです。すごく細かいことではあるんですが、そこをちゃんと理解してないとちょっと違う歌になっちゃう」(ジホ)

正確に発音して、かつ個々の単語の意味も理解し、歌に感情を込める。この作業の積み重ねが「いい曲」につながっていく。我々が何気なく聴いている日本語バージョンの背景には彼女たちの見えない努力があるのだと感じさせられた。

OH MY GIRLにとって19年は怒涛の1年だったはずだ。5月に韓国で1stフルアルバム「THE FIFTH SEASON」、7月に日本で2ndアルバム「OH MY GIRL JAPAN 2nd ALBUM」、8月に「THE FIFTH SEASON」のリパッケージ的サマースペシャルアルバム「Fall in Love」を立て続けに発表する。ちなみに日本語版も制作された「五番目の季節(SSFWL)」は、韓国、中国、日本の3カ国の少女たちが参加した21年放送のオーディション番組「Girls Planet 999:少女祭典」で、ミッションの課題曲に使用されていたことも記憶に新しい。

「この曲は、恋愛している真っ最中のことを歌っている曲なんです。好きな人がいるときって、何を見てもきれいだし、世の中のすべてが心地よくて。あの感覚ってすごく不思議じゃないですか。その幸せな時間のことを春でも、夏でも、秋でも、冬でもない、『五番目の季節』と表現しました。日本語版もオリジナルも歌詞がすごく好きで、たくさん感情を込めて歌いました。」(ヒョジョン)

これは「OH MY GIRL JAPAN 2nd ALBUM」の取材(参照:OH MY GIRL「OH MY GIRL JAPAN 2nd ALBUM」インタビュー)での発言だが、メンバーの日本語力が非常に上がっていたのが印象的だった。そして彼女たちはこの直後の8月に現役のアイドル同士がカムバックステージを賭けてバトルする韓国の伝説的サバイバル番組「Queendom」に出演する。日本語の勉強、新曲の制作、振り付けの練習、音楽番組への出演、日本アルバムのプロモーション……。このときの多忙な中の彼女たちはいったいどんな心境だったのだろうか。同じインタビューでミミはこんなことを話していた。

「どんなに練習しても『これで完璧!』という状態にするのは難しいです。練習できない時間があると、不安になるんですよ。できる限り完成度の高いステージを観てもらいたいので、練習自体は全然苦にならないんです」(ミミ)

ハードコアなK-POPペン(ファン)として知られる俳優の臼田あさ美は、昨年8月に発売された雑誌「GINZA」の韓国カルチャー特集でOH MY GIRLを「“コンセプトの妖精”と呼ばれる、職人グループ」と紹介した。そう、彼女たちはどんなコンセプトも表現できるプロフェッショナル。職人なのだ。それが前述の「Queendom」で開花し、パフォーマンスを披露するたび話題に。MAMAMOOに続いて最終順位2位にも輝いた。サバイバル番組という特殊な舞台だからこそ、OH MY GIRLというグループの内に秘めた実力がこれでもかと引き出された格好だ。「Queendom」で初披露された「Guerilla」は、日本3rdアルバム「Eternally」に収録されている。

OH MY GIRL「Eternally」通常盤ジャケット

OH MY GIRL「Eternally」通常盤ジャケット

「実はあのステージは準備が超超超大変だったんですよ。とにかく時間がなくて。曲をもらってから、レコーディングして、振り付けを覚えるまで2、3日しかなかった」(ユア)


「これまでのOH MY GIRLについて歌っています」(アリン)


「実際、私たちの活動はゲリラ戦みたいな感じだったと思う。神出鬼没で、いろんなコンセプトの曲をいろんなところで披露して。K-POPシーンにしっかりと足跡を刻んだという意味で『Guerilla』という曲を披露したんです。『Queendom』でのパフォーマンスは正直かなり大変ではありましたけど、OH MY GIRLにとって大きな経験になったと思います」(スンヒ)

すさまじいエピソードだ(参照:OH MY GIRL「Eternally」インタビュー)。

20年はコロナの影響で日本での活動はできなかったが、韓国で発表したミニアルバム「Nonstop」はすべての音楽番組で1位を獲得。500日以上にわたり韓国Melonチャートのトップ100にチャートインし、韓国ガールズグループ史上最長チャートイン記録を更新した。21年になっても勢いは増すばかりで、8thミニアルバム「Dear OHMYGIRL」のリード曲「Dun Dun Dance」は日本のK-POPファンからも熱い支持を受け、10月にはTBS系「CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル」でも披露され話題を呼んだ。さらに「The Fifth Season」が「Girls Planet 999:少女祭典」の課題曲として再評価されたのもこのタイミング。新陳代謝の激しいK-POPシーンで、こんな尻上がりのキャリアを歩むグループは稀有だ。だがそれもこれも彼女たちがコツコツと努力し続けた結果である。

ここで改めて、初取材時のスンヒの発言を思い出す。

「もしかしたら日本と韓国でお互いに学び合ってるのかもしれないですね。2つの文化が一緒になればもっともっと面白くて、楽しいことになると思うな」(スンヒ)

それが今この瞬間だ。OH MY GIRLのファンダムネームは“MIRACLE”。私たちは現在進行形で奇跡を体験しているのだ。このたびリリースされたベスト盤「OH MY GIRL BEST」には、本稿で紹介した楽曲を含むすべての楽曲が盛り込まれ、彼女たちの足跡が余すことなく収められている。

OH MY GIRL

OH MY GIRL

プロフィール

OH MY GIRL(オーマイガール)

ヒョジョン、ミミ、ユア、スンヒ、ジホ、ユビン、アリンの7人からなるK-POPガールズグループ。2015年4月にデビューし、「コンセプトの妖精」というテーマのもとさまざまな楽曲を発表している。 2018年8月に派生ユニット・OH MY GIRL BANHANAとしてミニアルバム「バナナが食べれないサル」を日本でリリース。2019年1月にOH MY GIRLとしての日本デビューアルバム「OH MY GIRL JAPAN DEBUT ALBUM」を発表し、福岡、大阪、東京にて日本デビュー記念ライブツアーを行った。7月には日本2ndアルバム「OH MY GIRL JAPAN 2nd ALBUM」を発売し、10月からZeppツアーを開催。2020年1月に日本3rdアルバム「Eternally」、11月には日本1stシングル「Etoile / Nonstop Japanese ver.」をリリースする。2021年5月に8thミニアルバム「Dear OHMYGIRL」をリリースし、リード曲「Dun Dun Dance」は世界的なヒットを記録した。2022年3月30日、日本ベストアルバム「OH MY GIRL BEST」をリリースした。