NOW ON AIR|“六者六様”の声が心地よいハーモニーを生み出す理由

2016年開催の「キミコエ・オーディション」に合格した6人によって結成されたNOW ON AIR。メンバー各々の声優としての活動と並行して、着々とCDリリースやライブを重ねながら見事な歌声のコンビネーションを育んでいる。6人それぞれの個性的な歌声を生かしながら、豊かな響きを届けてくれる声優ユニットだ。

7月から8月にかけて連続リリースされることとなった3枚のシングル「ゴンドラの唄」「GO! FIGHT! WIN! GO FOR DREAM!」「Proud Days」には、「啄木鳥探偵處」「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」といったアニメ作品のタイアップ曲のみならず、メンバー自身が作詞や作曲を手がけたカップリング曲も収録。リリースを重ねるたびに多彩な表現に磨きがかかる6人に各シングルの聴きどころについて語ってもらった。

取材・文 / 田中大 撮影 / 佐々木康太

NOW ON AIRは“耳がいい”

──7月から8月にかけて、3枚のシングルが立て続けにリリースされるんですね。

飯野美紗子

飯野美紗子 そうなんです。3作品すべて毛色が違うので、ファンの皆さんの耳がとても忙しいと思いますが(笑)。去年アルバムをリリースして新曲が一気に増えたんですけど、さらに8曲増えるんですよね。こんなに短いスパンでシングルを3作品もリリースするのは初の試みなので、たくさんの皆さんに聴いていただけたらうれしいです。

田中有紀 去年は初めてアルバムリリースという経験をさせていただいて、「今年は何ができるんだろう?」と思っていたところで、こういう形でシングルをリリースすることになったんです。しかも3作品すべてにタイアップ曲が収録されることになって、すごく驚いています。

鈴木陽斗実 素敵な曲が一気に増えたのはとてもうれしいですね。それぞれ演じ分けるようなイメージで歌わせていただきました。

岩淵桃音 今まで積み重ねてきたものを、今回の3作品で披露することができました。違った魅力をそれぞれの曲から感じていただけると思います。これを機に、たくさんの方々にNOW ON AIRの曲を聴いていただけたらいいですね。

片平美那 3作品をリリースするというお話を聞いた時は現実味がなかったんですけど、形になった今、すごくうれしさを感じています。カップリングもいい曲がいっぱいあるので、早く皆さんに聴いていただきたいです。

神戸光歩

神戸光歩 シングルをリリースするというのはたくさんの方々の協力があって成り立つことなので、3作品も立て続けにリリースできるというのは、ものすごく恵まれていることだと思いますし、周囲からの大きな期待も感じました。レコーディングを進める中で喜びが大きくなっていって、みんなの歌声もどんどん進化していったと思います。

──どの曲も、皆さんそれぞれの歌声の個性を大切に生かす形に仕上がっていますね。

飯野 サウンドプロデューサーの結城アイラさんはオーディションのときから私たちを見ているので、6人それぞれの歌声に丁寧に向き合ってくださるんです。私たちも「合わせる」ということをあまり意識していないというか。ユニゾンで歌うときもみんなそれぞれが個性を出して歌っていて、それなのになぜかそろっているのがNOW ON AIRなんです。今回の3作の曲も、よく耳を澄ませると1人ひとりの声を聴きとってもらえると思います。

鈴木 「活動を重ねるうちにみんなのハーモニーがどんどん豊かになっているな」と感じています。しかもそれぞれの個性も強まってきているんですよね。そういう中で、ユニゾンも進化してきているんだと思います。

──音楽大学を卒業している鈴木さんの耳で聴いても、NOW ON AIRの歌は魅力的ですか?

鈴木 魅力的です。みんなが特にすごいのは、耳がいいところ。耳のよさって、訓練をしたからといって得られるものではないんですよ。天性のものがないとなかなかできないことですから。

田中有紀

田中 そう言われると照れるな(笑)。

飯野 ライブのアカペラで「今の、もうちょっと高めで」とか言われても、みんなその場ですぐに修正できるんですよね。それは確かにすごいと思います。さらに極めていきたいです。

田中 音楽を専門的に勉強してきていないメンバーも「心で合わせよう」みたいな意識がある。だから歌声がいい形で1つになれているのかもしれないですね。

神戸 みんなと歌っていると、とにかく心地がいいんですよ。1stシングルをレコーディングした頃は「みんな声が似てるな」って思った記憶があるんですけど、だんだんそれぞれの個性が出てきていると思います。

──ご自身の歌に関しても変化を感じますか?

神戸 感じますね。私も最初は「みんなに合わせて歌おう」という意識がけっこう大きかったんです。でも最近アイラさんに「思いっきり好きなように歌って!」と言っていただけるようになって、それでもみんなと歌声を合わせると、なぜか心地いい。ライブでのハモリのボリューム具合もいい感じですし、いつも本当に楽しいです。

飯野 私も「ほかのみんなと同じような歌い方で」と言われたことはないですね。「自分らしく、歌いたいように歌っていいよ」ってアイラさんは言ってくださるんですよ。それでもそろうっていうのは……不思議ですね(笑)。

片平美那

片平 私はもともとハモリが苦手だったんですけど、みんなと一緒に歌っているうちになぜかできるようになりました(笑)。この6人の歌は、一緒に成長できているような感覚もありますし、みんなの歌声から学ぶことも多いですね。「こんなふうに声を出すんだ?」とかいろいろ吸収できるので、私にとってNOW ON AIRは学校みたいです。

岩淵 この6人ならどんな曲でも歌うことができるんじゃないかな。それぞれ声が違うので、どんな曲を歌ってもしっくりくる感じがあって。NOW ON AIRとしての表現の幅が広がり続けている感覚もあります。

──実際、作品リリースを重ねるごとに音楽的な幅が着々と広がっていますよね。

飯野 そうですね。広がっている中で最近感じるのは、バンド系の音の曲が増えたということ。初期はストリングスの要素を持った曲が多かったんですけど、最近はロック調の曲も増えてきていますから。「こういう感じの曲を歌ってみたいです」と提案する機会も作っていただいていますし、それが実現できるのがとてもありがたいですね。今回の3作品も、例えば「コール&レスポンスができる曲がほしいです」という要望を叶えていただいたり、やってみたかった要素がたくさん入っています。

大正時代の名曲をロックアレンジに

──シングル3作品のタイトル曲で最初に世に出たのは、テレビアニメ「啄木鳥探偵處」のエンディング主題歌「ゴンドラの唄」です。大正時代から歌い継がれている名曲が、斬新な形で表現されていて驚きました。

田中 もともと私はこの曲を知らなかったんですけど、「いのち短し 恋せよ乙女」というフレーズは聴いたことがあって。調べてみたら昔の曲で、いろんな歌手の方々によって歌い継がれている曲だと知ったので、「NOW ON AIRとして歌うんだったらどんなアレンジになるんだろう?」という期待が大きかったです。

──この曲の作詞をしたのは「啄木鳥探偵處」にも登場する吉井勇という人物です。アニメの放送は観ていました?

神戸 はい。エンディングの絶妙なタイミングでこの曲を流していただけて、すごくうれしかったです。

飯野 ももちゃん(岩淵)の乙女ボイスの歌い出しがいいんですよね。

岩淵桃音

岩淵 光栄でしたけど、緊張しました。アニメを観ていたときも、エンディングが近付くと「来るぞ、来るぞ……」って毎回緊張しちゃって(笑)。自分の声がテレビから聞こえてくるのが不思議でした。

──ピアノ伴奏でしっとりと始まって、突然躍動感のあるバンドサウンドに切り替わるアレンジは、このアニメで初めてNOW ON AIRのことを知った人の印象にも残っていると思います。

鈴木 このアレンジをいただく前に、いろんな方々が歌っていらっしゃる「ゴンドラの唄」を聴かせていただいたので、「NOW ON AIRが歌うとどうなるんだろう?」ってまったく想像できなくて(笑)。中盤でロック調になるアレンジを聴いたときはとても驚きました。

飯野 この歌を聴いて「NOW ON AIR、いい!」と言ってくださる方が多いみたいなんです。最初は「私たちがエンディングを歌って大丈夫かな?」という不安もあったんですけど、放送が始まったらいい感想をたくさんいただくことができました。女性にもたくさん聴いていただけてうれしかったです。女の子の歌ですからね。

神戸 「啄木鳥探偵處」でこの曲を知って、ふと口ずさんだ女の子が「なんでその曲知ってるの?」っておじいちゃんに言われて盛り上がったっていうツイートを見ました。家族の中で話題にしていただけているっていうことですよね。

飯野 お孫さんとカラオケにいったおばあちゃんとかに、ぜひNOW ON AIRのバージョンで歌っていただきたいです(笑)。

片平 「ゴンドラの唄」って、すごく不思議な曲だと感じていて。私はこの曲のことを知りませんでしたけど、どこかで聴いたことがあったからなのか「知らなかったのに知ってる」みたいな感覚があって。つづられている歌詞にもすごく共感しました。

──限りある人生を大切にして、全力で生きる気持ちを呼び起こしてくれる曲ですよね。

片平 そうですね。世代や時代が違っても気持ちは同じなんだなということを私は感じました。大正時代の人も、今の人と変わらないところがたくさんあったんでしょうね。

鈴木陽斗実

──大正時代に生まれた曲が皆さんによって歌い継がれるというのは、とても素晴らしいことだと思います。

鈴木 ありがとうございます。これも私にとって、メンバーそれぞれの歌の幅広さを感じた曲でした。歌うときに「かわいく歌う組」と「カッコよく歌う組」で3人ずつに分けられたんです。「カッコいい組」が、すごくカッコよくて(笑)。

──「カッコいい組」は、飯野さん、田中さん、神戸さん?

飯野 その通りです(笑)。私の歌が「カッコいい組」に入ることになるなんて、NOW ON AIRの最初の頃を考えると不思議なんですけど。

──鈴木さんは「かわいい組」としてどんなことを思いながらこの曲を歌いました?

鈴木 最初にももちゃんと私が歌って、そのあとに歌い始めるのが「カッコいい組」のみっちゃん(神戸)なんですよね。その差がすごく大きくて驚きました(笑)。そこの部分は、家族も驚いていましたね。

神戸 これもメンバーの声の個性が幅広いからできたことだと思います。