≠ME「Springtime In You」特集|メンバーと指原莉乃プロデューサーが語る待望の1stアルバム (3/3)

ストレートな「偶然シンフォニー」、おしゃれな「Marcato」

──アルバムの1曲目に収録されている新曲「偶然シンフォニー」は、好きな人と同じクラスになった喜びをストレートに描いたナンバーです。「ラストチャンス、ラストダンス」と対照的とも言える恋の始まりの曲で“青春”の幕が開けます。

「偶然シンフォニー」は尾木波菜と鈴木瞳美のダブルセンター曲で、以前からこの2人の組み合わせの曲を書きたいなって思っていたんです。2人とも、すごく優しいんですよ。メンバー間の関係性においてはもちろん、例えば尾木ちゃんと一緒にごはんを食べに行くと「私、ファンの皆さんのことが本当に好きなんですよ」という話をしてくれるし、瞳美は芸歴が長いからこそファンの方との関係の尊さをすごく理解している。コンサート中の振る舞いも、遠くの席にいるファンの方にも思いを届けようとしてるのがわかるし、だからこそ、コール&レスポンスができる歌を2人に書きたかったんです。

──尾木さんも鈴木さんも王道アイドルとしてのパワーが強いですよね。

そうですね。そんな2人にぴったりなパワーのあるまっすぐな歌詞を書こうとしたら、こういうストレートな曲になりました。でも、この曲の中にいくつかあるセリフパートの中で、私のお気に入りは菜々風のセリフなんです(笑)。これが菜々風にとって初めてのセリフパートで、本人的にはパートを割り振られて「え! 私!?」と思ったんじゃないかな(笑)。菜々風がセンターの曲だったら、ほかのメンバーに言ってもらうんですけど、尾木ちゃんと瞳美のセンター曲だからこそ、あえて菜々風がセリフを言うのも楽しいかなって。レコーディングしたセリフをいくつか聴いたらなかなか緊張感のあるテイクだらけで、それがかわいかったです(笑)。

尾木波菜

尾木波菜

──アルバムには、そんな冨田さんがセンターを務めるユニット曲「Marcato」も収録されています。

「Marcato」はおしゃれな曲ですよね。≠MEの曲ってサビがはっきりしてないものがあまりなくて、メロディとサビの展開がわかりやすい曲が多いんです。そんな中、「Marcato」は「許可してない Stop it」からがサビになると思うんですけど、曲のキーとなるメロディがほかにもあって、そこが面白いなと思ってこの曲を選びました。今の菜々風なら絶対に歌いこなせるし、踊りこなせると思ったので。たぶん、本人もこういう曲を歌いたかったんじゃないかな。

冨田菜々風

冨田菜々風

──冨田さんは初期の頃から高い歌唱力を誇り、数多くの楽曲でセンターとして存在感を放っています。「Marcato」のレコーディングで、印象的だったポイントや成長を感じた場面はありますか?

英語のパートをすごく練習したんだろうなと思いました。グループの中だと奈月心が英語のニュアンスを表現するのが上手で、ついつい奈月心や、ももきゅんに英語のパートを渡したくなっちゃうんですよね。だから今回は新鮮でした。菜々風が努力して取り組んだことがファンの皆さんにも伝わると思います。

──この曲は冨田さんのほか、落合さん、川中子さん、永田さんがユニットのメンバーに入っています。

奈月心にかわいい曲を歌ってもらうか、カッコいい曲を歌ってもらうか、いつも悩むんですよ。声質やクールビューティな顔を生かしてカッコいい曲に加わってもらうことが多いんですけど、最年少だし、本人的にはかわいい曲も歌いたいだろうなって。ももきゅんに対しても、かわいい曲もカッコいい曲もバラードも歌ってほしいと思うし、そういうぜいたくな悩みはいつもあります(笑)。今回はこの曲に奈月心の声をどうしても入れたいという気持ちが強くてユニットに加わってもらったんですが、結果的に正解でした。声がおしゃれだし、歌詞の意味を読み取ろうと努力しているのがいつも伝わってきます。「ラストチャンス、ラストダンス」もそうですけど、奈月心の声がいい感じの切なさを醸し出してくれるんですよね。本人には「今度はかわいい曲もやろうね」と話したりして。歌の技術があっていろんな面を見せられる子だと思うので、私としても奈月心のいろんな面をファンの皆さんに見せたいと思っています。金髪も似合うし、ビジュアルにも磨きがかかってきているから、これからがすごく楽しみです。

川中子奈月心

川中子奈月心

──切ない歌声を曲に生かしたくて川中子さんをユニットに加えたとのことですが、落合さんと永田さんをメンバーに選んだ理由は?

希来里はなんと言ってもダンスですよね。アイドルのコンサートにおいてダンスで歓声を起こせるのってすごいことだと思うんですよ。希来里は=LOVE、≠ME、≒JOYの中でそれができる数少ない子で、さらに成長もしているので、その才能が「Marcato」のパフォーマンスでどう生きるのかすごく楽しみなんです。私の中でちょっと期待値が上がってますね(笑)。詩央里もダンスが素晴らしくて、このユニットに入ってもらった理由もダンス面を考えてなんですけど、歌が本当にうまくなったんですよ。特にこのアルバムの制作期間でそれをすごく感じました。プリプロで録った歌を聴いたときに「こんな声も出るんだ!」とびっくりして。「ここを歌ってほしい」と思うところが多くて、歌割りを想定していたものから変えたりしました。

落合希来里

落合希来里

デート前の戦い描いた「デート前夜レクイエム」、優しい彼女感を感じる「春の恋人」

──続いて鈴木瞳美さん、谷崎早耶さん、本田珠由記さんによるユニット曲で、スピード感あふれるロックサウンドが印象的な「デート前夜レクイエム」について聞かせてください。

歌詞のテーマをバーッと書いた作詞メモがあるんですけど、その中に「デート前夜」というワードがずっと残っていたんですよ。いつか「デート前夜」をテーマに歌詞を書こうと思っていて。たぶん≠MEの結成よりも前からメモの中にあったから何年越しだよという話なんですけど、そこから引っ張り出して「デート前夜レクイエム」を書きました。メモの段階で「デート前夜」というテーマとロックが結び付いていたものの、なかなかそのイメージにぴったりハマる曲に出会えなかったので、最初にこの曲の音源を聴いたときは「あ! あれだ!」と思って急いでメモを見て、そこからすぐに歌詞を書き上げました。自分のアイデア、楽曲、メンバー、そのすべてがマッチする瞬間がすごく気持ちいいんですよね。

──歌詞では初々しい恋心が描かれていますが、そこにロックを掛け合わせようと思ったのはなぜでしょう?

デート前って女の子にとって戦いなんです。やることが多いですし、そのバタバタ感をかわいく書けたなと思っています。

鈴木瞳美

鈴木瞳美

──センターを務める本田さんの声が、このかわいいロックナンバーに絶妙にマッチしていますよね。

ファンの皆さんもきっと気付いていると思うんですけど、みるてん(本田)は歌声がかなり変わってきていて。今までは彼女のか細い感じのかわいらしい声がグループの中でアクセントになっていたけど、しっかりと芯があるものに変化してきた。アルバムを通して、みるてんと詩央里の成長を特に強く感じるんですよ。2人とも歌い方が変わったなと感動しています。

本田珠由記

本田珠由記

──本田さんも永田さんも、もともとは幼さや妹感を感じるルックスや歌声が特徴ですよね。

プリプロで録ったメンバーの歌を毎回フルで聴くんですけど、櫻井もものセンター曲「桃色デイブレイク」のときに、その2人の歌い方の変化に気付いたんです。お腹から声を出して歌えるようになったなって。それで「デート前夜レクイエム」ではみるてんをセンターにしました。

永田詩央里

永田詩央里

──そして、そこに鈴木さんと谷崎さんも加えて3人のユニット曲にしたと。

瞳美は本当に周りに優しくて視野も広くて、常に感謝を忘れない子。スタッフからもプロ意識を評価されています。 早耶はいつも“今”が一番かわいいんです。ハッとするかわいさ。そんな早耶も努力をして今の位置に立ってると思うし、瞳美と同じようにすごく優しい性格で、その優しさに胸がキュンとなったエピソードがあるんですよ。前に≠MEにメンバーカラーを決めようという話になったんですけど、≠MEはピンクのイメージが強いメンバーが多い。結局メンバーに委ねたんですけど、早耶が自ら白を選んでくれたんです。そのあと「白にしてくれたんだね」って個人的に連絡したら、「ちょっと大人になりました」と言っていて、精神的に成長しているんだなと実感しました。昔は悔しい思いをして泣きながら電話をしてきたことが何度かあったけど、自分の中で噛み砕いて、考えて、みんな成長して視野が広がってるんだなと。

谷崎早耶

谷崎早耶

──さらに、アルバムには蟹沢萌子さんがセンターを務めるユニット曲「春の恋人」も新曲として収められています。この曲は1980年代や90年代のポップスの香りを感じる、懐かしさのあるメロディ、サウンドが特徴です。

松田聖子さんっぽい感じにしたかったんです。萌子は「ピオニーズ」(蟹沢萌子と冨田菜々風のユニット曲)のような狂気的な曲も似合うのに、“みんなの恋人”のような安心感があって。ついつい「P.I.C.」とか「ピオニーズ」みたいなクールな曲で目立たせようとしちゃう中、それと同時になんとも言えない優しい彼女感を感じる。それは本人に表現の技術があるからだと思うんですけど、その優しい空気感が「春の恋人」にすごく生きてると思います。私、この曲をかなり気に入っていて、赤坂から銀座まで1時間歩きながらずっと聴いてました(笑)。聴きながら1時間歩けちゃう曲。最近の≠MEは力強いメッセージを表現している曲が多いですが、こういう朗らかな曲もいいなと思いました。両思いを描いているという点でも珍しいですね。この曲の2人はしばらく別れないだろうなっていう安心感があります(笑)。

蟹沢萌子

蟹沢萌子

──海へデートに行く描写があったり、アルバムの中でも情景が浮かびやすい歌詞だなと感じました。

イメージとしては湘南です。「新宿駅で待ち合わせ 1番線の端っこに あなたがいる」という歌詞がありますが、これは湘南新宿ラインのホームのことで。車を持っていない、1番線の端っこというわかりやすい場所で待ち合わせしてる初々しい2人を描いてます。

──「春の恋人」の歌唱メンバーは、蟹沢さんのほか、尾木波菜さん、河口夏音さん、櫻井ももさん、菅波美玲さんの計5人です。それぞれの歌や表現の印象も聞かせてください。

ももきゅんは、もう歌がうますぎるんですよ。プリプロで録った音源が届いたら、まずセンターにしようと思ってるメンバーの声を聴いて、そのあとに絶対にももきゅんの歌を聴くんです。「月下美人」(蟹沢萌子、川中子奈月心、櫻井もも、冨田菜々風によるユニット曲)のときは、ももきゅんのプリプロを聴いて泣きましたから(笑)。しかも歌い方が変幻自在で、「春の恋人」では歌詞の世界観を考えて、ノリノリで歌ってくれたのが伝わってきました。すごくかわいいし、表現力がすごいです。

櫻井もも

櫻井もも

──5人ともこの曲の世界観に自然と溶け込んでますよね。

美玲も“彼女っぽさ”を感じられるメンバーで。この曲の主人公は美玲とイメージが近い感じがしていて。デートのために準備して新宿駅に向かってる美玲の姿が浮かびます。あと、彼女も声が出るようになってきて、最近びっくりしています。もともと歌に苦手意識があったと思うんですけど、セリフ以外の部分でも魅せられるようになってきたなって。コンサートでの煽りがすごく上手なのも彼女の強い武器ですね。歌い方で言うと、尾木ちゃんも歌い方が変わって、さらによくなった感じがします。グループを引っ張っていけるような明るさがよく出ていると思います。

菅波美玲

菅波美玲

──河口さんについてはいかがでしょう? 多芸多才で、非常に個性が強いメンバーだと思いますが。

髪の毛を染めてから、ビジュアルがよりかわいくなっていますね。コンサートでモニターに顔が映ったときにハッとするぐらい。今まではクレイジーなキャラクターのほうが目立っていて。透明感がある美人として押していきたかったのに、それ以上に本人のキャラクターが強すぎて、「どうなっていっちゃうんだー!」と思っていたんですけど(笑)、ここに来て美人度合いがさらに増した印象です。ビジュアルと本人の性格がどんどんかけ離れていく、その危うさをファンの皆さんはきっと楽しんでいるんだろうなと思います。

河口夏音

河口夏音

──ファンの皆さんはもちろん、指原さんとしても日々メンバーの成長に驚かされ、感化されているんですね。

メンバーの前向きさにいつも励まされています。ここに自分がいることが本当に楽しくて、本当に幸せなんだってことをみんなすごく伝えてくれるんですよ。前向きで根性があって……まさに部活(笑)。運動部すぎる。やっぱり、それが≠MEのいいところですよね。

パフォーマンスを突き詰めてほしい

──今後、=LOVE、≠ME、≒JOYの中で、そしてアイドルシーンの中で≠MEにはどんなグループに進化していってほしいですか?

私がいろんなタイプの歌詞を書くのは、その曲の中で生きている人の気持ちをメンバーに知ってほしいからなんです。「私は私。誰にも邪魔させない」という強さを持っている人もいれば、「明日あの人に会えるからがんばろう」という誰かに対する思いだけでがんばれてる人もいる。そういったそれぞれの生き方を肯定してあげられる人になってほしいんですね。もちろんほかのグループに対しても同じなんですけど、≠MEに対しては特にそう感じます。人生に正解なんてないということと、すべての人に優しくいられる人たちでいてほしいという思いが楽曲たちを通してメンバーに伝わって、彼女たち自身の生き方がより豊かになればいいなと常に思っています。そしてこの楽曲たちを生かして、コンサートを観に来る人たちにパワフルなステージを見せ続けてほしい。5周年コンサートを観て改めて感じたんですけど、≠MEはパフォーマンスだけでお客さんを魅了できる数少ないグループだと思うんです。大きな会場でステージから手を振って沸かせるのではなく、歌って踊って「キャー!」って言われる。それって本当にすごいことだと思うので、これからもそこを突き詰めてほしいですね。

≠ME ©YOANI/KING RECORDS

≠ME ©YOANI/KING RECORDS

──今のアイドルシーンではTikTokでバズることが人気への一番の近道であり、避けては通れない必須項目になってきている面があると思いますが、完成度の高いパフォーマンスを作り上げていないと中長期的な人気拡大にはつながらず、単なる一過性の“バズ”で終わってしまう。その点、≠MEは過去に「てゆーか、みるてんって何?」がTikTokで大きく注目された中、常にパフォーマンスで魅せることに力を入れている印象です。

そのことは常に考えていて。やっぱりレコード会社の人と話していると、どうしてもTikTokの話になるんですよ。私としてもTikTokの重要性はわかっているし、もちろん曲が流行ったらうれしいし、人気を得るための何よりの近道だと思います。そこの人気を目指すことを否定はしないですけど、どうしても完全には気持ちが乗らないんですよね。TikTokでバズるような楽曲も大事だと思うんですが、それ以上に大事なことはステージ上での表現だと思っていて。TikTokがきっかけでコンサートに来てくれた人が離れないようにするには、バズり以上のパワーが必要だと思う。そして≠MEの5周年コンサートでは、それを実現できた気持ちよさを感じました。改めて、パフォーマンスで引き込まれるのってすごいことで、今回のコンサートを観た人はきっと≠MEから離れないと思います。

──今後、≠MEがさらなる進化を見せてくれることを期待しています。これでインタビューは終わりですが、最後にもう1つだけ聞かせてください。先日メンバーにインタビューした際、落合さんが「アルバムタイトル『Springtime In You』の中の『me』が≠MEにかかっているのでは」と解釈していたのですが……。

あー! なるほど(笑)。確かにジャケットのデザインはそういうイメージに仕上がっているので、結果的にその解釈で合ってると思うんですけど、タイトルを考えたときは正直意識してなかったです(笑)。でも「me」と「You」の両方を含みつつ、「君の中の青春」を意味するタイトルになっているのは美しいですよね。

公演情報

≠ME 全国ツアー2024「やっと、同じクラス」

  • 2024年4月29日(月・祝)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2024年5月6日(月・休)福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
  • 2024年5月10日(金)鹿児島県 宝山ホール
  • 2024年5月12日(日)熊本県 熊本城ホール
  • 2024年5月17日(金)千葉県 松戸森のホール21 大ホール
  • 2024年5月19日(日)栃木県 宇都宮市文化会館
  • 2024年6月15日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2024年7月15日(月・祝)神奈川県 横浜アリーナ

プロフィール

≠ME(ノットイコールミー)

2019年2月に結成されたアイドルグループ。指原莉乃がプロデュースを手がけている。8月に東京・お台場青海周辺エリアで行われたアイドルイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」でステージデビューし、初のオリジナル楽曲「≠ME」を披露。同年12月に東京・天王洲 銀河劇場で定期公演の第1回が開催された。2021年4月にキングレコードよりメジャーデビュー作となるミニアルバム「超特急 ≠ME行き」をリリースし、6月に東京・中野サンプラザホールで初の単独コンサート「≠ME 1stコンサート~初めまして、≠MEです。~」、9月より「≠ME 1st Tour ~やっぱり、恋をした~」を実施した。2023年4月から6月にかけて東京・日本武道館公演2DAYSを含む「≠ME全国ツアー2023『We shout "I am me."』」を開催。2024年3月には東京都・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで「≠ME 5周年コンサート『≠ME 5th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』」を昼夜2公演にわたって行い、1stアルバム「Springtime In You」をリリースした。

※特集公開時より、一部表現を変更いたしました。

2024年3月26日更新