NOMELON NOLEMON「EYE」インタビュー|ポップスってなんだろう? (2/2)

月の満ち欠けに名前があるように人にも……

──リードトラック「KILLERMOON」はまさにアルバムを象徴する1曲。歪みがかかったシンセやギターもノーメロの個性ですよね。

ツミキ そうですね。80's~90'sあたりのイギリスっぽい感じと現代のポップカルチャーを掛け合わせたのが「KILLERMOON」です。もともとYMO(Yellow Magic Orchestra)が好きで、その流れで聴き始めたニューウェイブの感じもあるかも。

──YMOは去年、初期のライブ映像がイリシューされましたね。

ツミキ そうなんですよ。めっちゃ観てます。

みきまりあ 私も観てます。「今登場したバンド」と言ってもおかしくないくらいの新しさを感じます。

ツミキ Prophet-5とか、教授(坂本龍一)が当時使ってたシンセにも興味があるんですよね。どうにかモデリングできないかと思って、いろいろやってます。

NOMELON NOLEMON

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──「KILLERMOON」は「世界を撃ち抜こうぜ 月を追い越そうぜ」というフレーズも印象的です。

ツミキ 「どうやったら月を超えられるんだろう?」って考えながら作ってたから(笑)。月には満月から新月までグラデーションがあって、それぞれに名前が付いてるじゃないですか。人にも欠落した部分がありますけど、その状態に名前があったらいいんじゃないかなと思ったんです。

──いろんな欠落に名前が付いてたら、少し気持ちが楽かも。まりあさんはこの曲にどんな印象を持ってますか?

みきまりあ まさに「月まで届きそうな曲だな」って思いました(笑)。レコーディングでも、できるだけ遠くをめがけて歌いました。すごく難しいんですよ、この曲。アルバムの中で最後に録ったんですけど、最初はイメージした通りに全然歌えなかったんです。めちゃくちゃ落ち込みました。

ツミキ 僕のスタジオで録ってたんですけど、「どうしよう?」と思ってたら、まりあが急に「やっぱりいけるかも!」って(笑)。

みきまりあ 冷静になって考えたときに、「よし、もう1回歌おう」ということになりました。そうしたらすごくいいテイクが録れて、結局、1時間くらいで録り終えたんです。そのときの気合いは歌声にも反映されていると思うし、そういう状況だったからこそ、疾走感のある楽曲になったんじゃないかな。お気に入りの曲になりました。

綿密なハイパーポップ

──「ミテミテ」はド派手なダンスチューンですね。

ツミキ 音楽的なカルチャーとしては、ハイパーポップと呼ばれるジャンルを取り入れてみました。メロディ自体はポップスだし、いろんな要素が混ざってますね。

みきまりあ ハイパーポップは私も普段から聴いてます。ノーメロでこういうテイストの曲をやれてうれしいです。

ツミキ 制作時間がかなりかかってるんですよ。さっきお話しした“ポップとアートの融合”を意図して一番労力を割いたのがこの曲ですね。聴いてくれた人に「この曲、自分だけが好きなやつだ」と感じてほしかったから。ある種のフェティシズムというか「こういうの好きでしょ」みたいな要素を入れつつ、自分自身がカタルシスを感じる部分も織り交ぜました。かなり緻密な作業だったと思います。

ツミキ

ツミキ

みきまりあ 私もすごく好きなトラックで、リズムがスッと体に入ってきました。レコーディングでも楽しく歌えました。

ツミキ よかった(笑)。まりあにはダンスのルーツもあるので、踊りながら歌ってる様子もなんとなくイメージしてました。

みきまりあ 「ミテミテ」というタイトルは2人で話し合って決めたんですよ。「何がいいかな?」って相談されて、「ミテミテ」がよくない?って。私、普段は内気なタイプなんですけど、ライブだと「私を見てよ」という感情になるんですよ。ミュージックビデオも出る予定ですし、すごくノリやすい曲だと思うので、ぜひ楽しんでほしいですね。

──お互いのセンスがうまく融合した曲なのかも。

ツミキ そうですね。まりあと僕とは違う観点で音楽を聴いてるところもあるし、僕がまったく知らない曲を「めちゃくちゃいいよ」って教えてくれることもありました。

みきまりあ 気になる曲はシェアし合ってます。

ツミキ そこから掘り下げたり、「こういう曲を作ってみよう」とヒントになることもけっこうあります。いつも材料をもらってますね。

ここでラーメンの話を

──「焦熱」はまりあさんの作詞作曲ですが、まずこのタイトルがすごくいいですね。この曲もライブで盛り上がりそうです。

みきまりあ ほかの曲名が英語かカタカナだったから、漢字にしたかったんです。焼け付くような印象の言葉を探して、「焦熱」にしました。曲を書いたきっかけとしては、やっぱりアルバムタイトルが「EYE」なので、私も“目”を意識して、どういうときに視線を感じるか考えてみたんですよ。あの……私、ラーメンがめっちゃ好きなんですけど……。

──ラーメン?

みきまりあ はい(笑)。人気のあるラーメン屋さんって、けっこう並びますよね? 1人でカウンターに座って食べてるときに、後ろで並んでる人の視線を感じるというか(笑)、焦っちゃうんですよ。でも「この1杯をじっくり味わいたい」という気持ちもある。その矛盾をテーマにしたのが「焦熱」ですね。

みきまりあ

みきまりあ

──なるほど。「震える舌先に詰め込む夢 今すぐ満たして」というフレーズもあるし、てっきり恋愛ソングかと……。

みきまりあ そうですよね(笑)。

ツミキ その話を聞いたときは、僕も「なんでラーメンの話してんの?」と思いました(笑)。この曲、まりあから「こういうベースがいい」というボイスメモが送られてきたのが最初なんですよ。まりあが自分で歌ってたんですけど。

みきまりあ “ドゥンドゥンドゥン”って(笑)。

ツミキ それをもとに簡単なループを作って、「好きなようにして」ってまりあに渡したんです。そしたらフル尺の曲になって戻ってきました。

みきまりあ そのループを使って、DAWで流れを作りました。編曲はツミキさんですけど、私が作ったものをさらに広げて、めちゃくちゃカッコよくしてくれました。

ツミキ グリッチテクノのテイストも取り入れてます。切迫感や焦燥感、ちょっと鬼気迫る感じを入れたかったんです。

──そして、先行配信された「シーグラス」はまさにポップスとしての精度の高さを示した楽曲だなと感じました。

ツミキ ありがとうございます。宇宙をイメージした楽曲を作っていく中で、海をテーマにした曲も作りたくなったので。海の深くで起きているドラマティックな出来事を描きつつ、まりあがギターをかき鳴らす姿を念頭に置いて制作しました。

みきまりあ すでにライブで何回か披露していますが、ステージでは実際にギターを弾きながら歌っています。幻想的でありながらもキャッチーで、すごくいいバランスの曲だなと思います。

変化、ひらめき、人生を美しく

──アルバムの最後を飾る「I THINK」の作詞はツミキさん、まりあさんの共作です。

ツミキ 僕が1番の歌詞を書いて、2番はまりあにお願いしました。「I THINK」では僕たちの考えをしっかりまとめたかったんです。「ちょっとだけ世界をよくする」という思いを落とし込んだんですけど、僕だけではなく、まりあから出てきた言葉もちゃんと記録したかったんです。

ツミキ

ツミキ

みきまりあ 「僕らは考えた」という歌詞で始まりますけど、ツミキからは「2番の頭も同じ言葉から始めてほしい」と言われました。「何を伝えたらいいんだろう?」とすごく考えた結果、ボーカリストとしての自分、なんで歌っているのか?を書くことにしました。

──「きっと不器用な僕だから ここに立って歌っている」というフレーズもありますね。

みきまりあ 自分の身から出た言葉をそのまま書いた感じです。歌詞を書くときは「回りくどいほうがいいかな」と思ったりするんだけど、この曲はあえて何も考えず、ストレートに書こうと。まったく偽ってないので、ちょっと恥ずかしいですけど、まっすぐ伝わるんじゃないかな。レコーディングのとき、泣きながら歌ったんですよ。そのとき動画を回してたんですけど、泣いてるところも映っていて。ツミキさんには「なんで泣いてるの?」と言われましたけど(笑)。

ツミキ 印象悪くなるからやめて(笑)。

みきまりあ めちゃくちゃ感動して、涙が出たということですね。

──それくらい生々しい感情が刻まれている、ということですね。「ひらめきがきっと世界を変える」という歌詞も素晴らしいですね。これはまさに音楽のことだなと思いました。

ツミキ そうなんですよね。曲作りって、本当に些細なことから始まったりするんですよ。風呂場で鼻歌を歌うこともそうだし、ちょっとしたアイデアやひらめきが曲につながるし、それが誰かにとって必要なものになることもある。僕にとってはすごく大事なんですよ。ひらめきが。

みきまりあ 音楽だけじゃなくて、絵を描くこともそうだし、いつもと違う雰囲気の洋服を着たり、髪色を変えることもひらめきだと思うんです。そういう些細な変化が人生を美しくすることを思い出してもらえたらうれしいですね。

東京&大阪ライブに向けて

──アルバムリリース後には、東京、大阪でワンマンライブ「NOMELON NOLEMON live 2026 “EYE SYNC”」が開催されます。

ツミキ 僕らも楽しみですね。アルバムに紐付いたライブですが、いろんな企てがあるので、まさに試行錯誤している最中です。

──まりあさんはどうでしょう? ノーメロのボーカリストとしてのスタンスにも変化があるのでは?

みきまりあ そうですね。活動が始まったばかりの頃は、ツミキさんの楽曲をボーカリストとして演じているような感覚があったんです。でも今は、素の自分と演じてる自分が近付いてる感じ。自分でも不思議なんですけどね。なんでだろう?

ツミキ 基本的にこのプロジェクトは、僕が独断で決めることはそんなにないんです。制作中も1つひとつ確認するし、まりあの意見を吸い上げることもあるので、“自分ごと”にしてくれてるのかなあ。

みきまりあ うん。相方のツミキさんに対する信頼感も増しています。私が思ったことも受け止めてくれるし、だからこそ演じる必要がなくなってるのかもしれないですね。

NOMELON NOLEMON

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公演情報

「NOMELON NOLEMON live 2026 “EYE SYNC”」

  • 2026年2月13日(金)東京都 EX THEATER ROPPONGI
  • 2026年2月26日(木)大阪府 BIGCAT

プロフィール

NOMELON NOLEMON(ノーメロンノーレモン)

ツミキ、みきまりあによる2人組音楽ユニット。2021年8月にシングル「INAZMA」でデビューし、2022年1月に1stアルバム「POP」をリリース。2023年8月に2ndアルバム「ルール」を発表し、同年10月にアルバムを携えたワンマンライブを東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催した。TikTokをはじめとしたSNSで楽曲「SAYONARA MAYBE」が人気となり、「どうにかなっちゃいそう!」が、10~20代が選ぶネクストブレイクアーティスト「NEXT SPIKES vol.2」に選出。2024年に「水光接天」で、テレビアニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」第1クールのエンディング・テーマを担当し、2025年1月に発表した劇場先行版「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」の挿入歌「ミッドナイト・リフレクション」がユニット最大のヒットを記録した。6月に東京・キネマ倶楽部でワンマンライブ「DOCUMENTARIUM 2025」、10月に東名阪ワンマンツアー「SUPERMOON」を開催。2026年2月11日に3rdアルバム「EYE」をリリースした。2月13日に東京、2月26日に大阪で、アルバムを引っさげたワンマンライブを開催する。