西川貴教「FREEDOM」インタビュー|小室哲哉と初タッグで挑んだ主題歌への思いとは

現在公開中の映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の主題歌として、西川貴教と小室哲哉が初タッグを組んで作り上げた楽曲「FREEDOM」が1月24日にシングルリリースされた。

西川はT.M.Revolutionとして「機動戦士ガンダムSEED」(2002年放送)や「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(2004年放送)をはじめとする「ガンダムSEEDシリーズ」に数多くの楽曲を提供してきた縁を持つが、今回、制作発表から約18年の時を経て公開されることになった最新作「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」で初めて“西川貴教”として主題歌を担当。TM NETWORKとして「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年)の主題歌「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を超えて)」を手がけたこともある小室を楽曲プロデュースに迎え、“西川貴教 with t.komuro”名義の楽曲「FREEDOM」を生み出した。

音楽ナタリーでは西川にインタビューし、「ガンダムSEEDシリーズ」への深い思いと、小室とのコラボレーションによって生まれた「FREEDOM」やカップリング曲「Believer」の制作エピソードについてじっくりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 竹中圭樹

覚悟を持って引き受けた

──西川さんはT.M.Revolutionとして「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」に数多く楽曲提供をされてきました。その太い縁はご自身にとってもかなり大きなものになっているんじゃないでしょうか?

そうですね。皆さんが抱かれている今の僕の活動イメージを鮮明にしてくれたきっかけとも言える作品だと思います。「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」と一緒に歩んできた歴史があったからこそ、例えば「戦国BASARA」のようなプロジェクトであったり、さまざまな作品との関わりが生まれたのも間違いないわけで。そういった意味においても「SEED」との出会いは本当に大きなものだと思いますね。

──西川さんとアニメとの親和性を最初に大きく証明した作品とも言えますよね。

「SEED」以前にもアニメ作品に楽曲を提供させていただいたことはあったんですけど、一緒に20年以上にもわたって深く作品作りをするスタイルになったのは「SEED」だけですからね。そこで経験した1つの作品に対しての向き合い方は、その後の作品作りにも大きく影響を与えてくれていますよ。

西川貴教

──「機動戦士ガンダムSEED」の劇場作品の制作が発表されたのが2006年のことでした。そこから18年の時を経て、ついに先日公開されたのが「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」です。その主題歌を西川さんが担当するのはもはや必然だったと思いますが、実際にオファーがあったときはどんなお気持ちでしたか?

世界情勢が刻一刻と変わっている真っ只中、今の時代に劇場版が公開される。しかもシリーズとしては約18年ぶりとなる完全新作ですからね。これはもう自分の人生にとっても大きなイベントとして捉えるべきものだし、だからこそ覚悟を持ってお引き受けしようという気持ちでした。

──主題歌を担当することが発表になった際、西川さんは「『どんな曲を創るか』よりも『どんな想いを込めて作品を送り出すべきなのか』に多くの時間を割きました」というコメントを出されていました(参照:西川貴教と小室哲哉が初タッグ、劇場版「ガンダムSEED」主題歌担当「ガンダムは光です」)。

「ガンダムSEEDシリーズ」の魅力って、世界の持つ歪みや社会情勢の軋轢といったマクロな視点と、少年少女たちの心の揺らぎのようなミクロな視点を同時に、同一線上に描いているところだと思っていて。そのうえで今回の劇場版では主人公のキラ(・ヤマト)とヒロインのラクス(・クライン)との2人のドラマを描いていくということを福田己津央監督に伺っていたので、それを踏まえたうえで本当にいろいろなことを考えましたね。ここ最近、僕の身近なところで「よもや」というような方が亡くなられ、急にお会いできなくなってしまったことが多かったこともあり、「いつかこんなことができたらいいな」「また機会があれば」なんてことを言っていられないと強く思うようになったんです。だから昭和から平成、平成から令和へと3つの時代を紡いできた作品に対し、自分なりの今の思いを悔いなく注ぎ込むことにフォーカスして制作に向き合っていきました。

西川貴教

小室さんは遠縁の親戚筋?

──今回の楽曲は「西川貴教 with t.komuro」名義となっているように、小室哲哉さんと初タッグを組んで制作されたことも大きなトピックです。

小室さんから「“with t.komuro”名義でどう?」と言ってもらえたことに関しては、もう伝家の宝刀を抜かれた感じがしましたよ。90年代からの流れを見ると、小室プロデュースというものがまずあり、そこにアーティストが付帯されていくようなスタイルも多かったと思うんです。でも、H Jungle with t然り、篠原涼子 with t.komuro然り、“with t”名義には小室さんなりに何か思いがあるような気がする。

──数えきれないほどのプロデュース曲あれど、その名義で発表された曲は確かに数えるほどですよね。

そういう意味でも、僕の声やキャラクターみたいなものに対して、すごくリスペクトしていただけている実感があった。西川貴教と「ガンダムSEED」という作品に対して、大切に寄り添っていただいて。それが本当にうれしかったです。

西川貴教

──小室さんと西川さんは、決して遠い場所にいるわけではないけれど、今まではなかなかその活動が交わらなかった感じがしますよね。

先だって僕のラジオ番組で小室さんが直接おっしゃられたのでやっと解禁になりましたけど、TM NETWORKの“TM”を“タイムマシン”という意味にしようと進言された方が、のちに僕がデビューするタイミングで所属していたレーベルのレーベルマスターをやられていた方だったんです。そういう意味では、僕と小室さんは遠縁の親戚筋にあたるというか(笑)。そんなご先祖様のような方と、年月を重ねた今、楽曲を介してご一緒できる機会をいただけたことは僕にとっては本当に感慨深いことですね。

──いろんな意味で説得力のあるコラボだと思います。1988年公開の映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の主題歌「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を超えて)」をTM NETWORKとして手がけたこともあるわけなので、小室さんとガンダムの縁も浅からぬものですし。

そうなんですよね。振り返ると、ガンダム40周年のタイミングで開催されたイベント(2019年開催の「GUNDAM 40TH FES.LIVE-BEYOND」)において、僕の同期であり、10代からの仲間であるLUNA SEAが思いを込めて「BEYOND THE TIME」をカバーしていたのを観たときに、すごくいいなと思ったんです。そのときの感覚が今回の主題歌のお話をいただいたときにすごくつながったところもあった。「逆シャア」を観ていた幼い頃の自分の思いを含め、今回の楽曲にはいろんなことへの恩返しみたいな意味合いも込められたらいいなとすごく思いました。