デモ音源に対する学生たちの反応は?
──そこからバンドでデモ曲を作り、学生さんに提示されたわけですね。
kiyo デモを5曲用意したのですが、その選曲に迷いましたね。幅広いジャンルにするのか、ある程度絞るのか。最初はバリエーションを豊富にしようと思ったんです。もし学生さんが「バラードがいい」と言った場合、選択肢が限られてしまうので。そこで、あえて似たようなテンポ感やジャンルをそろえた曲でまとめました。
──そのデモ音源に対して、学生さんが「意見書」を書いてきたそうですね。読んでみてどう感じ、参考にしましたか?
ɑyumu 楽曲を聴いて思い浮かんだイメージをたくさん書いてくれていて、とても参考になりました。例えば、「ノリやすくて踊りたくなる。特にイントロの細かいフレーズの連続で体が自然に動くような感覚」みたいな意見もあって。第三者の感覚を知ることができて、うれしかったですね。
kiyo 「宇宙的」だったりね。僕は普段シンセサイザーを演奏していることもあり、確かに音作りの部分で“宇宙っぽさ”が出ているのかもしれませんが、自分では意識していなかったので。あとは、「ちょっと古い感じがする」とか、めちゃくちゃストレートな意見もあって(笑)。傷付くんだけど逆にうれしいというか。気を使わずに本音で意見を書いてくれていてよかったです。
you 僕たちはいつも基本的にメンバーだけで曲を作っているので、若い皆さんの意見を聞けるのは本当にありがたい。純粋に原動力になりましたね。
原 アーティストってキャリアを積むほど周りがコアなスタッフで固まっていくので、耳の痛い意見が届きにくくなるんですよね。
kiyo そうなんですよ。僕とyouなんて特に同じ世界観の中で生きてきたので、音楽の流行が巡っていることは理解していたものの、「今はこれが古いって思われるんやな」とか「今はこういうのが刺さるのか」などリアルな感覚を知ることができました。参考になったし、今後の糧にもなると思いました。中には「圧が強め」とか、いいのか悪いのか判断しづらいコメントもあって(笑)。でも、なんだか試されてる感じがして面白かったです。
ɑyumu 「カラオケでも歌いやすそう」とか「会場の空気を一気に温めそう」という意見もあり、よく考えてくれているなと思いました。
──複数用意した楽曲の中から、どのようにして1曲に絞ったんですか?
kiyo 3人で話し合った結果、2番目に人気の曲にしました。音楽の世界って「満場一致で、いいと言われる曲は必ずしもヒットしない」とも言われていて。昔は曲を作ってリリースするまで半年ほどかかっていたので、その間に時代の流れが変わるんですよね。少し意見が分かれる曲のほうがリリースされる頃にちょうど時代にハマることが多いというイメージがあって。ですので、ダントツで1位ではなく、あえて2番人気の曲に決めました。
「異星人」という言葉が歌詞の大きなヒントに
──そこから歌詞のモチーフになるようなキーワードや言葉を学生さんから集められたと。
原 モチーフやキーワードだけではなく、しっかり歌詞として書いてきてくれる学生もいましたね。
ɑyumu 本来、僕が歌詞を担当する予定で、学生の皆さんからいただいた歌詞の案やキーワードをもとに、ここにいる皆さんと、しっかり打ち合わせして、イメージを膨らませて書き始めたんですが、2025年の7月にリリースした「New Beginning」という楽曲の歌詞に少し似てきちゃって。それで一度kiyoさんにまとめてもらうことになりました。
kiyo ɑyumuからバトンを受け取るような形で、以前の曲と重ならないように歌詞の方向性を整え直しました。とにかく、学生のみんなとNicoriの3人で一緒に作った曲にしたいという気持ちが強くて。特に着想を得たのは、学生さんから出てきた「異星人」という言葉でした。「異星人と手を取り合える方法を探している」というフレーズは僕の中になかった発想だったので、すごく驚いたんです。
ɑyumu 僕もあの言葉にはびっくりしました。
kiyo 「異星人」というワードから、単に“異星”だけじゃなく“異性”にも重ね合わせられるんじゃないかと。恋愛って、もともとは他人同士で、育った環境も違うし話が通じない瞬間もある。だからこそ、“相手は異星人かもしれない”ぐらいの感覚で書いてみようと思ったんです。まさに、「異星人」という言葉がヒントになりました。
──ほかに学生さんからインスピレーションを受けた内容はありましたか?
kiyo 「暗闇さえも照らせ」や、「なぜこの闇から抜け出せないのだろう」みたいな言葉にも響くものがあって。完全に“宇宙の世界”やな、と。僕はもともと宇宙が大好きなので、できれば少しマニアックな方向に寄せたかった。ただ、マニアックにしすぎると伝わりにくいので、ほどよいところに調整しました。そして、タイトルは「swing-by」(スウィング バイ)になりました。
原 仮タイトルは「High Starter」(ハイ スターター)でしたよね? なぜ「swing-by」に?
kiyo 「swing-by」には“目的地へ向かう途中に立ち寄る”という意味があるんですけど、宇宙用語では、“天体の重力を利用して宇宙機の速度や軌道を変える技術”という意味もあって。宇宙空間では燃料を節約しないといけないので、星の近くを通って方向転換したり、重力で加速したりするミッションがあるらしくて、それを言葉に置き換えたイメージですね。「異星人」という言葉からイメージが広がって宇宙につながり、そこから知っているようで知らないワードを選んで膨らませていきました。ほかにも「光、みなぎるチカラ、答えを求めて…」など、学生さんから「光」や「闇」にまつわる言葉がたくさん出てきていて、“太陽の光を受けて光っている探査機”のようなイメージも浮かんできましたね。
──学生さんの言葉から、かなりイメージを広げられたんですね。ほかに印象的だったワードはありますか?
kiyo 「逃げられないし飛び越えられない、ぶつかるしかない、それでいいんじゃないか」。これは個人的に刺さりましたね。「そっか、飛び越えなくていいんだ」って思わされたというか。この気付きを今日、学生さんに伝えたかった(笑)。
原 今回の学生からのフィードバックによって、今後のNicori Light Toursの作品になんらかのエッセンスが加わってくれたらうれしいですね。
you まさに影響はありました。「これまでとは違う作風の楽曲が生まれるかも?」と思っています。
学生たちからNicori Light Toursへの質問
──そしてバンドと生徒さんたちの共作による楽曲「swing-by」がついに完成しました。
原 そうそう! 聴きましょう。僕も先ほど初めて聴いたところなんです。
kiyo できたてホヤホヤなんですよ。
原 では、「swing-by」、聴いてみましょう。どうぞ!
(全員で完パケた音源を試聴。楽曲が終わった瞬間、拍手が起こる)
──完成した楽曲を聴いてみていかがですか?
原 この曲、イントロがとても印象的だったんですが、歌詞が入ると「こうなるんや」と思いました。Nicoriの皆さんどうでしょう?
you まず、学生さんがたくさんいる前で自分の曲を聴くことがないので、ちょっと恥ずかしいですね。でもボーカルのほうがもっと恥ずかしいはず。顔、赤いよね(笑)。
ɑyumu (顔を赤らめながら)本当に恥ずかしいです(笑)。
原 “ザ・公開授業”という感じになりましたね。すごくカッコいい楽曲をありがとうございます。
──では、学生の皆さんからNicori Light Toursさんに質問をどうぞ。
山本さん 素敵な曲をありがとうございます。ギターソロの前にドラムが入っていましたが、ベースソロはなぜなかったのでしょうか?
kiyo あのドラムについては、ドラムソロというよりリズムループのイメージなんです。ライブでは実際に叩かず、ドラムの音を切り貼りして作ったループ音源を流す形になります。あの部分でお客さんに煽ってもらおうという意図もあって、そういう作り方にしました。また、そもそもバンドにベースとドラムがいないのでソロを作らなかったという理由も大きいです。
神谷さん 楽曲、とても素敵でした。私たちはTikTokなどで新しい情報を得ているのですが、Nicoriの皆さんは普段どこから情報を得ているのでしょうか?
ɑyumu 僕たちは対バンをすることが多いので、競演バンドの生の音を聴いて「カッコいいな」と感じたり。そういうところから刺激を受けることが多いですね。
安田さん 本日はありがとうございました。作詞をされているɑyumuさんとkiyoさんのお二人に伺いたいのですが、歌詞には想像力が必要だと思います。パッとイメージが浮かぶタイプなのか、本を読むなどして感性を磨くタイプなのか、お二人はどちらですか?
ɑyumu 僕は30歳ぐらいから本を読み始めまして。まだまだ勉強中なんですが、物語をどう凝縮して歌詞に落とし込むのか試行錯誤しながら作っています。
kiyo Janne Da Arc時代は、ほかのメンバーが書いた歌詞を見て学ぶ機会が多かったですね。Nicoriになってからは、世の中に出ている、いろんな歌詞を研究するようになりました。
原 このプロジェクト自体は今回の授業でひと区切りとなり、楽曲のリリースは1月14日を目指しています。作曲はkiyoさんとyouさんの共作、作詞が「kiyo with 大阪音楽大学MB専攻原ゼミ一同」という名義になります。みんなで作ったプロジェクトとしてクレジットにも残りますし、学生の皆さんにとっても大きな思い出になるはずです。
──では最後にNicori Light Toursさんから生徒さんにひと言ずつお願いします。
kiyo 僕たちは結成して4年目になるのですが、学生の皆さんに風穴を開けてもらったような、すごく貴重な機会になりました。ストレートな意見も含めて本当にありがたかったです。またこういう場があればうれしいですし、もしかしたら皆さんが社会に出て、音楽の現場で再会することもあるかもしれません。そのときは、ぜひごひいきに(笑)。
ɑyumu 若い皆さんからたくさんの刺激を受けましたし、僕にとっても学びが多かった。また音楽の現場でお会いできたら、Nicori Light Toursをよろしくお願いします。
you シンプルに、やってよかった、楽しかったという気持ちが大きいです。本当にありがとうございました。新しい感覚や発見をいろいろもらえた気がしていて、それを今後の活動にも生かしていきたいと思っています。皆さんもぜひがんばってください。
大学情報
大阪音楽大学
音楽教育者・永井幸次による「新音楽新歌劇ノ発生地タラン」という理念のもと1915年(大正4年)に創立。その理念を脈々と受け継ぎ、今では大学、短大、大学院を擁する関西唯一の音楽単科大学として、のべ3万3000人を超す音楽人を世界へ送り出している。クラシックだけでなくジャズ、ポピュラー音楽、邦楽といった専攻 / コースを設けるなど、1人ひとりの個性と時代のニーズに応えた教育を行っている。今回の特集にフィーチャーされたミュージックビジネス専攻では、「音楽×テクノロジー×ビジネス」を融合し、業界の即戦力や起業家を育成している。現役プロによる指導のもと、コンサート制作やA&R、著作権、Web戦略を実践的に学習。MacBook Airの全員支給や在学中の起業支援など、現場直結のカリキュラムが特徴となっている。
関連催事、イベント情報
大阪音楽大学オープンキャンパス
2026年3月22日(日)9:45~
専攻・コース別体験イベントのほか、無料トライアルレッスン、入学者選抜説明、個別相談、キャンパスツアーなどを実施。※スペシャルイベントは未定。
対象専攻・コース / 計14専攻・コース
大阪音楽大学 ミュージックビジネス専攻 presents “音サウナ” -MINAMI WHEEL EDITION-
- 2026年1月17日(土)大阪府 ROCKTOWN
<出演者>
つきみ / Re:name - 2026年1月18日(日)大阪府 ROCKTOWN
<出演者>
あたらよ / jean / Doona
一般:2日間通し券 5500円 / 1日券 3000円
学生:2日間通し券 4500円 / 1日券 2500円
※別途ドリンク代600円
※FM802「MINAMI WHEEL 2025」のPASS持参の方に特典あり。
主催・企画運営:大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻
大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻 presents「MWDL」2025年
※「MWDL」・・・Move!(動く)、Wave!(揺れる)、Dive!(飛び込む)、Live!(生きる)
2026年1月18日(日)大阪府 心斎橋Live House ANIMA
<出演者>
クレナズム / ハク。
一般:3600円
学生:1800円
※別途ドリンク代600円
主催・企画運営:大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻



