ナタリー PowerPush - ニコナタ「ボカニコXmasパーティー」
「ボカニコXmasパーティー」イベントレポート&DJインタビュー
八王子Pインタビュー
──今日のDJプレイはいかがでした?
今回に限らずなんですけど、毎回「VocaNicoNight」ってすごい盛り上がりで。お客さんがボーカロイド好きっていうのは見ての通りなんですけど(笑)、単純に好きなPの好きな曲がかかったから盛り上がるっていうんじゃなくて、イベント自体を楽しもうっていうノリがすごく伝わってくるんですよ。だからすごく気持ちよくDJプレイできました。
──確かに八王子Pをはじめ、人気のボカロPが出てくるんだけど、お客さんは実は皆さんがお目当てではないというか……。
自分がDJを始めたときにはまだお客さんがまばらというか(笑)、フロアにちょっと余裕があったりしましたもんね。
──ええ(笑)。それがむしろ「いいな」って思ったんです。「スターを観に来る」っていう、かしこまったノリではなくて、仕事や学校がハネた人たちが酒を飲みながら踊りに来ている感じ。ホントに夜遊び、クラブ遊びをしている感じがして。
しかもそれでいて純粋なクラブイベントではないよさもあって。自分は普段4つ打ちの曲をメインで作っていて、今日も基本的には4つ打ちの曲をつなぐ、いわゆるDJらしいスタイルでプレイしてますけど、鬱Pなんかは普段は全然4つ打ちを作る人ではないし。自分も「鬱P、何をやるんだろう?」ってすごく期待してますし(笑)。そういうDJやクラブとはちょっとかけ離れている人がパフォーマンスしたりするのも、それがこのイベントの面白さなんです。
──「ボーカロイド」をキーワードにジャンルをクロスオーバーできるイベントでもある、と。
自分としてはボーカロイドをきっかけにいろんな人にクラブミュージックを聴いてもらいたいっていう思いが普段からあるので、その入り口としてはこのイベントってすごくいいなって思ってますね。
──その八王子Pさんの中での「VocaNicoNight」の位置付けって気になったんです。「COUNTDOWDN JAPAN」や「ROCK IN JAPAN FES」のような大型フェスでも回すDJにとって、一般的なキャパのクラブで行われるこのイベントってどういう扱いなんだろう?って。
「ROCK IN」みたいな音楽イベントであれば、クラブミュージックの楽しみ方も知っているお客さんも多いんですけど、今日みたいなイベントだともしかするとクラブはおろか、ライブに来るのも初めてっていうお客さんもいるかもしれないんですよね。だから「VocaNicoNight」はそういうお客さんに対しても楽しいところなんだよ、っていうことを知ってもらえるチャンスなんだと思ってます。これで楽しさを知ってもらえれば、あとはみんな好き勝手にいろんなライブやクラブに遊びに行ってくれると思うので(笑)。
鬱Pインタビュー
──さっき八王子Pさんにお話を聞いたら、自分は今日も正調ダンストラックを回すつもりだけど、鬱Pは何をやるんだろう?っておっしゃっていて(笑)。
あはははは(笑)。そう思われますよね。
──で、当のご本人が何をしたかというと、普段作っているデスメタルやハードコア系の楽曲のイメージ通りというか、ホントに重たいド直球を放りましたね。
今回で「VocaNicoNight」に出るのは2回目なんですけど、よりディープなほうに振り切ってやろうと思いまして(笑)。
──ただどの楽曲もダブステップやガバやヘビーなドラムンベースにリミックスなさってましたよね。普段発表している楽曲とはまたお作法の違うトラックメイキングって大変だったりは?
いや最近、メタルにダブステップのような打ち込み系のサウンドを入れるバンドというか「バンドのジャンルでいうとメタルコアで、ダンスミュージックのジャンルでいうとダブステップ」みたいなアレンジをするバンドが増えてきてるんですよ。実はほかのギターロックよりもむしろ普段の僕のやっているような楽曲のほうがダンスミュージックとの親和性が高いんです。だから曲のアレンジもするし、DJをやるというか。今だったら鬱Pの名前でダンスミュージックを作ったり、DJをやったりしても不自然ではないなって感じがしてますね。あと最近DJをやっていて「あっ、こういうノリを期待されてるな」っていうのがわかってきたという部分もあって。
──その期待されているものっていうのが、まさに今のヘヴィロックシーンのトレンド。ダンスミュージックなんだけど、ヘビーでダークなトラック群だった、と。
そうですね。実はDJってまだ5回目くらいなんですけど、その経験の中で「DJをするときはバンドと違って期待されているものをやるべきなんだろうな」っていうのがわかったから「それならそういうダンスミュージックを作ってやろう」ってことになった感じです。
──確かにDJにはいい意味での水商売的、サービス業的側面はあるものの、バンドマンであり、しかも相当にエゴの強い楽曲を作る方だけに、フロアの期待に応えようって思っていたのはちょっと意外でした。
DJをやるようになって、そういう自分に改めて気付かせてもらった感じです。「決められた枠組みの中でやるのも実は好きなタイプだったな」って。決められた枠組みのギリギリを狙うのが好きなんですよ。
──そう考えると今日は枠組みのギリギリいっぱいまでやってやりましたね(笑)。
または枠の外はおろか、枠の中にも何も置いてないみたいなことをやってやった感じはします(笑)。
──あはははは(笑)。その結果、あれだけの人数がヘッドバンギングしまくり、あれだけの数のコメントが飛び交った状況ってご本人的にはどう見ます?
単純計算で4人組のバンドでライブをやるときの4倍気持ちいいですね。4人分の視線が全部こっちに集まりますから(笑)。
DJ'TEKINA//SOMETHINGインタビュー
──ナタリー的には、ご本人曰く“本体”であるゆよゆっぺさんにはホントにたくさんご登場いただいているんですけど、DJ'TEKINA//SOMETHINGさんとしては実は……。
初めてですよね。しかも普段とやってることがあまりに違う(笑)。
──はい。なので、DJ'TEKINA//SOMETHINGとは何者なんだ、と(笑)。
もともとDJをやるつもりはなかったんですけど、ヒゲドライバーさんというすごく好きなクリエイターの方から「イベントをやるから出ろよ」「DJやれ」と言われ「はい」と(笑)。でもどうせDJにはなりきれない。そういう話を深夜にしていたら、マネージャーが「じゃあ、DJ的なサムシングだろう」と。で、僕も深夜テンションで「いいっスね!」って(笑)。
──1回限りのシャレのつもりだった?
はい。でもクラブミュージックを勉強し始めたらホントに楽しくて。しかも幸い僕の周りにはものすごくクオリティの高いクラブミュージックを作る同世代のボカロPがたくさんいたんですね。そんな人たち、例えば王子(八王子P)にはいろんな曲を紹介してもらったり、DJのやり方を教えてもらったりしているうちに「続けてみよう」ってことになったんです。だから今のDJ'TEKINA//SOMETHINGは周りの人たちのおかげで成り立っている感じですね。
──ホントにいいDJネームですよね。「DJ'TEKINA//SOMETHINGは周りの人たちのおかげで成り立っている」って聞いたとき「じゃあ何が成り立ってんだよ!」ってツッコみたくなりましたから(笑)。
あはははは(笑)。あとDJって曲をつないで場を盛り上げる、ある意味空気を読む人だと思うんですけど、僕はDJ'TEKINA//SOMETHINGだから、空気を作ったり、場を提供したりするんじゃなくて、自分がその場や空気を一番楽しんでしまう。自分が楽しめばお客さんも楽しんでくれるだろうという非常に投げやりなコンセプトを表した名前でもあるんです(笑)。
──ほぼ全部の曲をDJ用にリミックスしているのもテキサム流?
そうですね。自分が好きな曲をもっと楽しみたいんで、自分が楽しくなれるようにリミックスしてる感じです。あとDJを始めたときにホントにつなぐのがヘタだったんですよ。でも自分でトラックを作っちゃえばつなぐところがわかるじゃないですか(笑)。そういう意味でもDJ'TEKINA//SOMETHING。「お前のやってることはDJじゃない」って言われても、いくらでも言い訳ができる、と(笑)。
──「的なサムシングですが、なにか?」って(笑)。でも今日のターンテーブルさばきは見事でしたし、お客さんからの期待のされ方もハンパなかった。およそ「サムシング」ではない。まごうことなきDJでしたよ。
それは「VocaNicoNight」が始まったおかげですね。ヒゲドライバーさんのイベントのあと、毎回のように「VocaNicoNight」が僕を呼んでくれたからある程度ちゃんとDJをできるようになったし、みんなが楽しんでくれるトラックを作れるようになった。だいたい言ってみたら僕、2番打者みたいなものだと思うんですよ。「的なサムシング」なんですから(笑)。
──今やホームランをスゲー期待されてますよ(笑)。
送りバントが得意なはずなのに(笑)。それでもそんな僕に期待して声をかけてくれる人たちがいて、僕のDJを楽しんでくれている人がいるのであれば、そこには恩返ししたいな、って思ってます。
- V.A.「VOCA NICO☆PARTY Nonstop Mixed by DJ VOCA NICO」 / 2013年12月25日発売 / 2500円 / ソニー・ミュージックダイレクト / MHCL-2417
- V.A.「VOCA NICO☆PARTY Nonstop Mixed by DJ VOCA NICO
収録曲
- ボカニコ☆ナイッ / SOLIDIO feat. 初音ミク
- Let's enjoy Voca Nico Party / DJ Voca Nico feat. 初音ミク
- Sweet Devil(VOCA NICO 2013 edit)/ 八王子P feat. 初音ミク
- Yellow(VOCA NICO 2013 edit)/ livetune
- 塵塵呪詛(2013 Kikuo Remix)/ きくお
- shake it! / emon feat. 初音ミク、鏡音リン・レン
- ハッピーシンセサイザ / Easy Pop feat. 巡音ルカ、GUMI
- ZIGG-ZAGG / Junky
- システマティック・ラヴ / かめりあ
- エレクトロサチュレイタ / tilt-six
- こちら、幸福安心委員会です。 / うたたP
- ビバハピ / Mitchie M feat. 初音ミク
- 魔法少女幸福論 / トーマ feat. 初音ミク
- いーあるふぁんくらぶ(アレンジカバー)/ ギガP feat. 初音ミク、鏡音レン
- *ハロープラネット / sasakure.UK
- ルカルカ★ナイトフィーバー / samfree
- みくみくにしてあげる♪(してやんよ)/ ika
- 千本桜 / 黒うさP
- 夏に去りし君を想フ / baker
- 東京レトロ / すこっぷ feat. 初音ミク
- トキヲ・ファンカ / takamatt feat. GUMI
- ダンスダンスデカダンス / カラスヤサボウ
- 影炎≒Variation / やいり feat. IA
- セツナトリップ / Last Note feat. GUMI
- 衝動×パンデモニクス / PolyphonicBranch
- カゲロウデイズ / じん
- ヒトリボッチ革命戦争 / 触媒ファントムガールP
- 夢幻(HGS edition)/ ダルビッシュP
- 愛言葉(sasakure UK remix)/ DECO*27
- Melody Line-Pop!Pop!Pop! Remix / SmileR feat. 初音ミク
- Heart Groove / すけっちP
- Party Junky / さつき が てんこもり
- Leia / ゆよゆっぺ
- Draw Your Night / DJ'TEKINA//SOMETHING feat. 初音ミク
八王子P(はちおうじぴー)
ボーカロイドを使用して音源制作をするボカロPとして活躍中の男性アーティスト。クールな4つ打ちトラックにキャッチーなメロディを乗せたダンスチューンを得意とする。2009年12月、ニコニコ動画で公開した「エレクトリック・ラブ」が注目を集め有名ボカロPの仲間入りを果たす。2011年11月に台湾でリリースしたベストアルバム「Sweet Devil feat. 初音ミク」は現地の週間売上チャートで4位に入る健闘ぶりを見せた。2012年2月、アルバム「electric love」でメジャーデビュー。2013年7月17日にはトイズファクトリーからニューアルバム「ViViD WAVE」をリリースする。
鬱P(うつぴー)
ラウドロックによるボーカロイド曲“VOCALOUD(ボーカラウド)”の第一人者として知られるボカロP。2009年に初の音源「DOLL」を投稿したのを皮切りに、ヘビーなサウンドのオリジナル曲を動画サイトで発表し続けている。スクリームやグロウルといった、いわゆるデスボイスをボーカロイドで表現するのが特徴。またベースの演奏力にも定評があり、「演奏してみた」動画の投稿やほかの奏者とのライブ活動もしている。2013年8月に初の全国流通アルバム「悪巫山戯」(わるふざけ)をリリースする。
ゆよゆっぺ
ラウドロックを軸にさまざまなジャンルを盛り込んだボーカロイド楽曲をニコニコ動画に発表し、何度も“殿堂入り”を果たしている人気ボカロP。2012年9月にアルバム「Story of Hope」でメジャーデビュー。現在は自身のバンド、My Eggplant Died Yesterdayでも活躍している。