ナタリー PowerPush - The next! Liddell 1974

純粋で自虐的な私小説「リデルの詩」の魅力に迫る

The next! Liddell 1974が通算2作目のアルバム「リデルの詩」をリリースした。本作はシンプルなバンドサウンドを基盤に、ダンスロックからフォークテイストまで多彩な曲調を取り入れた楽曲と、童謡のタイトルがたびたび登場する歌詞が魅力。ユニークな取り合わせはこのバンドならではと言える。ナタリー初登場となる今回は、全ての作詞・作曲を手掛けるフロントマン・コグレ(Vo, G)とクロサワ(B)にバンド結成から現在までの話や新作の内容について訊いた。

取材・文 / 石角友香

サウンドだけじゃない作品を目指してた

──今回はナタリー初登場ということで、まずバンドの成り立ちを伺いたいのですが。最初にバンドを組んだのはいつですか?

ライブ写真

コグレ 17、18歳ぐらいで初めてバンドを組んだのが今のメンバーとなので、それからずっと一緒にやってます。

──じゃあもういいところも悪いところも恥ずかしいことも全部知ってる仲なんですね。

クロサワ そうですね(笑)。

コグレ 嘘ついてもすぐわかりますから。

──どんな始まりだったんですか?

コグレ 高校でドラムのタテベくんに出会って。なんか仏教系の男子校で、クソみたいな学校だったんです。自分は気持ち悪い感じで、ちょっと村八分みたいな感じになっていて、そこに唯一気が合うタテベくんが現れて、最初は遊びで組んだ感じでしたね。

──その頃に影響を受けたものは?

コグレ タテベくんがパティ・スミスとかにハマってて、僕もニューヨークパンクを知りまして。それには感銘を受けました。例えば今回のCDもそうなんですけど、アートワークとか全部含めて作品だと思っているのはその頃の影響が大きいですね。THE VELVET UNDERGROUNDとアンディ・ウォーホルの関係だったり、ポエトリーリーディングだったり、サウンドだけじゃない側面も含んだ作品はその頃から目指してました。

──深いところまでいきましたね。

コグレ 芸術が好きなんですよ、今も昔も。ヴェルベッツやTELEVISIONは音楽も好きだったので、合致した感じですね。

──学校じゃ話しても誰もわかってくれなかった?

コグレ ほかの人には話もしなかったです。タテベくんとキャッキャやってました(笑)。

──クロサワさんから見てコグレさんはその頃から変わってないですか?

クロサワ 僕は中学が一緒で高校は別だったんですけど、中学のときから絵がうまかった印象はあります。

シーガル解散ライブを観て「オリジナルでやっていきたい」

──その頃オリジナル曲はやっていたんですか?

コグレ いえ、まだ。当時はブランキー全盛期でコピーをしていたぐらいですね。何しろ群馬県の片田舎なんでバンドやってる奴自体が少なかったと思います。僕らは楽器屋の中にあるスタジオとか市民ホールの中にある大きな部屋とかで練習してました。

──ほかに比べるバンドも周りにいなかったと。

コグレ そうですね。知り合いに1人もいなかった。それで高3のときにタテベくんと東京にSEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERの解散ライブを観に行ったんですよ、大好きだったんで。そこで初めてライブっていうものにも触れて、東京のライブハウス、下北沢SHELTERだったんですけど、そういうものに触れて「オリジナルでやっていきたい」と思ったんです。

──下北沢で好きなバンドのライブを観たというのが大きかった?

ライブ写真

コグレ そうですね。で、高校を卒業してから「みんなでやらない?」って持ちかけたんです。それでそれぞれ大学や専門学校に進学して、東京に来てバンドを始めて。大学では英文学を専攻していて、そこで得たり感じたりしたことが今まさに作品にも詰まってきているので、今もそれは進行中っていう気持ちですね。

──なるほど。

コグレ 卒業論文は「寺山修司とマザー・グース」っていうテーマで書いたんで、まさに今回のアルバムにもつながってます。昔から児童文学が好きで、それが顕著に出たのは前作の「絵のない絵本」だったんですけど。アンデルセンの「絵のない絵本」って読んだことあります? 僕たちがやってきたことを集約すると心境的にぴったりだったのでこのタイトルにしたんですけど、狙ってコンセプチュアルにしてるわけではないんです。

──そうですね。曲そのものはシンプルなバンドサウンドに、想像力にあふれているけれど平易な歌詞が乗っていて。

コグレ サウンドに関しては常々ポップでありたいと思っていて、言い換えればキャッチー……聴きやすいとか脳内再生されやすいものというか。その中に自分たちらしい個性を詰め込んでいきたいんですよね。まずポップであることが大前提で、狙って気取ったものとかにしたくなくて。むしろJ-POPとかのほうが、「ロックンロール! ロックンロール!」とか言えばどんな音鳴らしててもいいみたいなバンドよりいいと思います。

ニューアルバム「リデルの詩」 / 2012年11月7日発売 / 2000円 PRIMITIVE PRM-010
ニューアルバム「リデルの詩」
収録曲
  1. しゃぼん玉
  2. ひとりぼっちのホリデー
  3. 恋の業火
  4. ロードムービー2
  5. ふるさと
  6. 僕のマザーグース
  7. ガールフレンド
  8. チューリップ
The next! Liddell 1974
(ねくすとりでるいちきゅうななよん)

コグレ(Vo, G)、タテベ(Dr)、クロサワ(B)、ヒラノ(G)からなる群馬県出身の4人組バンド。2010年、「AOMORI ROCK FESTIVAL'10~夏の魔物~」にThe next名義で参加し、2011年に入ってから現在のバンド名に改名。精力的なライブ活動を続ける。同年10月に1stアルバム「絵のない絵本」をリリース。翌月のレコ発ライブではKING BROTHERSと競演し好評を博した。2012年11月に2ndアルバム「リデルの詩」をリリース。