「47+1 新生 New Year Rock Festival」特集 HIRØ(カイキゲッショク)インタビュー|内田裕也の思いを引き継いで伝えた、今ロックがやれること

現在の清春が歌う「忘却の空」はたまらない

──そこからリモート参加となった清春さんの「忘却の空」。主題歌となったテレビドラマ「池袋ウエストゲートパーク」のオープニングタイトルも薗田監督が手がけていました。

清春©石橋俊治

カイキゲッショクのギターのK-A-ZがSADSのメンバーだったり、プライベートで偶然遭遇したり、清春くんとは何かと縁があるんです。今年の「NYRF」の話をしたら「カッコいいことには参加したい」と言ってくれて。自分も大晦日に配信ライブがある中、リモートで出演してくれました。しかも「忘却の空」は僕のリクエストじゃなく彼が選んでくれたんです。現在の清春が歌う「忘却の空」、たまらなかったですね。さすがだなと思いました。

──HIRØさんの奥様、AIさんもダンサー2人を伴って「NYRF」に初登場されて。迫力あるステージを堪能させていただきました。

AI©石橋俊治

僕の本名は野口というんですけど、瓜田夫婦に続いて野口夫婦での参加です(笑)。AIちゃん、毎年「NYRF」の会場には来てたんですよね。紅白終わってから駆けつけてくれたり。僕たちの結婚の保証人が裕也さんだった縁もあって今回登場してもらいました。スタッフは「Story」が聴きたい、「ハピネス」が聴きたいっていろいろ話してましたけど、いやいや、ここはバリバリのヒップホップのAIちゃんがいいなと思って「I Wanna Know」、「365 feat. DELI」、そして「Not So Different」の3曲をリクエストさせてもらいました。

──「Not So Different」は“例え肌の色・立場・環境が違って見えても、心を開けばみんな同じ人間という存在だ”というメッセージが込められた曲でした。昨年のBlack Lives Matterの問題は考えさせられることが多かったです。

我が家は僕、彼女、子供たち、いつも必ず誰かが歌っている面白い家庭なんですけど、Black Lives Matterの一連の出来事はニュースを観ていて涙が止まらなかったですね。5歳の娘、2歳の息子が「なんで泣いてるの?」と聞いてくるので、ちゃんと説明をしてあげて。日本に住んでいるとわかりづらい問題ですけど、そこを説得力を持って提示できるAIちゃんに「Not So Different」をぜひ歌ってほしいという話をしました。

長渕剛が音で抱きしめたエンディング

ALI feat. J-REXXX、RUEED©石橋俊治

そこからレゲエ界で今一番イキのいいサウンドクルー、POWER PLAYERZ。ジョー山中さん、もんたよしのりさんがいた頃のルーツレゲエとは違ってダンスホールスタイルですけど、そこにJ-REXXX、RUEEDという次世代を代表する2人が加わり、さらにALIにつなげる流れにしました。ALIのボーカリストのLEOは過去にもギタリストやデュオで「NYRF」に出てるんです。ALIはJ-REXXX、RUEEDともやってたので、未来につなげる若い力と思って、バンドとしての最後は彼らに飾ってもらいました。

──ALIはテレビアニメ「呪術廻戦」のエンディングテーマ「LOST IN PARADISE feat. AKLO」で話題を集める多国籍バンドですが、音楽の未来を見せてもらった感があります。

昔から「NYRF」の出演者はハーフの方も多いですから。また、LEOが歌うまいんだ! J‐REXXXの独特な存在感、甘いルックスのRUEEDが醸し出す色気。今年の「NYRF」は本当にカッコいい人たちが集まってくれたなと思ってます。

──そしてエンディングを飾ったのは長渕剛さん。大晦日の当日午後に届いた緊急参戦のニュースには驚かされました。

長渕剛©石橋俊治

ご存知の方も多いでしょうが、「魚からダイオキシン!!」という映画の中で裕也さんが長渕さんにビーフを仕掛けていて。だからみんなびっくりしたと思うんです。これは本当にデリケートなことなので。たまたまクリスマスの頃に長渕さんと暮れのご挨拶で連絡を取ったとき、僕の中でどうしても「しゃくなげ色の空」を「NYRF」で響かせたいという気持ちが強くなったんです。それで当たって砕けろの思いで相談したら「HIRØが旗を振るなら俺は協力したい。やるんだったら会場で一緒に歌わないと意味がない。俺、アコギ持っていくからカイキゲッショクをバックにセッションしよう」と言ってくださって、12月26日に急遽出演が決まったんです。普段フェスとかイベントに出る人じゃないじゃないですか? だったらエンディングしかないと思って。エレキギターのK-A-Zは清春くんの現場に行っていないから、長渕さんに「実はファー・イースト・ファミリー・バンドの宮下富実夫さんの息子でJody天空というすごいギタリストがいるんです」と話したら、「えーっ! 俺、20年前に長野にある宮下さんの琵琶スタジオに行ってるよ。あの宮下さんの子供なの?」と驚いてました。Jodyは前日は岡山にいたんですけど、東京に来てくれて。AIちゃんがいて、Zeebraはラップ、TOSHI-LOW、細美くん、瓜田純士がコーラスで入ってくれることになり、当日合わせで本番を迎えたんです。長渕さんが会場入ってこられたとき、奥様の(志穂美)悦子さんも一緒にいらして「さっき裕也さんのお墓参りに行ってきました」と写真を見せてくださったんです。悦子さんは樹木希林さんのことをすごく慕っていましたし、長渕さんも「NYRF」のステージに立つならご挨拶をしてからって。心のある人ですよね。感動しました。あの「しゃくなげ色の空」は特別なセッションだったと思います。終盤はゴスペルみたいな高揚感がありましたよね。長渕さん、言ってましたよ。「若いミュージシャンたちを全員、音で抱きしめに行った」って。だから僕らも全身全霊で参加したセッションでした。あのデッカいピースマークの旗の下、裕也さんと長渕さんのデッカいピースメイキングができたことが感激でした!

──「47+1 新生 New Year Rock Festival」、素晴らしいイベントになりましたね。

ありがとうございます。あの一夜は本当に特別で、日本だけじゃもったいないということでアーカイブ映像は全世界に向けて配信させてもらうことになったんです。日本の若いアーティストから現役バリバリのベテランまで、鮎川さんなんて71歳ですからね。70歳オーバーのロックンロールギタリストがレスポール弾いて娘が前で歌ってるロックバンドなんて、世界でもなかなかいないじゃないですか?

──これからご覧になる方の反響を楽しみにしております。次の「NYRF」もそろそろ動き出される感じなんでしょうか。

うーん……さすがに少し休ませてください(笑)。というのは冗談で、もちろんちゃんと進んでます。今年が49回、そして来年が50回。夏過ぎあたりにいろいろまた発表させてもらうと思うので、よろしくお願いします!

※特集公開時、カメラマンクレジットに誤りがありました。お詫びして訂正します。


2021年4月10日更新