未来はきっと明るいぜ!
──ここまで話を聞いていると、仲村さん自身が音楽に救われていたことがわかります。そうやって音楽をやっていく中で、自分に何か大きな影響を与えた存在はありましたか?
作曲というものを教えてくれた専門学校の先生ですね。1週間に1曲、ワンコーラスでもいいから曲を書いて来いと言われて、それを1年間続けたんですけど……その先生は普通に作曲方法を教えてくれたわけではなくて。ワンコーラス作って聴いてもらうと「全然ダメ、じゃ次の人」って言うんですよ。最初は20~30人くらい生徒がいたのですが、そういうのが何週か続いたらどんどん生徒がいなくなっていって。結局最後に残ったのは僕を含めて3人だけだったんです。でも作曲をやっていくにつれて、「ダメだけど、このメロディだったらこのコードのほうがいいんじゃない?」と言ってもらえるようになったり。そのうち、「普通」って言われることもあったり、「Aメロはよかったじゃん。Bメロは普通」みたいに言ってもらえるようになって。その先生からは、曲を作るうえでの感性を学んだような気がします。そこからまたさらに曲を作るのが好きになりましたし、先生に教えてもらったことが常に僕の物作りの根底にあると思いますね。
──素敵な出会いだったんですね。
あともう1つ、フリーター時代に始めた介護の仕事で得たものも大きかったです。僕がやっていたのは老人介護ではなくて、ハンディを背負った人たちの介護だったんですけど、僕が音楽をやっているのを知って、みんな応援してくれてたんです。一緒に出かけたりしたときに「やりたいことはやったほうがいいんだよ」と言ってもらったりして……逆にたくさん助けてもらいました。自分というのは自分1人しかいない。1回の人生で、やりたいことはなんでもやってみるべきなんだなということを学びました。
──専門学校時代も介護のお仕事でも、相手から何かを得られたのは仲村さん自身の心の持ちようが素敵だからなんじゃないかなと思います。
僕もモヤモヤしていた時期はありましたけど、そこで可能性を腐らせちゃったら先が完全に断たれちゃうじゃないですか。それは嫌だし、腐りたくないなと思うんです。昔から根拠のない自信だけはあったんですよ。「自分は何かを持ってるんじゃないか」とか、「俺の未来はきっと明るいぜ!」みたいな。そのバカなところが今につながっているのかなとも思います(笑)。
イメージは太陽
──そういう仲村さんの前向きさや芯の強さは、まさに今回のシングル3曲に共通するメッセージだなと思います。
僕もそこは3曲すべてに共通しているなと思います。さまざまな角度から背中を押してくれる楽曲になっていますよね。1、2曲目は自分で書いているわけではないのですが、すごく僕の気持ちを汲んで作ってくださっていて。愛情を感じますね。
──どんなシングルにしたいかは、作家さんやスタッフさんとかなりしっかり話し合われたんですか?
そうですね。まず、この1枚で「仲村宗悟ってこういう感じなんだ」というのをわかってもらえるような作品にしたいなというところから、みんなで話し合いました。表題曲の「Here comes The SUN」はすごく明るくてさわやかな曲なのですが、2曲目の「Rain forecast」はモヤモヤしてたりガムシャラな気持ちが描かれている曲で。ただ明るいだけじゃなくて、ちゃんと考えている部分を持っている……そんな表と裏というか、2つの面を見せられるといいねという話をしました。
──ChouChoさんが提供された表題曲の“太陽”というイメージは、まさに仲村さんにピッタリですよね。
話し合いのときに、スタッフさんが「仲村さんのイメージは太陽だと思うんです!」と言ってくれたので、そこからChouChoさんもイメージを広げてくださったのかなと思っていたんですよ。でも、実はその話し合いの前に、ChouChoさんからすでに「SUN」というタイトルのデモが送られてきていたらしくて。すごい偶然だなと驚きました。
──皆さんの中で“仲村さん=太陽”というイメージの共通認識があったんでしょうね。仲村さんの聴かれてきた音楽とも共通するような、ポップな表題曲になりました。
そうですね。僕もこの曲を聴いたときにすぐに「これだ!」と思いました。ChouChoさんはレコーディングにも来てくださって、歌唱についてたくさんアドバイスしてくれました。僕は歌うときに癖で後ろにリズムを取りがちなんですけど、この曲は前に前にという感じの曲じゃないですか。それで、リズムをカチッとはめられるように指導していただきました。
──仲村さん自身が表現されているような楽曲になっていますが、特にご自身で歌に気持ちが乗ったなと感じた箇所はありましたか?
「ずっと眠ってた夢が そっと目覚めたのは いつだって君が信じ続けてくれたから」というところですね。親だったり友達だったり、応援してくれている方々に向けて、感謝の気持ちを込めて歌いました。デビューが決まって、たくさんのファンの皆さんが自分のことのように喜んでくれていたんです。応援してくださっている方たちと一緒に感動できるというのも、すごくうれしかったですね。
──今回シングル制作にあたって、楽曲や詞に対して、特に自分から「こういうふうにしたい」と意見を出されたところはありましたか?
2曲目の「Rain forecast」の最後の歌詞、「光掴もう 飛ぼう」というところですね。実は、ここの歌詞はレコーディング当日に決まったんです。仮の詞も入っていたんですけど、一旦ゼロにして考え直そうということになって作詞作曲を手がけてくださった渡辺翔さんやプロデューサーさんといろいろ話し合って。それで、僕から「『光掴もう 飛ぼう』ってどうですか?」と提案したところ、採用してもらえました。あとはこの曲のタイトルもそうですね。いろんな案があったんですけど、僕はその中でも雨予報を意味するこのタイトルの“予報”というところに惹かれて。晴れにも転ずる可能性がある感じがすごくいいなと思って、「このタイトルでいきましょう!」と強く言った覚えがあります。
いつか立ちたい場所
──3曲目の「ゆらゆら」は専門学校卒業後の停滞期の頃を思い出しながら作られたということですが、どういうふうに制作されましたか?
この曲は、お風呂に入っているときにサビのメロディと歌詞がポンッと浮かんだんです。バンドサウンドのイメージもすぐに湧きました。お風呂に入ってるときとか道を歩いてるときにメロディや歌詞が浮かんでくることってけっこうあるんですよ。きっとリラックスしているからなんでしょうね。忘れると嫌なので、お風呂からびしょびしょのまま出て、そのまま廊下を歩いてスマホに録音するんです。お風呂から出たあと、床を拭いているときはいつも切ないですけどね(笑)。外を歩いているときは、人に電話しているフリをしながら鼻歌を録音したり。そういう感じで作っています。
──日常の中で音楽が降りてくるんですね。そんなふうにお風呂で浮かんだメロディを書き留めて、そこから改めて続きを作っていったという。
そうです。最初にサビができて、Aメロ、Bメロとワンコーラスを作って。2番は1番とはまた違った構造にしたいなと思って、AメロからすぐDメロにいって、最後のサビに入るんです。Bメロが1回しか出てこないのですが、同じメロディの繰り返しだと、聴いてくれる人が1回聴いただけでお腹いっぱいになったらどうしようと思っちゃって。何回でも聴ける曲にしたかったんです。
──すごくこだわって作ってらっしゃるんですね。
バンドのレコ―ディングにもギターで参加させてもらったのですが、すっごく楽しかったです。僕からも「こうしたいです」と意見をいろいろと出させていただいて。例えばイントロのギターは、最初はもっと盛り盛りだったんです。それもめっちゃよかったのですが、最初のほうはあまりドラマチックにしたくなくて。歌詞もサウンドも段階を踏んで、だんだんドラマチックにしたいなという思いが自分の中にすごくあったんです。それで少し音を抜いたりして、「このメロディでどうですか?」とイントロを付けて。後半に行くにつれて、キラキラ感が足されるように作っていきました。
──メロディや歌詞がドラマチックに展開していくのに加えて、歌唱も聴いていてすごく心を震わされるような感覚がありました。特に「僕の声で 僕の声で 叫んでみようか」というところのボーカルがエモーショナルでグッときました。
そこはレコーディング中、僕の中ではライブが見えていたんですよ。「みんな自分たちの声で叫ぼうぜ」という感じで、「ah」というところをみんなで叫んでいる姿をイメージしながら歌いました。そこでみんなと一体になれたらいいなと思って歌っています。
──11月からこの作品のリリースイベントも始まりますし、12月には「Original Entertainment Paradise -おれパラ- 2019」(小野大輔、鈴村健一、森久保祥太郎、寺島拓篤の4人がホストを務める毎年恒例のイベント)への出演も決まっています。実際にライブで歌うのが楽しみですね。
楽しみですね! 来てくださる方が、みんなそれぞれの楽しみ方をしてくれたらいいなと思います。それがライブのよさだなと思うから。自分が感じるままに、思いっきり楽しんでほしい。恥ずかしがらなくていいんだよと。どんなノリ方をしてくれてもうれしいなあと思います。
──アーティストデビューして、今後具体的な目標はありますか?
実はパスピエの大胡田なつきさんが友達なのですが、前に武道館でライブをやってるのを観て「カッコいいな! うらやましいな!」と思ったんです。なので、いつか武道館でライブをやってみたいですね。
──では、今後もアーティスト活動を継続的にされていくと。
そうですね。声優という軸をしっかりと持ったうえで、続けられる限り、アーティスト活動もしていきたいなと思っています。気分屋なので、今後の活動とか音楽性がどうなっていくのかとか、まだ全然想像もつかないですが(笑)。でも、常に何かを思うことはやめたくないんです。なので、いつでもそのときそのときに自分が思っていることを表現していけたらなと思っています。
イベント情報
- 仲村宗悟「Here comes The SUN」発売記念イベント
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2019年11月24日(日)
東京都 東京アニメーションカレッジ専門学校 ホール
[1回目]OPEN 13:30 / START 14:00
[2回目]OPEN 16:15 / START 16:45 - 2019年11月30日(土) 福岡県 大名MKホール OPEN 13:40 / 14:00
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2019年12月1日(日)
大阪府 アニメイト大阪日本橋 O.N.SQUARE 3F
[1回目]OPEN 12:30 / START 13:00
[2回目]OPEN 15:15 / START 15:45
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2019年11月24日(日)
東京都 東京アニメーションカレッジ専門学校 ホール
[1回目]OPEN 13:30 / START 14:00